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リモートワークの課題を整理する:定着しても、戻しても、ハイブリッドにしても残る課題

 リモートワークが広まって一年。緊急事態宣言と共に出社する日々が戻ってきた会社も多いようです。在宅ありきな他社に勤める私の友人も「このまま出社したくないですね!」と元気よく返事をしていたりしました。

 リモートワークの振り返りをしておこうかと思った矢先、こんな記事が舞い込んできました。IT業界の雄、Google社が9月以降のリモートワークについて限定的なものにするというものです。実際のところ、Google社がやることは何事も(あまり深く検討せずに)取り敢えず真似てみる企業が国内外問わず多いのでこのニュースが与えるリモートワーク定着への影響は多いのではと思っています。「Google社もやっている」というワードは強いですしね。

 以前、最初の緊急事態宣言が開けた頃合いにリモートワークの抱える課題について書きましたが、今回は振り返りと今後の予測についてお話します。オフラインに戻るのか、フルリモートワークになるのか、それともハイブリッドになるのか。それぞれのメリット、デメリットも鑑みながらお話します。

Google社が一貫して問うコラボレーション・コミュニケーションの課題

 そもそもGoogle社はコロナ禍以前からリモートワークには消極的でした。彼らがメッセージとして対外的に謳っているのはインタラクションやコミュニケーションによるイノベーションです。2013年には既にそのような記事が出ていました。

 今回の記事に先立ってコロナ禍の2020年でも同様の記事が出ているので、このメッセージはブレていない一貫したもののようです。

 2017年に一度リモートワークを廃止したIBM社の場合もコラボレーションを理由にしていました。2021年になり、こうしたリモートワークでのコラボレーションの問題をテクノロジーがどこまで解決できたのかというのが争点の一つになりそうです。

 私もリモートワークではつくづくコミュニケーションの難しさを感じて試行錯誤しています。Slackなどのチャットツールやビデオ会議を重ねても、アジェンダありきの打ち合わせでは、あくまでもタスクの依頼と確認になりがちです。一見効率的なのですが、コミュニケーションとは言い難く、あくまでも進捗管理でしょう。双方向でやり取りしているように見えてsin/ ack(信号の送信と受信返答)に終始、もしくはそれすら出来ずに要件だけ一方向に流れているケースは多々あります。

 突き詰めていくと業務委託としてタスクを熟してもらえば良いのでは?という過激な意見の方も出てきて居られるようです。正社員に何を期待するのかを定義する必要もあると考えています。

 打ち合わせの冒頭数分は雑談をするくらいの雰囲気が良いのではとも感じますし、明示的にGood and Newのような時間を固定で設けるのもおすすめしています。

 また、オフラインの業務では補助ツールだったチャットツールは生命線になりました。Twitterで始終罵り合いが起きているように、テキストメッセージは丁寧に行わないとすぐに喧嘩になります。リモートワーク環境下では丁寧なコミュニケーションを気をつけないと行けないところです。

リモートワークと就業管理と性善説・性悪説

 コロナ禍以前、自社でリモートワークを検討していたときにアメリカの事例を見ていたのですが諦めた例として2013年の米Yahoo社の事例が複数出てきます。つまるところ「就業時間中に副業していた」「就業時間中に起業していた」というもので、(そりゃだめでしょうね・・・)と思う内容でした(一例としての下記記事は2017年のもの)。

 これは就業管理をどのようにするかという課題であり、従業員に対して性善説を取るか性悪説を取るかという問いであり、その結果どのスタンスでどう取り組むのかが問われているのだと捉えています。

移動時間とそのための準備時間を何に使ったか、それは元に戻せるのか?

 オフラインにすんなり戻せるかというと難しい従業員は多いでしょう。

 ざっくりと通勤時間を往復で2時間、更に身支度の時間が人によっては1-2時間として、この合計3-4時間(と体力)がある程度リモートワークで削減されます。問題はこの削減された時間を何に使っているかです。

 人によっては家族との時間が増えたという方もいます。子供の前で仕事をすることによって、それまでは子供からすれば職業としてブラックボックスだった「会社員」がなりたい職業ランキング1位になりました。その親子の関係をまた引き剥がすのはなかなか大変そうです。

 一方で「リモートワークによる働きすぎの懸念」かどと議論されるように、残業に充てている人も居ます。目的は様々ですが副業に充てる人も居ます。この残業と副業の2点については根本的にリフレッシュできてないのでメンタルに跳ね返りがちです。自宅のデスクの前で「帰りたい」と思う方などはだいぶキテいるかと存じます。

 もう一つ考慮する必要があるのが業務時間中の移動です。顧客とのやり取りが発生する職種の場合、従来は打ち合わせの前後に「移動」という名のバッファがありました。リモートワークに踏み切った企業の場合、打ち合わせはURLクリック一発で開始できます。移動に消費されていたバッファを削り、ここぞとばかりにギチギチに予定が詰め込みがちです。「移動時間0で業務効率が上がった!」となりがちです。

 私もたまに出社や出先での打ち合わせの予定が入るのですが、強制的に大義名分付きでデスクの前から剥がされるので、とんでもなく気分転換になることが分かります。ヒトという生物を考えたとき、健やかな働き方は機械的な業務効率化に対して限界があるのでは?と捉えている次第です。

地方人材採用は思ったより進んでいない?

 これまで述べてきたことはハイブリッド型であればある程度解決や緩和が見込めるものです。ここからはフルリモートワークが前提のお話です。

 まずは地方人材採用です。思ったよりフルリモートワーク前提の採用は活性化していないという印象です。やはりその裏には「いつかはリモートワークを解除するかも」という企業側の思惑を邪推してしまいますし、面接などで出会う地方人材側も「いつかは出社を強制されるのでは?」と様子見をされる方が多い印象です。

 フットワークが軽快なスタートアップやベンチャーでは地方在住採用もあります。弊社でも採用試験から配属、現在に至るまでオフラインで会ったことのない部下が居ますが、そのことを他社の大企業の方に言うと驚かれますね。

 一方で、何かあっても正社員よりダメージの少ないフリーランスについては正社員採用に懸念がある企業であっても地方在住の受け入れが進んでいるようです。一時的にでも都内単価で仕事を受けられるメリットは大きいですし、業務委託契約を鑑みると指示したものに対して納品物がしっかりしてれば良いわけですからね。メンタルに至っては企業からすれば管理管轄外ですし。

都会から地方に引っ越した社員を巡る動向が気になる

 アメリカでは高額な給与と高額な家賃がスパイラルを起こしていましたが、コロナ禍のリモートワークで地方に移り住み、その流れに対して給与を調整する流れが起きているようです。

 一方で日本の場合もリモートワークへのシフトで郊外に引っ越された方が居られます。ここでオフラインへの揺り戻しがあった場合にどうなるのか注視が必要でしょう。

 日本に限らず、フルリモートワークを継続している企業が今後も継続することを約束しながらうっかり地方に移った方々をターゲットに都市部の周辺で採用する。この流れは起きるのではないかなと観察しています。

 従業員側も予期せずリモートワークの継続がないと知ったり、リモートワークありきの現職からの転職という展開を見据えると、やや賭けの要素が出てくるように感じられます。

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