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箱庭、夜の散歩

えんじ色のカーディガンを羽織って窓を開けたら月が見えた。
少しだけ寒くて季節が変わっていくのが嬉しかった。

月が丸くて明るいから、こんな日は仲良しのクマのぬいぐるみ(子供の頃にもみじ、という名前を付けた)と散歩に行くと決めている。
もみじは月が好きみたいだから。
濡れた黒い瞳に月が映ると、もみじは踊る。

もみじに橙色のマフラーを巻いて、手を繋いで公園に向かう。
道中も、もみじは楽しそうで耳をパタパタさせていた。飛んでいかないか心配だった。
公園近くの自販機でお汁粉を買った。
もみじは「おしるこは、まだ、はやいよ」と言ってクスクス笑った。
「先手必勝だよ」と僕は言って、もう月に夢中なもみじの手を離してやった。

濡れた瞳のもみじは踊っていた。
僕は泣いた。
きれいできれいで怖かった。

朝が来る前に、こうしてもみじとの夜の散歩を終わらせられない日がいつか来てしまうのが恐ろしい。

空は紺色で月は白くて、もみじは踊っていて、空気がただ冷たい。

このまま夜の散歩に閉じ込められたいな。
恐ろしいから、愛おしいから、ぜんぶ壊れたらいいのに。

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