日傘を部屋の中でさす女

三年半前上京したての頃。

新居先のワンルームはがらーんとしていた。

ベッドやカーテンも新居と同じように新しくしよう!と意気込んでいたのに、何もそろえないまま上京してしまった浅はかな私。

引っ越ししてからすぐにホームセンターに行きカーテンやベッドを買いに行ったが、新居に届くのは最長二週間後だという。
特にカーテンは、サイズがなくオーダーメイドになりベッドより時間がかかった。

それらが届くまで、ベッドもカーテンもない室内で暮らさなければはらなかったのだが・・・

・・・その結果がこちらだ・・・・・

近所の無印良○で緊急に購入したゴザ。それを敷いて作った簡易寝床にカーテンがわりに使用した日傘。

日傘・・・・・

部屋の中で日傘・・・・・・・。

人生で初めての経験だった。そしておそらくこれが最後だろう。しかし、日傘の存在はとてもありがたかった。

まだ仕事が決まっておらず、私は日中もずっと部屋にひきこもっていたので日傘がなければ室内にいながら紫外線をもろに浴びていただろう。
そういうわけで、カーテンの代用の日傘は小ぶりながら大活躍してくれたのだが、肝心の寝床はめちゃくちゃ心地悪かった。

かたいフローリングの床をもろ不快に感じてしまう薄っぺらいゴザ。

ね、眠れね〜・・・

かたすぎる。

寝ている時間、悪夢をみているようにうなされた。

私は一生忘れない。

六畳一間の何もなくがらーんとしていた部屋。

外は未知の世界、トウキョウ。

外出はもっぱら徒歩二分のコンビニと自宅の往復。

女をすてたような格好で当たり前のように外出していた。(現在も時々・・・)



ひげを生やしっぱなし、髪はクモの巣がはったようにボサボサ。

カーテンのかわりに日傘をさして、寝心地の悪すぎるゴザの上でうなされて寝ていた日々。友達も恋人もいなかった孤独なあの頃だが、時が流れた今、なぜか思い出の中の私は楽しそうに笑っている気がするのだ。

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