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(雑学)いただきもののキュウリが時々すごく苦いから、簡単に調べてみたい。

こんにちは、makokonです。
先日、ご近所の方から自家栽培のキュウリをいただきました。そのまま食べても美味しく感謝していたのですが、一本だけ非常に苦いキュウリがありました。
ご近所の方も「今年は暑いから、苦いキュウリが混ざっているかもしれない」と言っていました。
暑さとキュウリの苦味にどんな関係があるのか、興味が湧いてきました。そこで、キュウリの苦味について少し調べてみることにしました。
「暑いから苦くなる???」



今回の結論

  • キュウリの苦味成分はククルビタシンCである。

  • ククルビタシンCは通常ヘタの部分に多くたまるので、苦みを強く感じることは少ない。しかし、大量にあれば、苦みを強く感じることもあるだろう。

  • ククルビタシンCは、植物中の窒素代謝の中で作られる。

  • たくさん作られるとすれば、原料が多いか、反応が活発になったのだろう。

  • 原料は、窒素系の肥料から供給されるが、これは、同じ畑での個体差要因にならない。

  • 反応の促進には、硝酸体窒素還元酵素が重要な役割をはたす。

  • この酵素の、活性温度は35-45℃くらいである。

  • 結果、猛暑のときは苦み成分が大量に作られる事がある。

ということみたいですね。
ちょっと専門外ですが、少し調べてみました。


キュウリの苦味成分

ククルビタシンC:
非常に強い苦みを持つ成分ですが、通常その含有量は少なく、ヘタの部分に多く含まれることから、実際に強い苦みを感じることは少ないそうです。なお、抗がん作用が含まれることも報告されていますが、苦みは食べたくないのであんまり関係ないですね。
ククルビタシンCの構造は、以下の通りかなり複雑な化合物ですね。まともに実験室合成はとても面倒そうですが、植物の代謝反応の一環で合成できることがわかっています。

ククルビタシンC


苦味成分の合成経路(雑な説明)


ここでは、専門性が高すぎるので簡単にしか説明しませんが、ククルビタシンCは、アセチルCoA→メバロン酸→スクワレンの経路で合成され,その過程における酵素系も解明されています。

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/0031942283850201

この論文では、10α-ククルビタ-5,24-ジエン-3β-オールという最も単純な四環性トリテルペンをキュウリの苗でククルビタシンCに変換することができました。この変換は以前から仮定されていましたが、植物組織内で実証されたのは初めてです。
雑に言うと、硝酸還元酵素が絡む窒素系の代謝は以下のようなプロセスになっていますが、その段階で硝酸イオンの処理に関わっています。

アンモニウムイオンは硝化細菌(亜硝酸菌,硝酸菌)の硝化作用により亜硝酸イオン→硝酸イオンとなり,植物体に吸収される。
 吸収された硝酸イオンは根や葉で再び亜硝酸イオン→アンモニウムイオンにまで還元されたのち,各種有機酸と結合し,アミノ酸をはじめとする有機窒素化合物に同化される(窒素同化)


苦味成分が増える要因(肥料)

年のため、窒素系肥料と、硝酸イオン、苦みの強さについて確認してみましょう。反応促進メカニズムは難しいですが、苦みの強さを確認するだけなら、原料をたくさん使えば検証可能です。

無機質肥料である大塚ハウス1号・2号(大塚アグリテクノ!製)を施用し,3段階の培養液濃度で低濃度区(EC約0.8mS/cm),中 濃 度 区(EC約1.2mS/cm)お よび高濃度区(EC約2.4mS/cm)の3試験区で栽培し,収穫した果実を実験に供した。培養液濃度に対応して、硝酸イオン含有率が高まり、苦みも強くなる事がわかった。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jafps/39/2/39_93/_pdf



合成経路に関わる硝酸還元酵素

10α-ククルビタ-5,24-ジエン-3β-オールがククルビタシンCの整合性に関わる酵素なのですが、一応調べておきます。
見るからに、構造依存性が強そうな酵素ですね。最適温度を表す資料があればよかったのですが、残念限られた時間で見つけられませんでした。
どなたか知っていれば、教えてくれると嬉しいです。溶液中での構造安定性で考えれば40℃くらいなのかな(山勘です)

CAS No. 35012-08-9
Chemical Name: Cucurbita-5,24-dien-3β-ol
Synonyms Cucurbitadienol;Anhydrolitsomentol;10α-Cucurbitadienol;Cucurbita-5,24-dien-3β-ol;Glycopyrrolate Impurity 59;10alpha-Cucurbita-5,24-dien-3beta-ol;(10α)-9β-Methyl-19-norlanosta-5,24-dien-3β-ol;19-Norlanosta-5,24-dien-3-ol, 9-methyl-, (3β,9β,10α)-;(3beta,9beta,10alpha)-9-Methyl-19-norlanosta-5,24-dien-3-ol
CBNumber: CB22242927
Molecular Formula: C30H50O
Molecular Weight: 426.72

酵素の最適温度 調べられませんでした。すみません。


あとは、この酵素を活性化させる最適化温度を調べて今年の気温と合わせて見れば一応まとまったのですが、ごめんなさい。信用できる資料にぶつかりませんでした。なので一般論を紹介します。
一般に化学反応では、温度が高いほど供給されるエネルギーが多くて反応速度が早くなるのですが、酵素反応ではその巨大な分子の立体的構造に依存する、触媒反応であり、その構造の安定性から最適な温度が制限されます。生態中に存在する酵素ではその最適温度は35-50℃であることが多いようです。


まとめ


キュウリの苦味成分であるククルビタシンCは、植物の窒素代謝過程で生成され、特に高温時にはその生成量が増えることがわかりました。この成分が多く含まれると、キュウリに強い苦味を感じることがあります。今回、頂いたキュウリの苦味をきっかけに調べたことで、自然界の複雑な酵素反応の一端に触れることができ、とても興味深い経験でした。また別の機会に、さらに詳しい生合成のメカニズムについても紹介できればと思います。

残念ながら、私は有機合成一般について多少は詳しいつもりですが、生合成に関しては、ほとんど経験と知識がありません。このあたりの考察にAIは力を貸してくれるんでしょうかね。

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タイトル画の説明 by GPT-4o

この画像は、キッチンで大量のきゅうりを処理しているシェフを描いています。背景には晴天で陽射しが強く、気温が上昇していることが示されています。左上のグラフには、気温が28度を超えると苦味が増すことが記されています。右上のグラフには、気温の上昇により、きゅうりが甘味から苦味へと変わる様子が示されています。シェフは汗をかきながらきゅうりを切っており、周囲には瓶や調理器具が置かれています。このイラストは、気温の上昇がきゅうりの味に影響を与えることを表現しています。




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