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持続可能な魂の利用

著者の松田青子さんに『赤白つるばみ・裏 / 火星は錆でできていて赤いのだ』の帯に文章をお願いしたのには、いくつか理由がある。『ワイルドフラワーの見えない一年』(河出書房新社)を読んで、特にオフィーリアが実にさりげなく流れて行くところ(最高なのでぜひご自身で確認してほしい)に感服し、それからたまたまいくつか彼女の帯文を見る機会があり、松田青子さんの書く帯文は、いずれも彼女の作品と同じクオリティだということに、(だから彼女はたくさん帯文を頼まれているのではないかと思う)彼女の、他の人の作品に対するリスペクトと、自分自身の発する言葉を常に大切にする姿勢が、とても好きだと思った。

『持続可能な魂の利用』では、「おじさん」の、「おじさん」による、「おじさん」のための国が、描かれている。どんなディストピアか、と思ったら、すでに存在している国の馴染みのある光景だった。松田さんは言葉のリズムの人なのだな、と、思う。反復が、少し変化する反復が、少し変化するだけでなくヒネリも入る反復が、なんともうまい具合に、気持ちとシンクロするのだ。(真似してみました。)果たして、革命の行き着く先にユートピアはあるのか?トンボの描写に私はオフィーリアを感じた。(飛躍)

そして今、『おばちゃんたちのいるところ』を読んでいる。全身総イトーヨーカドー虎柄セーターのおばちゃんや、残酷な神のように積み木に倒れこむ幼児であった「あなた」の、恨めしい話の集まりである。かつてこれほどまでに足取り軽く、怨念も弾む、怪談話があったであろうか。

そんなこんなで、この夏、私は松田青子「推し」である。


『持続可能な魂の利用』中央公論社
『おばちゃんたちのいるところ』中公文庫
『ワイルドフラワーの見えない一年』河出書房新社



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