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南西シフト下の巨大要塞島として姿を現しつつある馬毛島ー種子島

 明らかになった南西シフト下の馬毛島基地

 今年8月7日、防衛副大臣は種子島を訪れ、西之表市長・議長に対し、馬毛島への自衛隊配置計画等について説明した。

 こらの資料で冒頭に明記されたのは、馬毛島ー種子島が、自衛隊の南西シフト態勢下の巨大基地として明らかになったことだ。従来、防衛省は、馬毛島使用について、米軍のFCLP(Field-Carrier Landing Practice:空母艦載機着陸訓練)基地であるとか、「災害派遣の集積・訓練基地」であるとか、徹底して誤魔化してきたものを今やかなぐり捨て、あからさまに南西シフト態勢の基地として打ち出してきたのである。

 発表された「馬毛島における施設整備」(防衛省・自衛隊)は、冒頭から「わが国を取り巻く安全保障環境」は「厳しさと不確実性を増す安全保障環境」であり「わが国島嶼部に対する攻撃への対処等のため、南西地域に自衛隊の活動場所が必要」と断言する。

 そして、中国・北朝鮮・ロシアの脅威を一段と強調する。これは今までの馬毛島説明資料では、まったく明記されなかったことだ。自衛隊の本音ー馬毛島基地化の本当の理由を明言しただけでなく、中国脅威論ー南西シフト態勢を強調することによって、住民への煽動的合意をつくり出そうとする意図が明らかだ。

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  自衛隊史上、最大基地=要塞島・馬毛島

  このような中国脅威論を元にして造られようとしているのは南西シフト態勢下の巨大基地・要塞だ。防衛省の計画では、馬毛島には滑走路を2本造るとしている。1本目は2450メートル、2本目は1830メートルと。滑走路2本という航空基地は自衛隊でもない。滑走路1本でも民間と共有というのが多数だ(千歳・百里基地は滑走路2本だが民間と共有)。

 この自衛隊史上、最大の滑走路を有する航空基地を自衛隊はどのように使うのか? 下記には12項目の様々な「施設利用」が明記されている。だが、この施設利用以外にこの巨大航空基地、しかも、南西諸島に位置する馬毛島の位置からして、空自那覇基地と並ぶ、いやそれ以上の航空基地として使用されることは、言うまでもないことである。

 「馬毛島に自衛隊施設を整備する必要性」の頁ではー        南西地域の島嶼部において、
① 陸海空自衛隊が訓練・活動を行い得る施設
② 整備補給等後方支援における活動を行い得る施設
③ 米空母艦載機の着陸訓練(FCLP)の施設 が必要
」と、馬毛島を南西シフト下の「演習・訓練・機動展開」として位置付けるとともに「整備補給等後方支援」、つまり兵站拠点として位置付けたことが明確にされている。そして、米軍のFCLP施設だ。

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 そして、膨大な全自衛隊の演習・訓練施設

 この演習・訓練施設・機動展開施設について、具体的に見てみよう。説明資料は「馬毛島に自衛隊の訓練施設・緊急時の活動施設を整備することは、わが国の防衛上、極めて重要」と、「防衛上」をあからさまに明言し以下の訓練施設として使用することを明記している。

➀連続離着陸訓練(F-35,F-15,F-2等)                   ➁模擬艦艇発着艦訓練(F-35B)                     ③不整地着陸訓練(C-130)                       ④機動展開訓練(F-35,F-15,F-2,KC-767,C-2等)              ⑤エアクッション艇操縦訓練                        ⑥離着水訓練及び救難訓練(US-2)                   ⑦水陸両用訓練(AAV,エアクッション艇等)                   ⑧ヘリコプター等からの展開訓練(CH-47,V-22)              ⑨空挺降投下訓練                          ⑩PAC-3機動展開訓練                        ⑪災害対処訓練(UH-60)                       ⑫救命生存訓練

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 一見して、南西シフト態勢下の、機動展開訓練をはじめとして、陸海空全部隊の戦闘機・輸送機・水陸両用車・空挺などの訓練・演習だ。つまり、馬毛島は、自衛隊では初めての陸海空に亘る統合演習場、巨大演習・訓練場として造られようとしていることだ。

 兵站拠点としての馬毛島

 続いて、説明資料は「整備補給等後方支援における活動を行い得る施設」と造るとし「わが国島嶼部に対する攻撃への対処のための活動場所として、また、災害等発生の際、一時的な集積・展開地として活用」、「例えば、災害が大規模・長期化した場合でも、馬毛島に人員・装備を集積できれば、効果的・効率的に対応が可能」という。

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 ここでの「災害派遣」は、住民を誤魔かすための説明であり、重点は「わが国島嶼部に対する攻撃への対処のための活動場所として」「整備補給等後方支援における活動を行い得る施設」、すなわち「南西諸島への後方整備拠点=「兵站拠点」=「事前集積拠点」としてあるということだ。

 これについては、筆者は防衛省の情報公開文書でたびたび明らかにしてきたが、馬毛島ー種子島ー奄美大島などの薩南諸島が、文字通り、南西諸島ー南西シフト態勢下の、一大補給兵站拠点として設定されたということだ。

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 言うまでもないが、軍隊の戦時下の兵站物資は、膨大なものである。武器・弾薬・整備器材などは言うまでもなく、燃料・糧食・医療資材等、湾岸戦争下での米軍のイラクへの兵站物資は100万点に及んだといわれている。この巨大な物資、しかも、自衛隊の機動展開部隊は、先島―南西諸島への常駐・先遣部隊だけでなく、「3個機動旅団・4個機動師団・1個機甲師団」分の兵站である。いかに膨大なものか、想像出来ないぐらいだ(航空要塞化に加えて、幾つかの港湾施設=軍港が造られることに注意)。

(防衛省は先の資料で、馬毛島には飛行場、格納庫、庁舎、燃料タンク、火薬庫、宿舎(種子島に)、港湾施設を整備するとしている。見て分かるとおり、単なる訓練施設であれば、「火薬庫」は必要ない。かえって危険になる。だが、馬毛島に火薬庫を造るというのは、この施設が兵站拠点としてあるからだ。)    

 そして、説明資料は「馬毛島にFCLP施設を置く必要性」として「米空母のプレゼンスはわが国にとって極めて重要な抑止力・対処力、アジア太平洋地域における米空母の活動を確保する必要性」をいい、そのFCLPは年間30日程度であると明記している。そして、ここでは、馬毛島における滑走路の方向を、民間空港・種子島空港の設定とは変えているとしているが「馬毛島基地(仮称)の設置により発生する騒音は、現段階で正確に見積ることはできません」と、あらかじめ言い訳をしている。実際に図面上でも、種子島への騒音は避けられないのである。

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 自衛隊の配置人員のペテン

 さらに、「説明資料」は、「自衛隊馬毛島基地(仮称)の部隊配備計画」として、自衛隊としては初めてという「陸海空の統合基地」として「自衛隊馬毛島基地」が造られることを明記しているが、昨年12月の防衛副大臣の説明では配置人員は100名程度としていたものを「150~200人程度」に、全く何の説明なしに増員している。

 だが、見てきたような巨大な施設ー訓練演習拠点であると同時に南西シフト態勢下の兵站施設を、この程度の人員で維持・運営できるわけがない。いきなり数百ー千人以上の部隊配置を明言したとするなら、反対運動を刺激しかねないという理由から、最少人員に見積もったにすぎない。

――実際に、常駐人員ばかりか、見てきたような全国の部隊の演習などが頻繁に行われるというからには、絶えず膨大な部隊・人員が馬毛島ー種子島に滞在、行き交うことになる。そして、馬毛島の軍事化は、同時に種子島の軍事化である。

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 この間、西部方面隊の鎮西演習や全自衛隊の統合演習などで、南種子町・中種子町などで行われている生地訓練ー上陸演習などを見れば、この馬毛島の軍事化を契機にして、種子島が一挙に南西シフト態勢の巨大演習場に組み込まれつつあることが明らかになっている。

 始まっているのは、馬毛島ー種子島の軍事化・要塞化だけではない。先島ー南西諸島の軍事化だけでもない。九州から日本列島に至る、急速な軍事化なのだ――第1列島線ー琉球弧が、日米の「島嶼戦争」=海洋限定戦争での、ミサイル戦場となろうとしてるのだ(米海兵隊・陸軍の対艦・対空ミサイル部隊配備計画)。 https://note.com/makoto03/n/ne20995cdea40

 馬毛島(種子島)の要塞化に抗する、「本土」・沖縄・先島の住民の連帯を創り出そう‼  この政府・自衛隊の、マスメディアと一体化した策動を的確に見抜き、今、真っ向から対峙していく世論と運動を創り出すべきときが来ている。

 宮古島・石垣島などの先島では、未だに自衛隊のミサイル基地化を阻み、厳しいながらも、必死の抵抗が続いている。今なら、まだ、この琉球弧のミサイル基地化ー軍事化を止めることが出来る。権力の意図を打ち砕くことが出来るのだ。

*防衛省説明資料・全文 https://www.mod.go.jp/j/approach/chouwa/mage/pdf/siryou-5.pdf

*小西 誠「南西諸島要塞化の兵站基地と化す馬毛島ー種子島」https://note.com/makoto03/n/n116345bf3e92

*自衛隊の先島・奄美―南西諸島配備の実態・全貌――要塞化する琉球弧・恐るべきミサイル戦争の実験場  https://www.dropbox.com/s/hw0c5euns6hy64v/2020-6-20%E3%83%BC%20%E5%8D%97%E8%A5%BF%E3%82%B7%E3%83%95%E3%83%88%E6%85%8B%E5%8B%A2.pdf?dl=0&fbclid=IwAR3ATam6LeP49Kiu0oJAZUyuvNukZpoSwvc2eRmtEUHJBf_rSWjOVWvJc8U

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着工以来、工事現場で300日の座り込みを続ける宮古島・保良地区の住民たち
(地対艦・地対空ミサイルの弾薬庫建設に抗して) 

私は現地取材を重視し、この間、与那国島から石垣島・宮古島・沖縄島・奄美大島・種子島ー南西諸島の島々を駆け巡っています。この現地取材にぜひご協力をお願いします!