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【特集】自分の子どもになぜ会えない?3、単独親権は憲法に違反する? 作花知志弁護士の違憲訴訟を理解するためのポイント6つ

子どものいる夫婦が離婚した場合、父親か母親のどちらかが親権を持つことになる「単独親権」について、夫婦間の合理的な理由のない差別的な扱いであり、憲法に違反するとし、今年3月、都内の会社員男性が国を相手取り損害賠償請求訴訟を提訴。その第1回口頭弁論が、6月19日(水)に東京地裁(田中秀幸裁判長)で開かれました。国側は争う姿勢を示し、請求の棄却を求めています。

原告(代理人、作花知志弁護士)は、単独親権の何が憲法に違反すると主張しているのでしょうか。詳しく見ていきます。

1、単独親権は「法の下の平等」に反するか?


訴状によると、原告の男性には2人の子どもがおり、はじめは元妻と家裁で離婚調停を行っていたが、子どもの親権について合意が成立せず、最高裁までその親権を争っていました。最高裁で二人の子どもの親権が妻に確定しました。

離婚後の親権については、民法819条2項で「裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める」と規定しています。 この単独親権規定に基づいた判断により、原告男性は親権を失いました。

憲法14条1項では、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と規定しています。 

訴状では、子どもの教育は、「親が子との自然的関係に基づいて子に対して行う養育、監護の作用の一環としてあらわれるのである」と親子の自然的関係を論じた最高裁大法廷昭和51年5月21日判決(旭川 学テ判決)を引用し、親の未成年の子どもに対する親権は、憲法が保障する基本的人権であることは明らかとしています。

それに対し、親の一方のみを親権者として定め、もう一方の親の親権をすべて失わせる民法819条2項は、親権を失う側の人に対して、必要を超えた制限を加えるもので、夫婦だった両親の間で合理的な理由のない差別的取り扱いを行うものであるとして、法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反するとしています。


2、単独親権は、「個人の尊厳と両性の本質的平等」に反するか?


憲法24条2項では、「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない」と定められています。

原告の主張では、単独親権を規定した民法819条2項は、親の一方のみ親権者となり、もう一方の親は親権をすべて失うことで、両性の実質的な平等を損なうものであり、憲法24条2項の「両性の本質的平等」に反しているとしています。

また、単独親権制度により、未成年の子どもを連れ去った親が「継続性の原則」によって親権を得る「連れ去り得」と言われる行為が横行しているとし、婚姻を継続すること自体を不当に制約していると指摘しています。

3、単独親権は、「児童の権利条約」に違反しているか?

日本が1994年に批准した「児童の権利に関する」の条約9条1項では、「締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する」と規定しています。

それに対して原告側は、民法の単独親権の規定は、裁判離婚の際に夫婦の一方を親権者と定め、親権を失った親から分離される結果を容認していることや、子どもが親権を失った親の意思に反して連れ去られる事態を生じさせていることが、条約の9条1項に違反することであると指摘しています。

また、条約9条3項では、「締約国は、児童の最善の利益に反する場合を除くほか、父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重する」と規定されています。

これについて原告側は、離婚後に親権を失った親と子どもとの面会交流が、通常で月に1回、しかも数時間のみ認められ、さらにはその月に1回の面会交流も親権者となった親が拒むことなどで、しばしば困難となる状況を生じさせていると指摘。それは、児童の権利に関する条約9条3項に違反することであるとしています。 


4、単独親権は、ハーグ条約に違反しているか?


また、民法で規定された単独親権制度は、日本が2013年に批准した「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)」にも違反しているとしています。

ハーグ条約は、一方の親の同意なく子どもを元の住んでいる国から出国させるなど、国境を越えた子どもの不法な連れ去りをめぐる紛争などに対応するための国際的な枠組みです。子どもを元の居住国に返還するための手続や国境を越えた親子の面会交流の実現のための締約国間の協力等について定められています。

外国から日本への子の連れ去りは、ハーグ条約によって禁止される一方で、日本で離婚して民法819条2項によって子どもの親権者となった親が、日本国内で子を連れ去り、さらには外国へと連れ去ることが容認されてしまう結果が生じていると指摘。

民法で定めた単独親権は、ハーグ条約の理念そのものに反する結果を容認しているとしています。 


5、共同親権の導入で、児童虐待の回避の可能性を


原告側は、訴状の中で現在大きな社会問題となっている児童虐待の問題にも言及しています。

児童虐待は、両親から行われる場合よりも離婚後に単独親権者となった片親や、その片親が再婚をして、その再婚相手から行われる場合の方が多いことが、報告で明らかになっているとしています。

訴状では、2018年3月に東京都目黒区で5歳の船戸結愛(ゆあ)ちゃんが児童虐待により死亡した事件を例に挙げ主張。この事件は、離婚後に結愛ちゃんの単独親権者となった実母が再婚をし、その再婚相手から虐待が行われたものでした。

結愛ちゃんは親権を持つ実母や再婚した父親から虐待を受けた際、実母に「パパ、ママいらん」「前のパパがいい」と訴えていたといいます。 そのうえで、実父が共同親権を持っていても結愛ちゃんの命を救えたかどうかはわからないが、面会交流の機会があれば、子どもの「孤立」を回避できた可能性はあると指摘します。 

虐待総数119件のうち、ステップファミリー29件、父子3件、母子49件とされ、その合計件数が実父母家族における虐待件数33件を大きく上回っているとした調査結果のデータも参照。

単独親権で一方の親の親権を完全に失わせることで、虐待に遭ってしまう実の子どもに対しても、保護権を行使できなくしているからこのようなことが起きてしまうとし、児童虐待が単独親権の結果生じることが多いこと、その防止のためにも、「離婚後も子どもに対する共同親権を維持することが求められることは、当然民法819条2項の憲法適合性を否定する重要な事実である」としています。


6、立法の不作為、安倍総理の答弁


民法の単独親権が憲法に反する状態であることを説明したうえで原告側は、「民法819条2項についての国会(国会議員)の立法不作為が国家賠償法上違法」であるとし、損害賠償(計165万円)を求めています。

訴状では、2月の衆議院の予算委員会で、日本維新の会の串田誠一議員への答弁として、安倍晋三首相が「もっともだという気もする。子どもはお父さんにもお母さんにも会いたい気持ちだろうと理解できる」として、離婚後共同親権制度への法改正について「法を所管する法務省で引き続き検討させたい」と述べたことに言及。安倍晋三首相の発言は、憲法解釈に影響を与える重要な立法事実で、単独親権を定めた民法819条2項に合理性がないことを如実に示しているとしています。

法務省はこれを受けて、他国の共同親権制度について調査を始め、共同親権導入の可能性を検討しています。

被告である国側は、親権が基本的人権であるとの原告の主張について、離婚後単独親権制度が憲法14条1項と憲法24条2項に反するとの原告の主張、および同制度が児童の権利条約や憲法98条2項に反するとの原告の主張について、争う姿勢を見せ、原告の請求の棄却を求めています。

原告代理人の作花知志弁護士は、単独親権制度の問題は児童虐待と連続しているとし、「法改正が喫緊の課題であることは、明らかなのではないでしょうか。現在も日本のどこかで泣いている子どもがいるのではないか、子どもたちを救う手段を創造したいと思いながら、今回の憲法訴訟の訴訟活動を行っているのです」と話します。

次回の口頭弁論は、9月18日(水)に開かれます。

「離婚後単独親権制度 違憲 立法不作為訴訟」のページで 訴状の全文を読むことができます。また国側の答弁書も確認できます。



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記者 / Journalist 夫はアフリカのニジェール人でトゥアレグ族 2児の母
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