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【特集】自分の子どもになぜ会えない?1、問題の入り口、共同親権問題とは?

国内では年間、20万組以上の夫婦が離婚しています(厚労省調べ)が、その子どもたちはその後、自分の両親とどのように過ごしているでしょうか。

普段は母親が養育し、土日に定期的に父親に面会させるなどの方法を選択する夫婦もいますが、中には、突然子どもを奪い去り、もう一方の親には二度と会わせない、という手段を取る親も。「ある日突然、自宅から妻と子どもがいなくなっていた。それから2年間ずっと、養育費だけ払って、子どもには会えていない」。そんな状況に追い込まれている人たちがいます。この問題の背景を考えてみたいと思います。(取材 / 構成 牧野佐千子)

「DV(家庭内暴力)」は誰がどうやって認定できるのか


家庭内暴力の被害に遭ったひとを守るために、被害者側の住所を秘匿するなどの支援を定めた配偶者暴力防止法(DV防止法)。被害に遭った人たちにシェルターなどに一時避難してもらい、生活の立て直しにつなげてもらうための制度となっています。

ところが、同法は「被害者の保護」に重点が置かれ、加害者の聞き取りを必要とされないなどの問題が指摘されています。これを悪用し、夫との交流を断つ目的でDV被害を装う”虚偽DV"も横行しているといいます。実際、どのように悪用されるのでしょうか。

2018年4月、「虚偽DVによって子どもとの交流が妨害された」として、妻や県などに損害賠償を求めた男性による訴訟の判決が、名古屋地裁でありました。これを例として見ていきます。

訴訟の概要:
夫妻は2006年に結婚し、子どもが生まれたが、2012年に妻が子どもを連れて別居。夫の申し立てを受けた名古屋家裁半田支部は、妻に夫と子どもを面会や手紙のやり取りなど定期的に交流させるよう命じた。

妻は愛知県警に、DV防止法に基づき夫に住所などを知られないようにする支援を申請。対応した警察官は「妻はDV被害者で、今後もDVを受ける危険がある」との意見書を作成。意見書に基づいて、自治体が支援を開始。夫は妻の住所が記載された住民基本台帳の閲覧などができなくなり、子どもとの交流が絶たれた。

夫は「妻のDV主張は虚偽なのに、警察は調査をせず事実と認定した。名誉を毀損(きそん)された上、子どもと会えなくなった」として妻と県を提訴。名古屋地裁(福田千恵子裁判長、小林健留裁判官代読)は夫側の主張を認め、妻と県に計55万円の賠償を命じた。


この裁判では、妻側は「過去のDVや、今後もDVの危険があることは事実」、県側も「県警の認定に問題はなかった」などと反論していましたが、福田裁判長は「妻側の主張するDVは診断書などがなく、誇張された可能性がある。妻は子どもと夫の交流を絶つ意図で支援を申請したと認められ、制度の目的外使用」と認定。県についても「妻からの支援申請の妥当性を一切調査しなかった」と過失を認定しました。

また、「DV被害者の支援制度が、相手親と子どもの関係を絶つための手段として悪用される事例が問題化している。弊害の多い現行制度は改善されるべきだ」と踏み込んだ言及を行いました。

名古屋高等裁判所は2019年1月31日、一審が「過去のDVが事実か否かは判然としない」としたのに対し、高裁は「暴力があった」と元夫から元妻への暴力を認定。名古屋地裁の判決を取り消して、男性側敗訴の判決を言い渡しました。

判決では「元妻による警察への支援措置申請についてDV防止法の被害者要件、危険性要件を欠いていたとは認められない」との判断がされています。

「虚偽のDVで子どもと相手親を引き離すことができてしまう」また「一度DV加害者と認められてしまうと覆すのが容易ではない」という加害者側の権利を守る手続きがない現行の制度には「問題がある」という識者からの指摘も相次いでいます。

「共同親権・共同養育」を導入する動き

国際結婚が破綻した場合、一方の親が子どもを連れて国境を越えて母国に帰る場合があります。その際に、子どもをいったん元の国に返還するように定められたのがハーグ条約です。

日本はハーグ条約を2014年に批准しています。しかし、返還命令が出されても、連れ去った側の親が従わず、子どもの返還ができない例などがあり、アメリカは2018年の国際的な子どもの拉致に関する年次報告で、日本をハーグ条約の「義務不履行国」の1つに認定しました。それに前後して、EU26か国大使からの抗議書簡が、当時の法務大臣に提出されました。

こうした問題を調査し問題提起を行ったり、国連に報告したりする団体「子どもオンブズマン日本」は2018年12月、国連の児童の権利委員会に「日本政府は、子どもの連れ去りを非合法化し、厳罰に処すことを法制化すべき」などの具体的な提案を盛り込んだ意見書を提出。

これにより、今年2月に国連の児童の権利委員会から、「離婚後の共同親権化」を求める勧告が日本政府に出されました。

このような動きを踏まえて法務省は今月、共同親権の導入の是非を検討するため、離婚後の親権制度や子どもの養育の在り方について、24か国を対象とした調査を外務省に依頼したことを明らかにしました。

調査は7月ごろまで行われる予定で、各国の制度の仕組みや「共同親権」を導入している国で、制度のメリット・デメリット、父母の意見が対立した際の調整方法など具体的な運用状況などを調べるといいます。調査対象は、欧米諸国やサウジアラビア、アルゼンチンを含む20か国・地域(G20)が中心となっています。

子どもオンブズマン日本の鷲見洋介さんは、自らも2歳半だった娘が母親に突然連れ去られ、会うことができなくなった経験からこの活動を続けています。現在は月に1度、数時間程度の面会交流が認められており、「それでも全く認められないよりは良いほう」と受け入れつつも、子どもに会えなくなるほどの落ち度はないはずなのに、子どもと自由に会えない苦しみを募らせています。

鷲見さんは、このような事態に陥る人を増やさないために、離婚前の夫婦間の関係修復カウンセリングなど、様々な方法の提案を行っています。「複雑な問題でなかなか伝わりにくいですが、多くの人に自分の身にも起こりえることとして、知ってもらいたいです」と話します。



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