周りを気にせず、好きなことに素直に。「水引」が織りなす世界観で、日常に暖かい彩りと小さな幸せを届ける。-Akari
“自分の身の周りで実際に体験することで、日本の文化は本当になくなっていってしまうのではないかと危機感を感じました。”
簡単に自己紹介をお願いします。
宮下あかりです。長野県飯田市の伝統工芸である飯田水引のブランディングに取り組んでいて、地域学生団体「いいらぼ」の設立や水引ブランドの製作、発信をしています。
水引に興味をもったきっかけを教えてください。
最初、地元の長野県飯田市の地域活性化に興味があり、中3からその活動を始めました。
高校に入って飯田市について調べている中で、小学生の時に訪れた「ふるさと水引工芸館」が廃業してしまったことを知り、それをきっかけに高1の終わりから活動を始めました。
「廃業していた」という体験が、現在の活動にどのように繋がっていったのでしょうか?
地元の伝統工芸や水引産業が衰退していることは知っていましたが、身に染みて体感することはほとんどありませんでした。自分の身の周りで実際に体験することで、日本の文化は本当になくなっていってしまうのではないかと危機感を感じました。
そこで水引の職人さんに実際に会いに行った際、従来の『結納』や『のし袋』といった主力分野だけではなく、アクセサリーや雑貨のような新しい分野開拓にも水引業界全体で取り組んでいることを知りました。
そこで、実際にターゲットとなっている若い人の視点を取り入れたいと思い、活動を始めました。
”ワークショップに参加した後にもう一度水引細工を見ると、最初よりも何十倍にも魅力的に映ったんです。”
水引を用いて、具体的にはどのようなものを作っているのでしょうか?
今私がつけているイヤリングなどを作っています。
これからの展開としては、結納として使われていた水引細工をお土産にしてもらえるようなプロダクトを作りたいと思っています。
地域学生団体「いいらぼ」の活動について教えてください。
ワークショップの開催をメインに活動しています。これまで15回ほど開催し、450人ほどの方に参加していただきました。
なぜワークショップという手段を選んだかというと、自分が水引細工の展示を見た時の経験がきっかけです。
ぱっと見でもすごく綺麗だなと思ったのですが、ワークショップに参加した後にもう一度水引細工を見ると、最初よりも何十倍にも魅力的に映ったんです。
その体験を色々な人にしてもらいたいと思い、ワークショップをメインに活動しています。
また、「水引スクエア」という「水引のミュージアム」を2か月間開催していました。
そのきっかけは先ほどお話しした地元の伝統工芸館廃業が自分の中で大きいです。
工芸館廃業は、水引衰退を表していることもそうですし、地元の子ども達が地元の魅力を知らないまま外に出てしまうことになる。それはとても悲しいことだと感じました。
そこで、地元の小・中学生が水引や飯田の文化を体感できる場所を作りたいと思い、2か月間箱を借りてミュージアムを開催しました。
”水引が作る世界観や、こんなことができる、あんなこともできると感じられるのにわくわくします。”
活動していてどんな時が楽しいですか?
水引の主力分野である結納品やお祝儀袋のかっちりとした雰囲気と、アクセサリーにした時の色鮮やかさとのギャップがすごくいいなと思っています。
服に合わせて水引アクセサリーの色を決めたり、自分で作ってつけたりもできるので、そこが楽しいです。あと、シンプルに可愛くて好きというのもあります(笑)。
水引でしか出せない魅力は何だと思いますか?
水引は結び方や色、本数などに全て意味が込められていて、それを大切にしながら心を形にできるのがすごいなと思っています。
水引が作る世界観や、こんなことができる、あんなこともできると感じられるのにわくわくします。
その世界観を活かして今やりたいと思っているのが水引カフェです。水引で店内を装飾して、水引特有の温かい色合いに包まれた空間を作りたいと思っています。
活動の軸はどこにあると思いますか?
軸は「飯田市」なのかなと思っていて、飯田の賑わい作りが根本の部分です。しかし活動していく中で飯田水引に夢中になっていきました。
水引が賑わうことで、どのように地域の賑わいにつながっていくと考えていますか?
賑わいには2つの面があると考えています。1つは産業が賑わうこと、もう1つは飯田の人たちが活発に活動するようになる内側の活性化です。
産業の方では、水引産業が賑わうことで水引に関わる人たちが潤うだけでなく、観光産業として飯田市全体にも恩恵が広がります。
内側の活性化では、私たち若者の活動を通じて、飯田市民に活気を作れたらと思っています。
私がよく行っている地域のコミュニティでは、大体40代から60代の男性がほとんどですが、そこに高校生が入ると若い人の視点が入ります。
お祭りなどでも、実際にお祭りに参加するのは若い人たちですが、準備しているのは大人の方々が多いです。その二者が交わることで、イベントや地域をもっともっと良くすることができるのではと活動しています。
”「伝統工芸」という枠にとらわれずに、日常生活の中でどう残していけるのか、適応していくのかが大切なのかなと”
活動のゴールは考えていますか?
すごく大きくなってしまいますが、水引産業を救うことが最終的なゴールです。ただ、どうしたら衰退を食い止めたと言えるのか、まだ正解が見つかっていない状況です。
水引産業が衰退している理由を考えると、主力分野である結納品やお祝儀袋の需要減少が大きいです。そのため、新しい分野開拓で裾野を広げるだけでなく、御祝儀袋を送る文化を大切にしていこうという啓発が大切なのかなと思っています。
水引や伝統工芸全体について、「伝統工芸品」という定義にとらわれすぎているのではないかなと思っています。元々は生活の一部だったものが「伝統工芸」という名前がついて現在まで残っているだけなのかなと。
そのため、「伝統工芸」という枠にとらわれずに、日常生活の中でどう残していけるのか、適応していくのかが大切なのかなと思っています。日常生活の中でどう使われ、どう生活を豊かにしていくものなのか、考え続けていきたいです。
数年後の活動の目標はありますか?
私が大学に入るタイミングで水引のブランドを作りたいと思っていて、発信力も強化していきたいのと、ブランドが大きくなったら、雑貨など小さいものだけでなく、インテリアや美術品など、大きな作品にも広げていきたいなと思います。
将来的に水引で起業したいと思っているので、数年後、その会社を大きくできていたらいいなと思っています。その後は水引をもっとグローバルなものにしたいです。日本だけでなく、世界で水引が知られていたらいいなと思っています。
他に何か、活動を続ける原動力につながっているものはありますか?
長野県内や飯田市民の中では水引へマイナスなイメージを持っている人が多いんです。しかし県外の水引を知らない人からは、「何それ、めっちゃかわいいね」といった反応をもらえたりします。まだまだ可能性があるのではないかと思えるのも、続けている理由かもしれません。
自分の中で、水引に対しての飯田市民のマイナスなイメージは課題だなと思っていて、どうしてそんなにマイナスなイメージを持った人が多いのかと考えた時に、飯田市民内での「衰退している伝統工芸」という認知度の高さと、日本や世界全体の水引の認知度の低さのギャップにあるのかなと思っています。だからもっともっと日本全体に水引が知れ渡れば、飯田市の人たちも「なんか水引っていいよね」と再認識してもらえるのではと思っています。
”地域の人たちに「それって自分の本心なの?好きなことやりなさい!」ってめっちゃ言われて、それまで自分は周りの見方を気にしていたなって”
自分の活動を誰に届けたいですか?
身近な人が笑顔になってくれるのが一番嬉しいです。
例えば行きつけの「笑話」というお店の人たちと話している時間がすごく好きです。「活動頑張っているね」と言ってもらえたり、地元で関わってくれている人やおじちゃん、おばちゃんが笑顔になってくれたら本当に嬉しいです。
地元の人たちとの関わりで印象深いエピソードはありますか?
活動で忙しくて、高1から高2までずっと通い詰めていたお店に半年くらい行けない時期がありました。久しぶりに行った時、「テレビで見たよ」「新聞で見たよ」と声をかけていただいて、覚えていてくれたことが本当に嬉しくて。ちょうど誕生日が近かったので、プリンをおごってくださって、すごく嬉しかったです。
課外活動と高校の両立に苦しんでいた時期があって、その時地域のコミュニティに行ったら、すごく温かくて。「それって自分の本心なの?好きなことやりなさい!」と強く言われて、自分が周囲の目を気にしていたなと気づきました。
それがすごく印象に残っていて、今は自分の好きなことに自信を持って行動しようと思っています。
”不安感は大きかったです。でもやめる理由にはならないなと思います。「やりたいし!」みたいな。”
活動していて苦しかった時期はありましたか?
最初は2人で活動を始めたのですが、もう一人の子が受験のために離脱してしまいました。
その子が、自分に足りない論理的な部分や金銭面の管理をしっかり補ってくれていたので、いなくなったときはとても苦しかったです。少しずつやり方が分かってきましたが、今でも手探り状態が続いています。
その時、「辞めよう」と思ったことはありませんか?
その子がいなくなったからもうやらないっていうことですよね。全くなかったです。
不安感は大きかったです。私は直感で動いているので、論理的に説明できないと不安ですし、伝えられないのではないかと心配になります。でもやめる理由にはならないなと思います。「やりたいし!」みたいな。
心配でしたが、何とかなるという自信はありました。それは、小さい頃からやりたいと思ったことをやってきた、小さな成功体験がたくさんあったからかもしれません。
その「小さな成功体験」について、エピソードはありますか?
小学生のときに図書委員長だったのですが、私は図書館が別に好きではなく、静かにしなさいと言われると「なんで?」って思ってました。本を通してその場で話したり、コミュニケーションが生まれても良くない?って思っていました。
しかも図書館は、学校の中で唯一、学年やクラスが違う人と関われる場所だったので、「そこコミュニティにできるんじゃね?」って思いました。
そこで自分は図書委員長になって、毎日図書室で人と話したり、新聞を作って「こんな出来事あったよ」と日記のような発信をしていました。あとはペアで本を読む時間を作ったりして、今までは”静かにする場所”とされていた図書室を、本を通じてコミュニケーションが生まれる場所に変えることができました。
あとは地区分会という中学生が地域のために何かやろうという委員会があって、私が中学3年のときに委員長になりました。ちょうどコロナ禍で前年に活動がなく、みんなの意識も低下してしまっていました。また、少子高齢化で子どもが1人で清掃活動している地域があると知りました。人手にも困っている、でも地域の人たちは清掃活動自体も知らないという現状がありました。
そこで、地域の人と中学生が一緒に清掃活動をするイベントを開きました。そうしたら、どちらからも評判がすごく良くて。
地域の人は学生の活動を知れて良かったと、学生も地域の人たちから「ここ汚いんだよね」という声がある場所に清掃活動に行ったので、すごくやりがいがあったと言ってくれました。
みんなの意識を変え、地域の清掃活動を通してコミュニケーションが取れるイベントを作ることができ、自分の中ですごく良かったです。
”「やりたいことやろう」というマインドは変わらないんじゃないかなと思います”
思い立ったらやってみよう!という姿勢は水引の活動にも通ずるところがありますね。
確かに。あまり先のことを考えないタイプなのかもしれないです。
ガチガチに予定を固めるのが苦手なタイプなので、その場、その瞬間、そのときにやりたい、作りたいと思ったことをずっとしてきました。なのでこれからもそうする気がします。
考えていてもその通りにいくとは限らないし、論理的にできなくてもやらないのは面白くないなと思います。図書館の時も「静かにしなきゃいけない」と思っていた中でやってみたら、実はみんな話したかったんだと分かったので。
逆に、やりたいと思ったけれど、できなかったことはありますか?
資金的に諦めたことは何回かありますが、資金が集まったらやりたいなとずっと思っています。
いやそんなことはないかも。 大きく我慢したことはないかもしれないです。
作りたいと思ったら作って、やりたいと思ったらやって。資金も、助成金などを集めればできたりするので、意外とやりたいことをやってきたかもしれないです。
3年後の自分は今と変わっていると思いますか?
想像できないということは、変わっていないのかもしれません。今もやりたいことやってるし、言いたいこと言ってるし。
将来も、環境は変わっても、内面的なところは変わっていない?
そうだと思います。「やりたいことやろう」というマインドは変わらないんじゃないかなと思います。
[取材日]2024/08/18
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