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『氷葬』

氷河は東へ八時間走ったところにある

リンネは十五歳の若さで逝った

家族に看取られて

はや四年


父と二人の兄は

決まって火曜日と金曜日にリンネに会いに行く


あの日のままの姿を保って

氷河の隙間で眠る彼女に

四年間

かかさず

会いに行く


車を交替で走らせて

亡骸に

会いに行く


母はいっぽう

家で待つ

留守番もさることながら

収入を得なければならない

男連中が

リンネを口実に働かないために


曰く

まだ弔いは続いていると

まだ喪は明けていないと


母は

レジ打ちの仕事と

合間には

美術学校での経験をふまえて

ちょっとした絵を描き

それが売れるようであれば

売る


そんな生活が

リンネ亡きあと

続いている







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