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辛い料理を食べた後の「爽快感」と「ランナーズハイ」

今日は『植物は<未来>を知っている 9つの能力から芽生えるテクノロジー革命』(著:ステファノ・マンクーゾ 他)から「マゾヒズム、ランナーズハイ、奴隷」を読みました。

辛い料理を食べる。舌がヒリヒリする感覚を覚えながらも、食事を終えたあとで気分がスッキリすることが多いです。そのような爽快感が、辛さを病みつきにさせている理由の一つかもしれません。

最初は辛さを感じても、次第に舌が辛さに慣れてくるわけですが、その秘密は「エンドルフィン」と呼ばれる神経伝達物質にあるようです。

舌で痛みを知覚すると、脳に信号が届き、脳は痛みを緩和するためにエンドルフィンを製造する。エンドルフィンとは、モルヒネに似た、痛みを鎮める生理学的な特質をそなえた神経伝達物質だが、その効果はモルヒネ以上だ。また、トウガラシが私たちの生活に及ぼしている謎の力を解明するためのカギでもある。

舌が痛みを知覚すると、脳内でエンドルフィンが放出され、痛みを緩和する。それは納得できるものの、食後の爽快感はどこからやってくるのだろう。その問いに対して、著者はスポーツとエンドルフィンの関係を用いて説明しています。

そうしたスポーツのあとには、一種の麻薬作用に似た、強烈な幸福感や幸福感や陶酔感を覚えることがある。(中略)こうして今では、ランナーズハイは現実に起こる現象で、脳内でのエンドルフィンの放出によって引き起こされるとわかっている。さらに、この物質の鎮痛作用のおかげで、激しい身体運動を行なったアスリートは限度を超えた激しい痛みにも耐えられる。

ランナーズハイとは、ランニング中の陶酔状態のこと。ランニングを続けるうちに身体の疲労が蓄積していきますが、運動状態に慣れると次第に疲労を感じなくなり爽快感がやってきます。

ランナーズハイでの爽快感は「エンドルフィン」が関係している。辛い物を食べている時の爽快感も「エンドルフィン」によるものと分かり、点と点が線でつながった気がします。

痛みに慣れてくると、どこかで快楽に変わる瞬間がある。但し、その快楽は痛みと引き換えに得ているわけで、どこか自己犠牲的でもある。何事も適度に。際限なき追求は感覚を麻痺させ、身を滅ぼしかねないことを学びました。

また、哺乳類がひりひりと痛みを感じる受容体を、鳥はもっていなかった。これは、トウガラシにとっては、さらなる進化に好都合だった。鳥によって種子が広範囲に拡散されていったからだ。(中略)鳥は種子を噛みくだかずに、はるか遠くまで運んでくれるので、哺乳類よりずっと信頼の置ける運び屋だった。

辛さを感じない動物が、トウガラシの種子を散布する。人は辛さによる依存関係がある一方、鳥の場合は「共生関係」を築いているのかもしれません。

「依存」という言葉を聞くとネガティブな印象を抱きがちですが、人間社会は互いにつながって成り立っているわけで、互いに依存しあっている。だとすれば、「依存=悪」だと決めつけることは正しくないのかもしれません。

健全な依存関係と不健全な依存関係があるとするならば、その境界線はどこにあるのでしょうか。

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