オルターエゴと理想の自己像

オルターエゴ(別人格)」とは、芸術や芸能などぼ分野で、その人が意図的に異なる人格をロールプレイしている事を指す事の多い言葉だ。いわゆる「演技」という行為がそれを端的に示す。

大舞台などの緊張を伴う場面で「オルターエゴ」を行うと、自分の感情から一歩離れて状況を冷静に観察でき、それによって上手い演技を行えるようになる、という事があるらしい。
自分を「自分」と思うのではなく、「特定の誰か」と思い込んで演技する事で、より上手い行動ができるのだしたら、それを大舞台などの特殊な場面だけではなく、日常生活においても活用したらどうなるのだろう?

1つ興味深い事例として「バッドマン効果」というものがある。バッドマンとはアメリカンコミックに登場するヒーローの事であり、より分かりやすくいうのなら「ヒーロー効果」となるのだろうか?
「バッドマン効果」は、「自分をヒーローと思い込んで、ヒーローだったら今この状況をどのように行動するだろうか?を考えて行動すると、望ましい成果を出しやすくなる効果」といったような効果といえるだろう。
たとえば、子供が宿題をやる場面で「ヒーローだったら、宿題をどうするか?」と考えて、「ヒーローだったら、真面目に宿題をこなす」と判断すれば、そうでない場合よりも、宿題に真面目に取り組むようになる、という感じらしい。

これを日常に応用しようと思った場合、例えば、
・高い創造性を持った人になりたい
・知的な人になりたい
・精神的に成熟した人になりたい
などと思っている場合、自分の思った通りの人物を架空のキャラでも実際の人物でも良いので、思い浮かべて、「もしその人だったら、どのように行動するのだろうか?」と考えて、「その人ならば、きっとこう行動するだろう」と思い浮かんだアイデアがあったら、それを実践してみる事で、自分の望む存在へと近づけるのではないだろうか?

たとえば「自分には特に何の強みもない」と思っている場合、「じゃあ、自分はどんな強みが欲しいと思っているだろうか?」と問いを立てて、思いつくままに書き出していく。
・読書をする
・粘り強く考える
・物事を構造的に、俯瞰的に捉える
・既存の発想に囚われない柔軟な発想力を持つ
・仮説と検証のサイクルを上手く回す人
・失敗を最大限、次に活かせる人
などと思いつく限り、書き出す。
そして、それぞれの項目で「もっとも該当していると思われる人物は誰か?」という問いを立てて、思いつく限りの人物の名前を書いてみる。
・ソクラテス
・プラトン
・アリストテレス
・ショーペンハウエル
・レオナルドダヴィンチ
・アインシュタイン
・ピタゴラス
・ウィトゲンシュタイン
・コナンドイル
・シャーロックホームズ
・アダムスミス
・フリードマン
・カールマルクス
・ルネデカルト
・アランチューリング
・ポールエルデシュ
・パスカル
・ニュートン
・ヒルベルト
・ベートーヴェン
・シューベルト
・バッハ
・パブロピカソ
など、思いつく限り、リストアップする。

そうしたら、その人物の生活や能力、習慣などを考える。思いつかなかったり知らなかったりすれば、伝記や出版物などを読み漁って特定する。 
そこから、自分の現状と比較して、そのギャップをあぶりだす。(可能ならば、科学的な根拠に基づいた書籍や論文などで、詳細な分析をした上で、判断したい)

あとは、「今からできる」レベルの簡単な行動を考えて、それを少しずつ習慣化していき、時折、フィードバックを通して修正していく。自分の望む方向に進んでいれば、そのまま実行し、望む方向に進んでいないと感じれば、その根本的な要因を考えて、仮説を立てて修正する。それをずっと続けていけば、それなりの成果を得られるのではないだろうか?

《「理想的な自己像」を設定するために役立ちそうな資料》
「ストレングスファインダー」
「MBTI」
「エニアグラム」
上記3つは、あくまでも自分のお気に入りの自己像を考えるための資料として使う。それらはいわゆる「性格診断」や「強み診断」と呼ばれているツールであり、質問に答えていくと、「あなたの性格」や「あなたの強み(弱み)」などを教えてくれると喧伝する。しかし、この本来想定されたツールとしての機能はどうでもいい(そもそも、科学的には疑問視されている部分も多い)。「本当のあなた」をそれらのツールに教えてもらう必要はない。
それらのツールは「自分のなりたい自己像」を作り上げるための参考資料にすると良いだろうと思われる。いきなり紙とペン(あるいはワードソフトやドキュメントなど)を目の前に用意して、「理想的な自分とは何か?」と考えても、すぐに思い浮かばない事も多い。
そこで、上記の3つを読みながら「あ、これはいいな。こんな風になれたら嬉しい」と思える要素があれば、それらをリストアップしていく。
そうすれば暫定の「理想の自分が持つ要素のリスト」というものが完成する。とりあえず、それらを元に、その自分の良いと思った要素を持つ人をじっくりと探して、その人のロールプレイをしてみる。

併用するとすれば「ゲームキャラの作り方」「小説の登場人物の作り方」などの創作するための情報を用意して、「キャラ設定ノート」でも作ればいいだろう。

「価値観リスト」
これは、80個の項目から、最終的に、特に重視する5つの価値観を決定して、その価値観通りの生活に近づけていく事で、より充実した人生を送れるようになる、と言われている手法。
これも、本来の想定された手法はどうでも良い。
重要なのは、リストアップされた80個の項目とそれについて自分はどう思うか?の部分だ。中には「AとBとCは、何が違うのか?同じじゃないのか?」と思う事もあるだろう。その場合、「AとBとCに共通していると考えられる要素」を1つの価値観とカウントしても良いだろう。
80個の価値観を眺めて、「この価値観は自分に合っている」と感じるものをリストアップしていく。
あとはそれらから、似ている要素は合体させて、可能な限り数を減らす事で覚えやすくする。できれば残った価値観も、何らかの共通点(究極的関心)があると統一感を持てるだろう。


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