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【特集】自分の子どもになぜ会えない?4、「DV被害者」が心配していること

離婚後の子どもの養育や共同親権導入の動きについて考えていくにあたり、必ず併せて考える必要があるのは家庭内暴力(DV)や虐待の被害に遭っている人や子どもをどう守るかです。加害者から逃げている身で、表立って発言ができない人が多いため、どうしてもその声が届きにくい場面があります。

今回は、DVの被害にあった方に、どのようなサポートが必要か、共同親権導入の動きの中で心配していることなどを聞きました。 (牧野佐千子)


ー現在のご自身とお子さんの状況について、差し支えない範囲でお聞かせいただけますか?

アメリカ留学中に知り合った男性と結婚し、日本に住んでいました。元夫は5歳年上のアメリカ人で、女性が働くのも当たり前というリベラルな考え方の持ち主だったので、この人となら自分のやりたいこともできるし、私の意見も尊重してくれるだろうと思って結婚しました。

結婚して2年後に子どもが生まれて、私が育休を取り子育てに専念することに。そのころから、夫は家に夜遅く帰ってくるようになり、もう少し早く帰ってきて子育てを一緒にしてほしいと言うと、「自分は仕事で疲れている。家で子育てすることの何が大変なのかわからない」「お前のへたくそな英語では何もわからない」などと、こちらの気持ちをわかろうとせず、ひどい言葉を言うようになりました。

それから夫は、ドアや壁を蹴るなど、モノに当たるようになり、赤ちゃんがびっくりして泣きだすと、英語で叫びながら口をふさいだりクッションを顔にかぶせたりしました。激高した時には、私も顔を平手打ちされたり、首を絞められたりしました。自分と子どもの命の危険を感じて、アパートを借りて別居しました。

その後、離婚が成立し、今は4歳になった子どもと二人で暮らしています。

ー相手の方のしたことはドメスティック・バイオレンス(DV)にあたると思うのですが、その当時ご自身が「DV被害者」であると思われましたか?

DVについての知識はありましたが、自分たちのケースがそれに当たるとは思っていなかったかもしれません。平手打ちした数時間後には、すごく優しく謝ってくる。あの時の自分は自分じゃなかった、と。それを信じて「もうこんなことはない、大丈夫だ」と自分に言い聞かせて、自分を安心させていました。でもまた暴力があって、謝るの繰り返し。

あとから考えると典型的なDVなのですが、その中にいると、相手を信じたい気持ちもあるし、その相手を選んだ自分の選択を信じたい気持ちもあるし、なかなかこれがDVだとは認められない。自分が「被害者」とは認められない。

「DV被害者」とくくる前に、気軽に相談や話ができる場がもっとあるといいですね。そこで、DV対策の知識を持った人が適切なアドバイスをくれたら、もっと早く自覚できたかもしれません。

ー元夫はいまどこにいるかご存知ですか?

直接連絡は取っていないし、向こうもこちらの住所などは調べられない状態になっていると思うのですが、共通の友人からだいたいどのあたりに住んでいて、何をしているのか、様子は聞いています。

ーDV加害者である夫がもし、「子どもに会いたい」と言ってきたら、会わせますか?

彼も当時は、慣れない日本での生活と初めての赤ちゃんとの生活で、ストレスを抱えていたのだなというのは理解できます。でもその結果、私と子どもに暴力が向かってしまったことは、受け入れられないことです。

私は彼と直接連絡は取りたくないので、民間団体や自治体などの第三者が連絡役を担ってくれて、会う場所を提供してくれ、子どもが連れていかれない、暴力を振るわれないなどの安全が保たれているなら、会わせられると思います。「何がなんでも会わせたくない」とは思っていません。

ー反対に、お子さんが「父親に会いたい」といったときには、どう対応されますか?

子どもも成長してきて、最近「パパはどこにいるの?」「なんでうちはパパ帰ってこないの?」と聞いてきます。「アメリカでお仕事しているんだよ」と答えているのですが、そのうち離婚のことは話さないといけないし、子どもの成長の上で「パパ」の存在は必要だなと思ってます。

新しいパパが見つかればいいんですけどね…(笑)


ー一般的な話になってしまいますが、うそのDV「虚偽DV」を作り上げることも可能だと思われますか?

このお話を聞いていろいろと調べてみましたが、それは可能だとは思います。ただ、ふつうのママやパパが、問題を抱えて離婚したいとなった時に、相手への復讐のため?とかで「DVを作り上げてやろう」とはならないと思います。そんなことする発想もないし、それで得られるものもわからないです。

直接のことはわからないですが、弁護士など法律に詳しい人が、「自分のクライアントの利益」のためにやるというのであれば、できるだろうし、あり得るとは思います。

ー離婚後、基本的に夫婦どちらにも親権が与えられる共同親権の導入についてどう考えますか?

私の場合は夫の暴力から自分で逃げだすことができましたが、もっと深刻なDVの場合などで、逃げ出せない、被害の証明ができない、というときに、DV加害者側がやったことをどう認定して、その親権をどう止めるかといった、被害者を守る制度をきちんとしなければいけないと思います。それをやらずには共同親権は導入すべきではない。

でも正直なところ、うちは母子家庭で「貧困」とまではいかないけど裕福とは言えないし、相手も養育費は払ってくれていないので、共同親権導入でもし経済的な負担が減るならそれはありがたいです。一方で、養育費を払っている別居親が、子どもと面会することでその分養育費の額が下がるという話も聞いたことがあり、そのあたりの具体的な計算方法の制度化は課題だと思います。

離婚して、平日はママ、金曜日から日曜日まではパパの家で過ごす子も知っていますが、日本ではまだ珍しいケースではないかと思います。問題を抱える夫婦がそうした面会の取り決めを冷静に決められないので、仲介してくれる機関や団体がもっと必要だと思います。

また、そういう子が「かわいそう」などと言われてしまうのは嫌だし、周りの価値観も変わってくれるといいなと思います。

ー課題山積ですね。でも前向きに議論すべき点を挙げていただき、大変参考になりました。ありがとうございました。


※DV被害者の方の個人が特定できない範囲で、一部の内容を再構成しています。


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