『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』cis(角川書店)を読んでの感想①

日本市場での運用は難しいと言われる。約30年にも及ぶ低迷期の中で、売りと買いを駆使しながら安定的に利益を出し続けるということ自体に無理があると思えるが、そんな中でもcis氏は大きな利益を手にしてきた。
一体、cis氏は日本株をどのように見ているのか?それが分かるのがp68の以下の記述。

企業の価値を株価が正しく反映していないと考えるよりも、株価こそが答えであり、世の中の総意として適正だとみなされている数字だと考えるほうが正しい。

これは米国株について、バフェット達が語っていることとは違う。彼らは目先の株価が答えである、とまでは言わない。
cis氏は米国株に関して、p32でこう言っている。

…アメリカ市場は日本市場とは違った難しさもある…。

そういえば、日本株と米国株の両方で顕著な運用成績を残し続けている人がいるという話は聞かない。
米国株ブログで有名な人は、概ね日本株に対して否定的だし、日本株が期待外れで将来性を望めないから移ってきた、ということが多い。

日本株は投機家向け、米国株は投資家向けという捉え方も可能だろう。異なる資質が必要とされているならば、両方で器用にアプローチを使い分けて大きな利益を得る人が皆無だとしても、それほど不思議ではないのかもしれない。

cis氏の日本株観を知って思い出したのが、『経済セミナー』2011年10・11月合併号p17に記載されていた以下の記述。(楠岡成雄氏の発言)

…大手の金融機関でクオンツと呼ばれる人たちは、基本的に市場価格と理論値が一致しないのは理論が間違っていると理解する。すなわち、市場価格は神様が与えた絶対的に正しいもので、それに合わないものは間違っている。市場価格至上主義です。
それに対し、自分としてのファイナンスモデルを持ち、市場価格と理論値がずれたら、ここにもうけるチャンスがあるとして、そこをねらっていく人たちもいます。しかし、大手の金融機関はそういうことは絶対しない。

日本株に対する見方という点で、大手の金融機関のクオンツと共通するものがあるのかもしれない。

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