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【特集】自分の子どもになぜ会えない?7、「離婚後子育て応援弁護士」古賀礼子さんに聞く

「離婚後子育て応援弁護士」を掲げ、夫婦の離婚の際の話し合いプロセスを大事にしながら、離婚後の円満な子育てを支える活動を行う古賀礼子弁護士。自身も3人の子どもを持つ母であり、離婚の経験者でもあります。共同親権導入の議論が湧き上がる中、注目を集める古賀弁護士の取り組みについて、ご本人に伺いました。(牧野佐千子)

◇リンク:古賀礼子弁護士のページ

ー古賀さんは「離婚後子育て応援弁護士」として、どのような活動をされているのでしょうか。

多くの方が夫婦のことで悩み、離婚を考えて相談に来られます。幼いお子さんを育てながらにして、離婚が避けられないことも実際に起こっています。これまでの離婚実務は、過去の清算としての財産分与や慰謝料について協議することが中心的でしたが、幼いお子さんがいるご夫婦の離婚の場合には、過去の清算よりも、お子さんの未来を考えることが大切な視点になってきます。

従来の家事事件にはない、新しい視点として、両親の離婚という経験を背負ったお子さんが、どのようにしたら自己肯定感を損なうことなく健やかに成長することができるか、夫婦としては破たんした父母が離婚後どういう関係を再構築できるか、お子さんの将来について協議を尽くし、離婚後も協力して子育てをすることが大変重要になっていきます。

ー実際にはどのような相談が多いですか?

離婚の相談で、本当に多いのは子どものことを考えている男性です。従来のよくある離婚事件だと、母親に親権を与えて父親は離し、養育費を払ってもらうということになるので、それが受け入れられない男性は、弁護士の引き受け手が少ない。子どもに愛情を持って自分の手で育てたいと思っていらっしゃる男性の中には、「弁護士難民」になってしまう方もいます。30人の弁護士にあたって、最終的に私のところに相談にいらした方もいました。

また、最初にご縁のあった弁護士さんに依頼したものの、相手側(通常は女性側)の主張に近づけるように説得に入られ、家裁の調停員も妻側の主張に乗っかっていくし、どんどん孤立していってしまったという男性から、「この状況どう思いますか?」とセカンドオピニオンを求められることも増えてきました。

離婚の成立という結果は同じかもしれませんが、その過程で孤立しながらたどり着くのと、自分で咀嚼しながら最終的には相手に「しあわせにできなくてごめん」と言えるようになるのとでは、その先の結論は違うと思います。冷静になった後の関係修復にたどり着くこともあるかもしれない。そう意識しながら、依頼者の気持ちに寄り添いながら、一緒に結論を模索していく過程を重視しています。

ーそうしたアプローチは、のちの親子関係にもとても重要ですね。

離婚があっても、親子は一生の関係が続きますからね。破たんした夫婦でも、お互いにマナーを守って、感謝を伝えあうことで、父母として協力できる関係を築いていけるよう、お手伝いしたいです。両親の離婚を経験しながらも、お子さんたちは変わらず両親からの愛情を受けて幸せな人生を歩んでいってもらいたいですね。

ーご自身も子育て中で、離婚の経験もされているというのは、当事者にとっては話が分かってくれる安心感もあると思います。

大学法科大学院の在学中に妊娠出産して、大学院を卒業しました。司法試験浪人中の2011年の東日本大震災の直後に離婚して、その翌年に司法試験に合格しました。今は3人の子どもがいます。

養育費の調停で、「相手親に会わせたくない」という思いに襲われる経験もしました。理屈だけの正論では、気持ちがついていかないのはよくわかります。子どもたちに、離婚しても両親から愛されていることを実感してもらうことの大切さも、自分の経験からもわかります。

ー離婚後も共同親権の制度ができれば、何が変わるでしょうか。

これまでの単独親権前提の離婚は、一夫一婦制の「家制度」が前提で、父母の間に格差を与えて離婚をしにくくして「家」を保っていたという背景があると思います。単独親権での離婚だと、単独で育てる同居親が経済的にも周りから孤立し、貧困のループに陥ってしまう。それを避けるためにも、家庭内に不和があったとしても、我慢して離婚しない。離婚のしにくい制度なのです。

若い人が、そんなに我慢して離婚もできないのなら、結婚なんてしなくてもいい、となります。つまり、離婚しにくいと、結婚もしにくい。非婚現象にもつながっていくのですね。

そのような家制度の中では、「嫡出子」と「非嫡出子」が差別化されてしまいます。欧米中心に、海外では多くの国が離婚後も共同親権を導入していますが、事実婚のカップルでも、結婚している夫婦の子どもでも、離婚した夫婦の子どもでも、平等に扱われるので、子ども同士の差もつかないのです。

共同親権制度では、男女の関係も、子ども同士も対等になります。そのほうが誰も差別されず、子どもの自己肯定感も高まるし、出生率だって上がるでしょう。いま、そうした社会変革の波が来ていると思います。これまで負のループを生み出してきた離婚後の子育ての仕方が、世界に追随して変わると思います。

ー離婚を専門にする弁護士が、片親を阻害したり、虚偽DVを作り上げたりしてお金を稼いでいるという批判もあり、そこを変えないと何も変わらないという意見もあります。

まず、女性側の弁護士について「お金を稼いでいる」という批判をされる方がいらっしゃいますが、事業としてやっている以上報酬は発生しますし、仕事の対価として報酬を得るのは当たり前のことです。ここは前提としてあります。

ただ、養育費の支払先が弁護士口座であったり、ここから報酬が払われていると考えると、子の親として疑問を持つことも当然です。こういった当たり前の親の気持ちにはもっと配慮すべきだと思います。

そして、従来型の類型に当てはめて離婚をゴールにするのは、問題の解決にならないことが多いです。DVでの離婚には、弁護士がかかわるための従来型の手法もありますが、その手法にとらわれてしまうと、個別の事案がみえにくくなる面もあります。

そうではなく、いま起きている問題にどんな支援が必要なのか、一時的な支援なのか、生涯必要なものなのか等々、その先のことを考えながら、個々の事案の着地点を見極めていくのが弁護士の仕事です。

よくあるケースとして、離婚後、母親側が父親の面会交流を制限しながら、養育費だけをすこしでも多く長く強制しようとすることがあります。これは一見、離婚時の条項上は、母親側の希望を反映したものになるかもしれません。しかし、将来の学費やその他の費用について、最大限子どもが親の恩恵を受けるためには、子どもが直接両親と関わり続けて、直接の関係の中で親の援助を受ける環境を作る必要があります。ゴールは離婚時点ではないのです。

男女格差が前提の時代なら、女性側の味方をする場合、弁護士費用は、養育費や財産分与等の給付の中からいただくことも基本的なスタイルであったかもしれません。しかし、今は女性の社会進出も進み、男性が主な養育者であることも多くなっていますから、基本的なスタイルは変わってくるはずです。面会交流をつづける基本形を作ったほうが、早く解決できるというメリットもあります。

個人的に感じるのは、「女性は守らなければならない」という固定観念に縛られた人たちが、変わることを拒んでいるのではないかということです。そのような固定観念は場合によっては、かえって女性と子供を不幸にしてしまう場合があります。

これからは、実務の面でも共同養育的和解がスタンダードになっていくと思います。実際に
、去年あたりから共同養育的な調停の案件が続いています。共同親権、共同養育の波が来ていますよ。

ー大変よくわかりました。ありがとうございました。


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