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形としての全体性を壊さずに試行錯誤するということ〜生物の多様化と身体の連続性〜

「形としての全体性を壊すことのない範囲であれこもこれもやってみる」

書籍『生命誌とは何か』の中で、生物の多様化の根幹が描かれていました。

昆虫も「頭・胸・腹」という基本構造を持ち、その中で細部がそれぞれ異なっている。

「かたち」と「全体性」を壊さない範囲での試行錯誤。

「かたち」は物質的な連続性に支えられていて、しかもその連続性は短期的には大きく変わらないけれど、少しの変化が蓄積されていき、やがて環境の大きな変化によって、その蓄積の差異が自然のふるいにかけられる。

こう書いてみると、いつも立ち戻る原点は「自分の身体」です。

骨格を「剛」とすれば、その周囲を覆う筋肉や脂肪は「柔」であり、自分の肉体は剛柔の調和によって成り立っている。

では、その全体性の中で、何を変えられるのか。

じつは剛も柔も、つまり骨も肉も両方の使い方を変えることができる。そう感じる今日この頃です。

両の足で大地を踏み締める。

「大地を踏み締めるとはどういうことか?」

この問いについて、私は分かっているようで全く分かっていませんでした。

足の角度、筋肉の使い方が変わり、さらにそこへ骨が大地へと根を張るような感触が加わってくる。

自分の下半身の感覚があるようでないような。下半身が無駄なく、力みなく使えるようになると、その感覚が上半身へと至り、やがて全身が軽くなる。

こうした感覚を得るまでに、ヨガを始めてから10年の月日が経ちました。

「かたち」を壊さずに試行錯誤を重ねる上で大切だと感じるのは、常に自分を固定化させないこと。「ゆらぎ」を味方につけることだと思います。

地球上の多様性の六〇%近くを引き受けている昆虫も基本は共通で、頭、胸、腹の三部分に分かれていて、六本の脚があり頭に触角をもっています。この形づくりの基本の遺伝子は、昆虫の祖先が誕生した時にすべて整っていたのでしょう。これが、ゲノムのもつポテンシャルです。もちろん、DNAは変化しますから、ゲノムも変わっていきますが、全体として昆虫の形を崩すようなものではありません。つまり、形としての全体性を壊すことのない範囲であれもこれもやってみるわけです。オサムシの場合、西でも東でもヤコンやらヒメやらアオやらと現れて生き続けてきているのは、それだけのムシたちが生きられる環境が日本にあったからでしょう。

中村桂子『生命誌とは何か』

進化は、まず生物の側の変化していく力があれこれの可能性を試みる(変化はまずDNAにおきますが、それが直接進化につながるのではなく形づくりが必要です)、そしてその結果生じた個体が環境の中で試されるという組み合わせで起こるのですから、大きな変化は環境の大きな変化のある時に一斉に起こるという当たり前のことが、見えてきたわけです。当たり前だからこそ、自然の一部である生きものはこうやって生きているのだろうなと思います。

中村桂子『生命誌とは何か』

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