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子どもに苦労させる


息子たちの定期テストの結果が届いた。
……ははは。
と笑って窓の外を見る。梅雨空。ヤァ紫陽花がきれいだな。

……。
そうなのだ。
子育ては「どれだけ若いうちに失敗させるか。悔しい思いをさせるか」に尽きると思っている。
 ・可愛い子には旅させよ。
 ・若いうちの苦労は買ってでもしろ。
これ、我が夫婦のモットー。


旦那さんがあるとき、子持ちばかりが集まった飲み会で「息子たちには、出来るだけ失敗させたい」と言ったら、「えっ」という反応とともに理解不能と軽く引いている人たちが何人もいた。もちろん賛同する人もいたのだが。

引いた人たちには特徴がある。
彼らは「子どもを周囲よりも優位に立たせることで、自信をつけさせる」ということにをモットーにしている。
確かに子どもって人よりも優れているところを自覚すると、それだけ自信が付くものである。だとしたら、それも一理ある。実際に私も絵が人よりも得意だったから、それを支えに生きたものだ。ウチの子どもたちも、ちょっとサッカーが上手かもだとか絵が上手いかも、というところを軸に生きているのがわかる。
何かに自信を持つということは、いいことだと思う。

しかし特徴的なのは、このような人たちは、親の努力によって優位に立たせようとしている傾向がある。親の頑張りが子どもの「成功」と信じている節がある。「成功」を目指しているわけだから、「失敗」を目指す我が家とは真逆も真逆なのだ。理解不能、そうだろうよ。
彼らの多くはアドバンテージを得るために、誰よりも早く人気のゲームを買ってあげるような人もいる。誰よりも早く携帯を持たせる。ブランド服やお高い美容室に行かせる。誰よりも勉強ができるよう塾に毎日通わせる。家庭教師をたくさんつける。チーム内の誰もよりも野球ができるよう親が猛烈鬼コーチになる。サッカースクールを梯子させる。……などと言った人も含まれている。
価値観は様々なのだが、なんというか……熱い、のである(そしてお金がかかっている……)。


周囲より優位に立つ。つまり、
「今、できていれば、のちに楽」
「今、頑張れば、あとで楽」
という考え方に基づいている(中には単純に親が負けず嫌い、目立ちたがり、という人もいるのだけれど)。出来るだけ失敗なくスムーズに行かせる方針なのだ。
私の母もこの手のクチだった。だから、これらの言葉をよく言われた。耳にタコだった。が、そう言われたところで、当時としては私は私なりに頑張っているつもりであり、思った以上に頑張れないのも事実だ。
「今頑張らなくて、いつ頑張るの!」
「いつやるの? 今でしょ!」
でもこれって、焦っているのは親たちなのである。



しかし私たち夫婦の考え方からすると、親が焦ってお尻を叩いてじっくりみっちり付き合っていては、失敗できない。しくじるという、子どもの経験を奪ってしまったら、それは子どもの成長には繋がらない……と、考えている。

所詮、流行りのゲームを誰よりも先に買って得たアドバンテージなどたかがしれているし、おしゃれな服も自分で選ばなければセンスは磨かれない。勉強も家庭教師がつきっきりで教えたとしても、自分で学ぶ力が身につくかはまた別の話である。社会に出て、お母さんなしでイケている服を選べるかは謎であるし、仕事で何かについて勉強しなければいけないときに、そこに塾も家庭教師もいないのである。

今、息子たちは、自分で自分を高める訓練中なのである。失敗し放題のフリータイムなのである。失敗が即、明日の食い扶持に響くような、深刻な時間ではないのである。
ここで激しく尻に鞭打つことが、若いうちの「苦労」は買ってでも……ではない。受験に失敗する。テストに失敗する。柄on柄で、洋服の組み合わせでやらかす。練習不足でスタメンから落ちる……。そして、そこから学ぶ。これが私たちの求める若いうちの「苦労」なのである。
失敗や挫折を知らないですくすくと育てることが、親の務めではないのである。
いいですか、みなさん。これは今、私が今、自分によーーく言い聞かせるために書いておりますよ。みなさんにお付き合いいただいております。


後で楽って、何が楽なんだろう。
一瞬の、今の目先が楽なだけであって、もしかするとそれは、のちのち人生の楽ではないかもしれない。
親が叱咤激励、脅してすかして尻を叩けば頑張る……のかもしれないが、それで実力がつくというのは幻想だ。
尻を叩いて実力以上の学校や会社に押し上げたとしても、子どもはそこで苦労するかもしれない。適材適所。天才はそれなりに。凡人はそれなりに。それが幸せの秘訣である。

もちろん。多少のアドバイスはする。学校説明会に一緒に行ってみたり、こういう参考書が欲しいだの、夏期講習を受けたいだの、本人にやる気があればお手伝いはする。勉強のわからないところは、みてやってもいい。経済が許す限り環境は整えたいと思う。どうしても留学したいだとか(ウチにできるか?)、サッカーのクラブチームを受けさせてくださいだとか。
でも要は、必要以上の手出しは不要。こちらが焦って、競走馬のように尻を叩きまくっても仕方がない、ということなのだ。

頑張れ、私。ここはぐっと耐えるのだ。




ここまで読んでくれただけで、うれしいです! ありがとうございました❤️