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ウェルフェアトレードを始めて10年が経ちました!

初めましての方もそうでない方もこんにちは、マジェルカ代表の藤本です。

これまでのブログとは別にnoteを書き始めました。
使い分けをするか乗り換えるか、使いながらしばらく様子を見ようと思います。

「障害者施設で作られた雑貨の専門店」のパイオニアとして

現在は東京吉祥寺でも人気のある中道通りに路面店を構え、約20坪のショップでは全国の障害者施設で作られた製品(自主製品)を販売しつつ、ギャラリースペースを地下で運営しているマジェルカです。

2011年に、隣の西荻窪駅裏のたった5坪のスペースからのスタートでした。

そしてOPENは今日からちょうど10年前の2011年の9月9日。
そう、お陰様でマジェルカは今日で10周年を迎えたのです!!!

そんな大きな節目の10周年ですが、昨春から続くコロナショックで、特に店舗でお客様を相手に商売をしているマジェルカにとっては、とても厳しい逆風の真っ只中・・

本来であればこれからさらに先の10年を見据えたビジョンを示したいところですが、今はとにかく足元を固めながら毎日を進んでいます。

今回は、今後の再構築の道を探るためにも、「マジェルカのこれまでの10年」を振り返ってみたいと思います。

きっかけは「障害者を支援したい」ではなく「宝物を見つけた」という想いから

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マジェルカの活動を始めたきっかけ・・・それは決して「障害者を支援してあげたい」ではなく、偶然から障害者施設で作られた製品の中に品質や魅力の高いモノ、いわゆる”市場価値”を備えたモノがある事を知ったこと。そして、障害のある人達がそれを生み出せる力を持っていると正しく知ったことからでした。

それまで福祉業界で働いた事の無い私が、普段の生活の中で障害者施設で作られた製品に触れる機会というのは、たまたま通りかかった所で開催されていた福祉バザーや、役所の売店や福祉ショップといった所くらい。しかもわざわざ関心を持ってそれらを覗いた事はありませんでした。

それらは「欲しいから買う」というより「支援の為に買ってあげる」という性質のモノで、価値を持って一般市場で流通しているモノとは別次元の存在、という認識を持っていたと思います。

そんな私が当時の仕事でバイヤーとしてある企画コンセプトに合う雑貨商品を探している中で興味を持った商品が、調べてみると実は障害者施設で作られていたのです。

「障害者施設でもきちんとした商品を作っているんだ!」言い方は悪いですがその事実に驚きました。

きっと、普段障害者と関わっている人たちにとっては当たり前なのでしょうが、そうではない私の周囲に聞いてみると、案の定、私同様に殆ど皆その事実を知らない。

さらに興味を持って調べると、全国には障害者施設が作るユニークなモノや、普通に商品として通用しそうな製品が数多くあるという事を知ります。

大袈裟ですが、まだ誰にも知られていない”宝物”を発見したような気持ちになったのを今でも覚えています。

でも・・・

せっかくこんなに色々作っているにも関わらず世の中に知られていない、そもそもアピールをしていないという事はあまり売りたくないのでは?

これまで誰もやらないでいたのは、福祉業界のルールやタブーとか、それなりの理由があるからなのでは?

などなど考えましたが、ダメ元でウェルフェアトレードショップの提案書を手に各地の施設にアプローチしてみると、その反応は、「自分たちの商品を売ってくれる所を探していたけれどどうしていいか分からなかった」という答えが殆どなのでした。

一軒一軒開拓した日々

10年経った今でこそ延べ200以上の障害者施設と取引実績ができましたが、障害者福祉業界に全く繋がりを持っていなかった私にとって、店を開くまでの商品を探すことと福祉施設と取引を始める事は、楽しい一方で苦労も多々ありました。

ネットを使って探すも当時は福祉施設が積極的にモノづくりを発信している例は殆ど無く、施設紹介のホームページの片隅に写っている写真を見て片っ端から問い合わせるといった感じ。

製品や作り手に会いに北は仙台から南は山口まで各地に直接足も運びました。

そしていざ取引きとなり、条件や取引方法の話をするのがまた難しかった!

従来の福祉バザーや福祉ショップというのは基本支援活動ですから、そこでの取引はビジネスではなく、だから一般の取引というのは殆どの施設さんにとっては初めての事なので、取引条件の話をしても???

これには一つ一つ丁寧に説明し理解してもらう努力をしましたが、多くの相手は「売ってほしい、けれどコストは負担したくない」という結論で取引に至りませんでした。

それでも根気よくアタックする中で、比較的新しい視点を持っていてチャレンジしてくれた施設さんと繋がる事ができて、ついにマジェルカをオープンする事ができたのです。

ウェルフェアトレードショップ「マジェルカ」開業!

マジェルカの名前は「混ぜる」という言葉から来ています。

人の都合で作られた均一で画一的なスギやヒノキばかりの森に比べると、時に「雑木」とも呼ばれる種々雑多な木が混ざり合っているという自然本来の森の方が豊かな生態系を育み、災害などにも壊されにくいといった大きな力を持っているそうです。

本当に力ある森や山をかたちづくるためには人間の都合で育てられ、植えられた均質な森よりも多種多様な木々が共生しているということが大切だったのです。

それはきっと私たち人間の社会でも一緒なのでは・・・
様々な個性のヒトやモノが当たり前のように混ざり合い、互いに関わり合える社会こそ、その力を発揮できる豊かで健康的な社会になると考え、マジェルカと名づけました。

「もっと気軽に」「もっと楽しく」関わる機会を

従来、障害者と関わる方法の主流といえば、ボランティアで施設やイベントを訪問したり、誰でも気軽にとはいえないものばかりでした。
しかも、そこまでする人は既に障害者との関わりや理解が一定程度ある人たちだと想像できます。

マジェルカがむしろ必要だと考えたのは、「敷居を下げ」「間口を広げる」こと。言い換えれば、「もっと気軽に」「もっと多くの人が」ついでにいえば「もっと楽しく」障害者と関われる機会を作ることでした。

その手段が”ウェルフェアトレード”(福祉のフェアトレード)。つまり、障害者が作る製品を”その価値に見合った価格で魅力的に販売する”という方法だったのです。


私自身が障害のある人に対して持っていた思い

実は、私は大学で福祉を専攻していました。また、それが私の福祉を学ぼうという動機に作用したのだと思いますが、妹は軽度の知的障害者です。

しかし、それらを活動のためにアピールするのは本人に対して気が引け、そもそも必要性がないと考えていたのでこれまで積極的に語ってはきませんでした・・・。

なぜなら、マジェルカで私がやりたかったのは世の中に知られないまま埋もれている価値にスポットライトをあてることだったから。

いわゆる支援として活動をやっているつもりではなかったし、「障害があるからすごい」とか、逆に「気の毒だ」とか、障害のある人とない人を比べてどうこうという考え方はあまり持っていなかったから。

ただ一点、障害があるという事で機会が奪われたり狭められたりするというのはフェアではなく、社会としてアンバランスだとは考えていました。

さて、先述の知的な障害のある妹は、一番年が近かったので、私が物心ついた時から普段から一番身近にいる存在でした。
そんな妹との会話で何か私が問いかけた時、近くに母がいる時は決まって母が妹の代わりに答えるのです。
「妹に聞いているのになぜ母さんが返事をするの?」と私が聞くと
「この子に分かるわけないじゃない!」と母
こんなやり取りが何度も繰り返された記憶があります。

でもそんな時、妹本人に「自分でも答えられるよね?」と尋ねるとおずおずと照れくさそうにしながらも「うん!」と意思表示をしていたものです。

妹を困らせたくないという思いからの行動で、母は決して冷たい人ではなく、むしろその逆の人だと思っています。

ただ、障害のある妹が出来るかもしれない事まで出来ないと決めつけてしまうことや、必要以上に手を出すことは、本当の意味で本人のためにはならない、と子供の頃からずっと日々考えて生きてきたように思います。

10年前からマジェルカの活動を始め、障害のある人と、彼らを近くで支援している人たちと関われば関わるほど、支援者が障害のある人たちが持つ力や可能性に目を向ける事よりも、”支援すべき相手”ということばかりにとらわれ、それが彼らの活躍の機会を奪うことになってしまっている、と感じる事が増えていきました。

それは私の妹へ対する母の関わり方を思い出させます。

社会の側と福祉の側 双方へのアプローチ

ウェルフェアトレードをより一層発展させ広めるために、今後は福祉の側への働きかけがより一層重要だと実感しています。

障害のある人たちが作り出す製品の価値が世の中に知られず埋もれていたのは、受け手である社会の側の障害者理解の問題よりも、福祉の側の発信が足りなかったから、障害のある人たちが持っている力へ注ぐ視点が足りていなかったからだと考えています。

その事に気づいた人たちによる変化も生まれてきていると感じます。

最近ではウェルフェアトレードという言葉もあちこちで目にするようになり、障害者が作る製品を魅力的に販売する民間のショップも随分増えてきました。
魅力的に見せる事を意識した福祉ショップも出てきました。
モノづくりをする福祉施設でもSNSやwebで積極的に発信する所が増えました。

10年にわたる私たちマジェルカの活動がそれらの広がりに寄与したという自負はあります。
でも、まだまだこれらは福祉業界の中ではほんの一部でしかありません。

福祉の人たちが障害のある人たちの可能性にもっと目を向け、行動を起こすためには、自分たちがそうすることによって生まれる効果が目に見える場や機会が必要。

その一つが魅力的なウェルフェアトレードのマーケットを広げていく事、また理屈ではなく実践だと私は考えます。

今はコロナショックが吹き荒れる逆風の只中ではありますが、せっかく広まりを見せてきたこのウェルフェアトレードのマーケットをさらに発展させるため、これからもチャレンジし続けていきたい。

そしてもう一つチャレンジしていきたいことは、一般のマーケットで販売するという知識や経験(時には勇気)に乏しい福祉施設に対する丁寧なケアや、福祉施設の職員に対する気づきの機会づくりとエンパワメントです。

これは従来のマジェルカでも可能な範囲で行ってはいましたが、昨年末に一般社団法人を立ち上げ、マジェルカの活動に共感してくださる皆様の支援の元、今年に入ってから活動を本格化しています。

まだ始動して間もないものの、それまでマジェルカとしての活動で培った知見やリソースを武器にしているので、対象相手には既に目に見える変化を感じ取っています。

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(京都で開催した商品力向上ワークショップ)

「10年活動を続けてきたマジェルカだからできること」・・・福祉の側、社会の側に価値を提供し続けるため、資源や仕組みを構築していく事が今後の課題です。

誰もが生きやすく温かい社会にむけて

私は、福祉の道に真っ直ぐ進むことはありませんでした。でも、だからこそ今まで蓄えてきた知識や経験や考え方を活かし、障害者が作り出す価値を正しく社会に発信したり、多くの人が価値を発見するお手伝いが出来る。

マジェルカの活動は私にとって文字通り天職だったと考えています。

マジェルカを立ち上げた事は正しかった。
その後の10年、何度も立ち止まったり、諦めようとしたりしながらの遅い歩みではありましたが、それでも着実に社会を変える一助を担ったと確信しています。

マジェルカが踏み入れた世界にはまだまだ多くの可能性や余地がある。

もう一度踏ん張って、この世界のさらにその先を見てみたいと考えています。

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(スタジオクーカのアーティスト横溝さやかさんに描き下ろしていただいたマジェルカのシャッターアート)


マジェルカのインスタグラムのフォロワーは7000人を突破しました!

マジェルカの紹介動画、是非御覧ください


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