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成人発達理論に見る、「成長する」ってどういうこと?

人として「成長する」とか、「成長したい」みたいな話はよくありますが、これって意外と漠然としたイメージだったりしませんか?

この「成長」ですが、成人発達理論(参考:下記書籍「成人発達理論による能力の成長」)によると実は2つの意味が込められていることが多いようです。1つが人としての「器」の成長。もう1つが実務的な「スキル」の成長。これはどちらかだけでは不足で、両輪で育てていきたいものなんです。

「器」の成長と問いの力

人としての「器」の成長について歴史上の人物を例えに挙げてみます。教育機関などの総称を”アカデミー”と言ったりしますが、これは古代ギリシアの哲学者プラトンが創設した”アカデメイア”という哲学学校が語源になっていたりします。

このプラトンですが、アテナイ市の公共の場所で好き勝手に問答を繰り広げるソクラテス爺さんのファンで、若いころ彼から哲学を学んでいました。要はこれが「器」の成長ですね。

ソクラテスはある意味ひどい爺さんで、街中で雄弁に語っている人を見かけては、「いやすごいねぇ、僕は無知なのでぜひもっと詳しく教えてくれないか」と言いながら、様々な問いをかけて、相手の無知を明らかにしていったのです。「僕は、自分が何も知らないことだけは知っているんだよなあ」と言いながら。(これが無知の知というやつです。)

これに逆ギレしてソクラテスを「若者をたぶらかす悪人」などと理由をつけて裁判を起こした人もいたのですが、一方でこのやりとりは若きプラトンをはじめ数々の歴史に名を残す大人物を生み出していくことにもなりました。

そしてこれが「問い」の力でもあります。コーチングでも「問い」は非常に重要なものとして扱われますが、この適切な「問い」によって促される内省は思ったよりもインパクトがあるんですね。(なお街中で通り魔的に問うのではなく、信頼と合意に基づき問うのがコーチングです。)

実務的な「スキル」は「器」と別に必要

さてそんな風に器を身につけていったプラトンですが、一方で哲学学校のアカデメイアを創設し、それを運営していくには実務的な「スキル」も必要であったはずです。きっとどこかで学校運営のノウハウを学んだか、仲間や弟子に頼んだんでしょうね。

プラトンがどのようにこのスキルを開発したのかは歴史書に記載がなさそうですが、少なくとも器とスキルの両方があったからこそ、以後900年ほど続き歴史に名を遺す偉大なる学校が継続したのです。

ここでポイントなのは、人としての「器」があるから「スキル」が豊富で実務に堪能とは限らないし、また「スキル」が豊富で実務に堪能だから人としての「器」が大きいとも限らない、ということです。だってそれぞれ違う話なので。

実際の課題が必要な能力を決定する

またスキルというのも対象となる課題に応じて様々です。よく言われるように優秀なプレイヤーが優秀なマネージャーとは限らないのは、レイヤーの違いによる課題の変化によって、求められるスキルセットが異なってくるからなんですね。要は、課題の方が必要な能力を決定するのです。

例えばティーチングとコーチングのような外から見ると似ているものでも、必要なスキルが異なりったりしますよね。片方では指導する力がより求められる、もう片方ではより聴く力が求められます。(一部ここは同じもの、みたいのはあるでしょうが)そして今ティーチングをすべきなのか、コーチングをすべきなのかということは、目の前の課題が何かによって変わってきます。

さてさっとまとめてしまうと、「成長」とは、実際の課題に適応する器とスキルセットを選択して身に付けていくこと、と言えるのではないでしょうか。

ということで、バランス良く「器」と「スキル」を身に付けていきたいですね!


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