椅子を作る①〜椅子ってなんだろう〜

『1/5スケールの椅子を作りなさい』
突然現れた、シンプルな難題。この2週間ほど「椅子」について考え、色々な資料にあたり調査を進めていました。椅子は考えれば考えるほど、奥が深く面白いもの。今日はその椅子の魅力について書いていきたいと思います。

椅子とは何か

まず、椅子と聞いて皆さんはどのようなイメージが浮かびますか?

自分だと、椅子とは座るための道具で、座面があって、背もたれがあって、4本脚があって・・・といった(大変素朴な)イメージが浮かびます。こうしたイメージは人により大差ないと信じますが、シーンを具体的に考えてみると椅子の造形は非常に多岐に渡ることに気づきます。例えば、「勉強するときの椅子」「食事をするときの椅子」「部屋でくつろぐときの椅子」では、椅子の座面の高さ、背もたれの角度などが大きく異なっています。

勉強するときにはシャキッと背筋が伸びるほうが集中できますし、くつろいでいるときは思い切り背もたれを倒して体を倒したくなるもの。電車でも席が空いているなら(自分は)座りたいです、もう歳ですし楽ですし・・・

つまり、「体重を支える、それにより人間の楽な姿勢をサポートする」という基本的な機能は多くの椅子で共通するが、その目的により椅子の造形は非常に多くのバリエーションを持つ。これが椅子の持つ一つの大きな特徴と言えそうです。

次に、家具屋にいって、お気に入りの椅子を探している場面を想像してみます。あなたは、どのような基準で椅子を探すでしょうか?

これは一人一人で回答は違ってくると思いますが、自分はまず椅子の見た目が気になります。色や形、素材感は好みのものか。部屋にマッチするか。などです。もし興味を惹かれたら、実際に腰を下ろしてみて座り心地を確かめます。座り心地がフワフワで最高に思えても、例えば勉強の用途であれば寝てしまうこと必死ですから、目的にかなった椅子かどうかもチェックします。私なんぞはしがないサラリーマンですから価格も非常に重要です!

こうして見ると、デザイン・座り心地・価格といった椅子そのものの特性に加えて、椅子が置かれる空間まで考慮に入れた上で、私たちは椅子を選んでいることが分かります。事実、椅子の名作は有名な建築家による作品であることが多く、住空間といった環境・広くはその土地の文化と椅子が切り離せない関係にあることを意味しています。

椅子の歴史から見るデザインの難しさ

ここでは、椅子の歴史について簡単に概観していきます。最古の椅子はエジプト考古学博物館に収蔵されている以下の椅子だと考えられています(画像はボストン美術館に所蔵されているレプリカ、出典はこちら)。

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第4王朝のスネフェル王の妃、ヘテプヘレスの椅子と言われています。最古の椅子とは思えない、見事な装飾に驚かされます。このように、古代においては権力の象徴として椅子が用いられることが多く、この象徴性は椅子のもつ重要な特徴の一つです。現在においても、例えば社長や大臣・裁判官の椅子は威風堂々とした圧を感じる(?)デザインの椅子が採用されていることが多いイメージですよね。

このように椅子は大変深い歴史を持ちながらも、その基本的なデザインは時代を超えて変わっていない点も特筆に値します。実はこの100年ほどの椅子の発展を振り返ったとき、テクノロジーの発展や時代の流行といった様々な要因から造形上のブレイクスルーが生まれることも度々ありながら、従来の基本的な椅子について我々が持つ概念を塗り替えるには至っていません。

ブレイクスルーの例として、人間工学的に正しい姿勢を追求し、椅子の概念を覆したと言われるバランスチェアは良い例です。

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この椅子は1979年にノルウェーのピーター・オプスヴィックによりデザインされたもの。バランス理論(背骨がS字形をしているときが人間にとって一番無理のない姿勢)に基づいて設計されており、座面が前傾している・背もたれでなく膝当てで支える、など非常にユニークで合理的な設計ながら、当時ビジネスとしては不調でした。理由としては、座る際に足元が少し窮屈になってしまったり、自由な姿勢をとりづらい、といった点が考えられます。

「座る」という行為は、太古の昔から、人間が自然と行ってきたもの。そのあまりに長い歴史から、人間は無意識のうちに座ることに多くの前提を持っており、なかなか新しい概念を受け容れづらい。ひょっとしたらそんな背景もあるのかもしれません。

このように椅子とは極めてシンプルでありながら、考える切り口が無数にあり、さらに極めて長い歴史が「椅子らしい椅子」への愛着と固執を強めている。そこに、椅子のデザインの難しさがあるのかな、と感じた次第です。

今日はこれくらいで。ここまで読んでいただきありがとうございました!
前回は簡単な自己紹介記事だったので、今回が実質的な初note記事になります。今後もできれば週1ペースでゆるりとアート・デザインやAI分野(データサイエンス・自然言語処理・機械学習)について書いていきたいと思いますので、よろしければLikeやフォローを頂けたら本当に大きなモチベーションになりますので有り難いです。

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IT企業R&Dにて自然言語処理の研究開発やデータ分析の仕事をする傍ら、2020年4月より美大にて社会人大学院生として芸術・創造性について学ぶ。IT×クリエイティブの可能性を探っていきたい。取り敢えず芋と刺身とお酒を与えておけば懐きます。仲良くしてください!
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