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自民、リモート街頭演説を試行/2020年11月27日 時事ドットコム

のぶと

コロナ禍の中、三密を回避しつつ政治活動を行う動きが広まっている。記事は自民党がリモートで街頭演説を開催したことを伝えるものだが、これに似た取り組みは他党も行っており、政界全体がウィズ・コロナ時代における政治活動のニューノーマルを模索している最中であると言える。

遠隔で行う政治活動の最大の課題は、政治家が有権者に物理的に接触できないことであろう。演説を聞いてもらったり、政策課題について意見交換をしたりするだけなら、オンラインのみで事足りる。しかし、握手をはじめ、政治家が有権者に直接触れて自らの熱量を伝え、生身の自分を知ってもらう、といったことはリアルの活動でしかできず、これが、政治家が有権者と直接触れ合うことにこだわる一番の理由と言ってよい。

一方で、現在、テレイグジスタンス(テレプレゼンス)という技術が進化しつつある。これは、遠隔地にいる自分の分身ロボットを自分と完全に同期させる技術であり、「聞く」「見る」「話す」はもちろん、「触る」も同期の対象となる。つまり、ロボットが見るもの、聞くものが操縦者に伝わり、操縦者の話すことや体の動きはロボットが再現する、というのは当然だが、ロボットの手にライターの火を近づけたら遠隔地に居る操縦者が熱いと感じるように、ロボットが触るものを操縦者も触っている感覚を感じることができるのである。テレイグジスタンスは技術レベルが年々向上しており、既に、観光・小売・物流・製造等の様々な現場で実証実験や商業化に向けたテストが行われるに至っている。

これは、テレ(遠隔)=イグジスタンス(存在)というその名の通り、ものの「存在」を再定義する技術である。「触れられること」が「そこに物理的に存在すること」の証だとすれば、テレイグジスタンスは、遠距離にあるものと目の前に存在するものとの境界線を曖昧にし、「空間を超えた物理的な接触」という不可能を可能にする。

この技術が政治の現場に導入されるとすれば、それはどのように位置づけられるのだろうか。以前、ある若手政治家は、テクノロジーがいくら進化しても選挙活動だけは生身の人間が行うほかない、といった類のことを言っていた。実際に握手して、手のぬくもりを感じてこそ、政治家は有権者の思いを、有権者は政治家の思いを、それぞれ知るのだという上記のような政界の「常識」は、テクノロジーの進化の中でも不変であるとの考えである。

確かに、有権者の側からすれば、会ったことのない人よりは会ったことのある人、手を握ったことのない人よりは握ったことのある人を選びたいというのは心理としては分かるし、それ故に政治家が実際に手を握ること、を重視することも理解できる。しかし、体の一つしかない一人の政治家が全有権者と握手をすることは物理的に不可能であろうし、支持する政治家が近くに来たとしても様々な理由で握手や物理的な接触ができない有権者も少なくないだろう。そして今、全ての有権者、全ての政治家がそのような状況に実際に置かれているのである。

テレイグジスタンスの技術がさらに発達し、分身ロボットが、見た目も動きも、そして「ぬくもり」や「生身の感覚」までも限りなく人間に近づくとすれば、それと引き換えに政治的な支持を得る装置として機能することはあり得るのであろうか。生身の人間同士が触れ合うことから政治が始まるのであるとすれば、「生身」であること自体が再定義される世の中においては、政治もまた再出発を求められるのかもしれない。

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