駆除

僕は、駆除されてしまった。胸に穴が2つ空いた。すぐには何が起こったか分からなかった。あまりにも突然に。あまりにも暴力的に。時の流れが寸断されたものだから。

それでも僕は、駆除されてしまった。駆除されたことは、事実のようだった。僕は衝撃を受けた瞬間、空を見て、青すぎる空が広がるその距離感と、自分が今まさに仰向けに、倒れようとする近さを思って、感じて、恥ずかしくて、照れ笑いを浮かべてしまって、それを誰にも見られてないといいな、なんて思いながら、やっぱり倒れてしまった。

僕が駆除される少し前に、僕は早朝の公園で襲ってしまった。本能的に、襲わなければ、ならない気がした。狂信的に、盲目的に、ゆったり身体を動かす老いた集団がいたから。老いた集団は、小さな箱から流れるおかしな音楽に合わせて、これ見よがしに身体を動かしていたから。時にジャンプまでしていたから。僕は公園の太い木のそばにあぐらをかいて、しばらくは彼らを、彼女らを、見つめ、続けていたのだけれど、そろそろ限界だ、そろそろ襲わなければならない、と、そう思って、物憂げに起き上がって、四つ足でそろそろと、二本足で彼らの背後から、さりげない腕力で、一人の頭頂部を、吹っ飛ばしてしまった。静かな時間をもたらすために。

たぶん、誰も信じてなかった

何も、信じることなかった

僕はクマで、今は繁殖期だから暴力的だと阿呆な人間に評価されてしまうほど哀しい状態で、本当は違うのに、言い訳さえ許されなくて、公園を後にして、緑豊かな草原であぐらをかいていたら遠くから、バンッ、バンッ、と、2回音が鳴って、僕の胸は打ち抜かれて、そうして仰向けに倒れてしまった。

僕はただのクマなのに、普通の熊ではないかのように、妙に生真面目な視線の誰かに、僕は、駆除されてしまった。もっと自由に生きればよかったどうせ駆除されてしまうなら。

もっと、自由に、生きれば良かった。

どうせ駆除されて、しまうなら。

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