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4.マイクロ・ツーリズム

-1.車で2時間圏のマイクロ・ツーリズム 

DLoFre's Campus

 ある建設会社が、自分たちの考え方・価値観・空気感を感じてもらえるように創ったのが、浜松市の山際にある「DLoFre's Campus」。そして、このキャンパスを通じて印象的だったのは、建築、ランドスケープ、カフェやレストランのメニューだけでなく、一番の魅力はそこで働く「人材」だと思う。どのような社長で、社風で、このような街レベルの空間と人材をつくりだしていったのだろうか・・・

私たちのことをより深く知ってもらう。そのための施設という位置付けです。このような考えですから、敷地内にはレストランやホテルといった商業施設だけでなく、ドロフィーズの空気感を感じてもらえる場づくりをいろいろと施しています。(引用文献は頁末に記載, p.120)

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 浜松の北部にある「都田(みやこだ)」という地区は、人口が6000人が住んでいる低い山に囲まれ、田畑の間に住宅がポツポツと建つ集落である。

 数年前から、ある建築家が中心となって手掛けた北欧風の建物が散在するエリアがあることを聞いていた。新東名高速道路の浜松インターチェンジから、しばらく車を走らせていると、辺り周辺は日本のどこの地方にもありそうな田舎の風景であったが、「ここに本当にあるのだろうか?」と疑った頃に、少しずつ可愛らしい案内板が現れ始め、駐車場へとついた。

 駐車場に降り立ち、どちらの方向に向かったら良いのか迷っていると、一人の高齢の男性が近づいてきて、手書き風のマップを手渡してくれた。

 ここは観光地でもないのに、素敵なマップを無料で手渡してくれて、どの方角へ行ったら良いのか教えてくれた。この方が案内人として雇用されているのか、ボランティアとして活動しているのか気になったけれど、とてもやさしい表情だったのが印象的であった。

 教えて頂いたように、山際の方に歩いて行くと案内板が現れた。そして、目の前には創造もしてなかった風景が拡がっていた。

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 元々は田んぼだったであろうあぜ道に、白砂利と、フィンランドにありそうな粗めの岩を敷き詰めて、日本特有の農村風景とフィンランド風が融合したランドスケープ。

 そこへ、一人の年配の男性が近寄ってきて声をかけてくれた。首から掛けている木片でできたネームプレートには「まあちゃん」と書いてある。聞いてみると、都田建設の建築設計を担当する方だった。

 聞けば、このエリアは都田建設が手掛けているもので、この地で生まれ育った会長が「この地に恩返しがしたい。」とのことで、社長が蓬台社長に変わってから少しずつエリアを拡張しながら、このような空間を造ってきたとのこと。

 今では、この建設会社には50名の正社員として、建築設計士が10名、インテリアデザイナーや大工のほか、レストラン・カフェや店舗などで働くメンバーがいて、パートを含めると計80名のスタッフいるという。建築設計の担当だった人がコックへと代わることもあれば、案内役として現場に出ることも日常的である、と。

 また、このエリア以外においても年間100棟ほどの建築を建てているが、そのエリアの広さは1時間19分で行ける範囲、つまり「119」番の範囲と決まっているとのこと。なぜなら下記の点を大事にしているからと言う。

「何かトラブルがあった際、すぐに駆けつけることができる。アフターフォローを迅速に行いたいたいとの念いから、仕事を請けるのは会社から1時間19分以内のお客様に限らせていただくことにもしました。それは『119』というお客様と私たちとのコミットメントです。」(p.108)

 また、北欧風のデザインが特徴になっているけれども、これはこの地域の特徴や彼ら自身の働き方が、急ぎすぎない、無理をしない「スローライフ」を大切にしているころや、スクラップ・アンド・ビルドではなく「丁寧に手入れをすることで長く使える家具や、長く暮らせる住宅」を大事にしている点においても、フィンランドの特徴や文化と、彼らの考え方や人生観と同じであったことから、北欧のフィンランドとの関係性やデザイン上での関連性ができていったとのこと。

 そのため、DLoFre's Campus(ドロフィーズ キャンパス)では、自分たちの人生観をお客様にわかりやすく伝えることが役割であるため、日本人には「フィンランド・ヴィレッジ」として日本人に紹介しよう、ということになったと。

「Dream」「Love」「Freedom」の頭文字を取った「DLoFre」に、仲間を意味する複数形の「's」をくっつけた「 DLoFre's」(ドロフィーズ)という私の幸せの概念が完成したのです。そして、私だけの幸せの概念としてではなく、これからの都田建設が企業活動を進めて行く上での根幹として、先に書いた具体化の場の名として、この「ドロフィーズ」を以降、都田建設のブランドとして使うようになっていきました。(p.118)

 まあちゃんからは、他にも聞きたいことがあったのですが、「そこのレストランは11時に開店するけれども、いつも2時間待ちになるので、今から並んでおいた方がいいですよ。」というので、アドバイス頂いたとおり、その先に見える建物に向けて歩いていった。その間の距離は比較的短いのですが、魅力的なランドスケープづくりに、たびたび足が止まってしまいます。

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 レストランは民家を改修して造られていて、天井が高く、縁側空間も有効的に改修されており、ゆっくり過ごしたい空間。

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ランチメニューも充実しており、センスの良さだけでなく、素材の良さや調理の仕方も抜群でした。建築設計をやっていた人が、コックさんをしているような感じがよくわかりました。

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 早めのランチを取った後は、キャンパス内の散策です。
「Tiny Free Library」はアメリカのポートランドにもある事例ですよね。日本では初めて見ました。

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 キャンパス内の敷地の多くは、住人の方から借りているとのことで(先祖代々にわたり継いできた土地なので売ることはできないため)、仮設性や可動性のある建物、車体、エレメントが使われています。

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 道路を歩いていると、公衆トイレも設置されていて、その建築の素材感といい、佇まいがとても良いです。

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 そして、DLoFre's Garden &Hillです。

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 細かいエレメントも、毎日セッティングして管理していると思います。

 そのほかにも、メインストリートの軸上には、空き地を活用したスペースや、インテリアや薪ストーブやワインなどを販売している店舗が散在して並んでいます。

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 非常に日本的な建築物も、都田建設には日本では数少なくなった宮大工の棟梁もいるので、高い技術力も有しているし、その技術を伝承していくためにキャンパス内には「棟梁育成学校」もあります。

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 ということで、詳細点については書きたいことはいっぱいあるのですが、書ききれないというのが素直なところです。

 建築をやっている人には是非行ってみて頂きたいですし、それ以外の業種の方でも、人材育成や働き方について考えさせられる良いモデルになるかと思います。詳しくは、下記に記している引用文献を参考すると良いと思います。私は、一気に読んでしまいました。


写真:M.Shimura/S.Shimura/T.Sugiyama/M.Sugiyama

引用文献:蓬台浩明:「フィンランドでお神輿を 〜新しい価値を生み出す場づくりの教科書〜」,プレジデント社,2020年









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