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熱にうかされて

熱が出ると不安になる。慣れ親しんだ自分の身体なのに、熱のせいで掴みどころがない。ぺたぺたと歩く足どりも心もとない。頭と顔は暑いのに、身体は寒い。食欲がなく、お腹もすかない。それもこれも、昨日受けた2回めのワクチンの副作用である。

1回目のワクチンを受けたのは5月だった。筋肉注射は痛いと聞いていたけれど、ちくっとしたらもう終わっていて拍子抜けした。翌日びっくりするほど腕が痛くなり、37度を超える微熱が出た。頭に靄がかかったような、とにかく何も考えられないような状態で身体が重く、朦朧としながら寝てばかりいた。注射からほぼ二日後に、ふっと霧が晴れるように頭が軽くなり、あれっと思ったら普通に戻っていた。

1回目のワクチンはモデルナだった。わたしが住むカナダではファイザー、モデルナ、アストラゼネカの3種が出回っている。わたしより年齢も上で基礎疾患がある夫は先にワクチンを受け、やはりモデルナだった。

2回めのワクチンが出回る前に州の保健衛生官より「1回目のワクチンがアストラゼネカであったとしても、2回めはファイザーやモデルナを受けても大丈夫ですよ」というお達しがあった。アストラゼネカは副作用で血栓症になることがあると言われていたので、その不安を少しでも取り除いてワクチン接種率を上げていくための政府のストラテジーなんだろうと思う反面、異なるワクチンを混ぜてもほんとに大丈夫なんだろうかという疑問がわく。アメリカの友人に聞いてもそんなことは聞いたことがないと言われた。

さらにニュースを読んでいると、アストラゼネカと他のタイプを混ぜても大丈夫ということは、同じmRNAワクチンであるファイザーとモデルナを混ぜることは全く問題ない、という風にも読めた。恐らくモデルナに比べてファイザーの在庫が多いので、前回モデルナだった人も2回めはファイザーで対応していくんだろうな、と思った。

夫はタイプの異なるワクチンを混ぜることには強く反発していたのですが、当日会場で今日はファイザーです、と言われ結局それを受けて帰ってきた。いつモデルナの供給が始まるか分からない中で待つよりも、せめて同じmRNAのワクチンを受けて終わらせようと思ったらしい。わたしでもそうすると思う。

さて昨日2回めを受けに接種会場に行ってみると、ワクチンカードで前回のワクチンを確認し、はいモデルナはこの列、と振り分けられた。今日はファイザーとモデルナの両方あるんですか、と聞いてみると、そうなのよ、だから1回目に合わせるようにしてるの、とのこと。混ぜても大丈夫とはいえ、やっぱりできれば同じタイプの方がリスクも少ないんだろうなと思う。

前回はナースが座っているブースがいくつかあり(カナダではワクチン接種はナースが行う)、一列に並んで待っていると手が空いたナースの所に呼ばれる方式だった。ワクチン接種後は2mおきに配置された椅子に移り、15分待って異常がなければ帰ってもよい。

今回は前後をアクリル板で区切られ、椅子が二つ並んだ小さなブースがずらっと並んでいて、どんどんブースに座るように指示される。付き添いは一人まで許されているので、二人で来ている人も多い。ここからどういう順番で呼ばれるんだろうかと思いながら本を読みつつ待っていると、がらがらと音がして、キャスター付きの椅子に乗ったナースと、コンピュータ、注射器、消毒液などを載せたキャスター付きのカートを押すナースが現れ、先頭のブースから順番に注射をし、ワクチンカードに情報を書き込み、この時間まで待って大丈夫だったら帰っていいですよーとポストイットをアクリル板にペタッと張って、がらがらと去っていく。ワクチンを受ける方はブースから動くことなく順番を待ち、注射を受け、ブースでそのまま15分待ってから帰るという仕組み。ナースの方が動くのね。面白い。

ワクチンを受けた当日より翌日の方がしんどいのは前回と同じである。今朝は好きなデザイナーのサンプルセールで、自転車は無理だから車で行こうと友達と話していたのだが、今朝熱を測ると38度2分もあり、あまりにふらふらでキャンセルした。こんなに熱が出たのは久しぶり。買い物したかったのに残念。友達はワンピースとパンツを買ったらしい。

午前中はひたすら眠った。午後になって夫は日本食料品店に買い出しに行きがてら、友達に会いに出かけた。せんべい、ほうじ茶、バームクーヘンなど日本食料品店でしか手に入らない買い物リストを託したので、夫が帰ってくるのが楽しみである。きっと明日には熱も下がる気がする。本でも読もう。

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