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人の尊厳を傷つけるな

 大学の一般教養の試験で「支那という名称について」という、短い論文を読んで、内容に賛成か、反対かを書き、その理由を書けというものがあった。論文の内容は、「支那という名前は蔑称でもなんでもなく、英語でのChinaを起源とする言葉なのだから、なんの問題もないだろう」というものだった。
 私は、それに対して反対と書いた。理由は、その国の国家元首が、自分たちの国の呼称はこれこれのものだから、こう呼んでくれと相手国に発信していることを尊重していないからで、それは、その国の尊厳を傷つける行為だと説明した。

 似たようなこと感じる場面がある。
 女性が、性的な目で見られるのが不快だと言えば、それは本能だから仕方ないと返す男性がいる。そういう事を言う男性は種の保存がどうこうと言い出すのだが、女性が好まざる相手から性的な目で見られるのを不快に思うのも種の保存だ。自分にとって、より好ましい相手のDNAを受け継ぎたいと思えば、そこに該当しない相手から、性的な目で見られることに不快感を感じるのは当然の話。
 それを考慮せず、自分は身だしなみも整えず、だらしない体や、不快な体臭を恥じることもなく、人の話も聞かず、心無い言葉を相手に投げかけながら、自分の権利を主張する男性のなんと多いこと。
 すべての男性がそうだなどと言うつもりは毛頭ないが、日本の社会で53年間生きてきて、そういう男性から自分の尊厳を傷つけられる場面は少なくなかったと思う。

 あなたと個人的なお付き合いをするつもりはないし、個人的な時間を持つのもお断りだと言っているにも関わらず、性的な接触を持つことを諦めない人、会ったばかりでプライベートなことに踏み込む人、容姿に言及する人、体を触る人、最近ではSNS上で私の画像を見ただけで、性に奔放な女だと決めつけられたり、上から目線で「表現者とは」などともっともらしいことを言いながら、私の人格を否定したり、勝手な思い込みで、あなたは〇〇するべきだなどと、ご親切なアドバイスをくれる人もいる。

 ひとつ聞きたい。それは私が男性だったら同じことをしますか?
 女性だから自分よりも立場が弱い、だから何を言ってもいいと思っているのだろうとしか思えない。
 立場が弱い相手をなんの根拠もなく攻撃して自分が優位に立つ、それは、大げさに言えばナチスドイツがユダヤ人に対して行った虐待にも通じる。ナチスドイツがしたことは、人の尊厳を奪って踏みにじることだ。それがどんなことなのか、戦後、ナチス党とその党首の歴史的位置づけがどういうものになっているかを考えれば、簡単に理解できるはずだ。

 

 
 

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