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Facebook、米ロビー活動費首位 逆風強く中国系も急増/2021年1月27日 日本経済新聞

のぶと

米国でIT大手が議会へのロビイング活動費を増加させている。記事タイトルにあるフェスブックは前年比2割増で首位となり、GAFA4社を合計すると総額は5000万ドルを超える。背景には、反トラスト法違反やヘイト対策不備の指摘等、国内での巨大IT企業への非難・圧力の高まりがあることは明らかであろう。

量もさることながら、これらの企業のロビイングは手法の面でも進化しており、近年ではビッグデータの活用が一般的になっている。例えば、議員の議会での投票履歴や影響力を持つ分野、政治思想などをデータ化し、その分析を基に、どの議員がどの法案にどのような投票行動をとるのかに関する予測を行ったり、それを踏まえたロビイング対象・ロビイング戦略の決定をしたりするのである。

このような質・量両面におけるロビイングの発達に関しては賛否が分かれるであろうが、それに対する評価は他に譲るとして、ここでは、このようなロビイングの進化が国や制度を超えた広がりを持ち得るものかどうか、について若干の考察を行いたい。

米国でロビイングが発展する背景には、単に技術的な先進性や潜在的な合理的マインドのみならず、制度的要因も深く関わっている。米国は立法・行政が明確に分立した大統領制であり、立法はまさに議会の専権事項である。法律をつくるのは上下両院500名超の議員たちと彼らに雇用された立法スタッフ、党に雇用された委員会スタッフたちであり、ロビイストにとっては非常に多くの多様なアクセスポイントが議会という場に集中して存在していることになる。これが、米国でロビイングが発達したそもそもの要因であり、成果を競うロビイストたちが最先端の科学的手法を求める理由なのである。

一方で、大統領制以外の代表的な統治機構の形としては議院内閣制があり、日本や多くの欧州諸国がこれを採用している。議院内閣制においては内閣が法案提出権を持ち、巨大なシンクタンクである官僚機構が実質的な法案作成機能を担う。内閣は与党から生み出され、その与党が議会の過半数を占めている状況においては、内閣提出法案はほぼ自動的に議会を通過することとなり、結果として、議会に提出される法案は大半が内閣提出とならざるを得ない。結果として、ロビイングのアクセスポイントは政府、つまり個別の法案においては特定省庁の特定部局とそれに関わる数名の議員、に限定され、ロビイング活動そのものが、少なくとも大統領制の場合と比して、規模的に小さくなるのが必然なのである。

ここにおいては、議会における個々の議員の投票履歴や思想信条などは、ロビイングの際に役立つビッグデータとはなり得ない。法案の成否はほぼ議会への提出前に固まっているし、そもそも党議拘束があるため、党が同じならば投票履歴が個々の議員で異なるということもない。例えば日本の場合、内閣は議会への法案提出の前に与党の事前審査を受けるが、この段階で与党議員に対してアプローチする際にこのようなビッグデータを活用する余地はあるかもしれない。しかしその際も、何をビッグデータ化するのかについて疑問が残る。客観的に明らかな投票履歴ではなく、思想信条や過去の発言を数値化し、しかもそれを基に将来の法案への態度を予測することは、特に政治の電子化が遅れている日本においては容易なことではないだろう。

制度は、発達する科学の活用可能性をも制約する。米国のロビイングの進化は、このことを強く感じさせる。




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のぶと
国立大学教員。専門:政治学、公共政策 研究テーマ:テクノロジーと政治、公共ガバナンス、政治教育等