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生活の質第一スパルタkaigo4

63年間続けた仕事をやめてから転がるように老人化、ボケが加速する母を、スパルタ介護する話。

前回、物忘れ対策でノートに1日の出来事を書くことを始めた矢先、財布を持ってこいとのLINEが入る。

「財布を持ってきて」
朝イチにLINEが来ている時は大抵思い込みで書き込んでいる。財布は私がずっと預かっている前提で文章が書かれ若干イライラしている雰囲気の文面だった。
そういう時は大抵、間違っている。
財布は各病院支払いの時は預かっているが、持ち帰ることなんかないのだ。
平静ならわかっているのだが、多分探してもないので、そういうこと(私が持っている)にしたいのだ。
そして、若干怒っているのはよく分からなくなっている自分に対してだと思う。
すぐ母のところへ向かう。
外に出ることもないので財布は家にあるのは分かっているが、ついに物取られ妄想なのかな、と思うと早く見つけなければという逸る気持ちだ。
着くなり「財布なんか持ってないよ。よく探したの?」
母は多分そうだろうわかっているけれど体裁もあり「あんたじゃないかね〜私はてっきりあんたが持ってると思って〜」
バツが悪い。多分そう。
まず、カバンを探す。
この前、買い物に出た時に軽いのが良いというので買ってきたカバン。それをゴソゴソすると財布がスっと出てきた。安堵すると同時に、なんでこんなにわかりやすい所だったのに分からなかったのか探さなかったのか?
財布があったことを告げると「あれ〜3回みたのに」と言う。3回は大袈裟だけどみたのはそうかもしれない。
「慌ててることとなくなってるという思い込みで見えなかったんだよ」と言うと。「そげか〜」と納得していた。思い当たる節があるのだと思う。
思い込みであるものが見えなくなる。そんなこともあるんだろう。
ガッカリしている様子だけど、こちらも心配が募る。
後日、追い打ちをかけるように「青いポーチがない。」というメモがテーブルに置いてあった。
私にまた探し物をしていると思われたくなかったので、無くなったことを知られないように、でも自分が覚えているようにメモをしていた。また探し物をしていることと、私にバレないようにノートにも書かなかったことに愕然とする。
直ぐ「青いポーチ探している?メモ見たよ。いつまではあったの?」と詳細を聞く。推測をしてそこを探すとやはりすぐに見つかった。そこへは持ち歩かないでしまっておきなよ。という私のアドバイスでしまったとのこと。
財布も他のものも、分からなくならないようにとしまって分からなくなっている。
どうやら、この紛失が自覚を促したようだ。
自分は管理が出来なくなっていること。無意識にした行動に要注意なのだと。
母いわく、「あんきでするな」ということらしい。あんきでするな、のメモがたくさん貼ってあるのだが、安気と書いている。誤字と以前教えたのだけれど、本人はもうコレで覚えてしまっている。言いたいのは無意識でやらないで意識して行動せよ。ということなのだけど。
まァもうどっちでもいいよ。
そして、決定的な間違いが起こって母は自身の検査がまた必要なんだな、と思ったようだ。
そして、わたしも今まで何度も付き合ってきた認知症検査がまた必要かな、と母と同じことを考えていた。
先日、差し入れられたお菓子が誰からのものか分からなくなってしまい、私だと思い込んでしまった。自分の記憶の改竄にショックを受けているようだった。仕事柄、贈り物、差し入れが多かったことを考えれば誰から頂いたのか不明のお菓子が冷蔵庫に入っていること自体にガッカリしていた。
「あんた、わたし認知症検査した方がいいと思うわ」
そうだね、診察は受けた方がいいかもしれない。今までは安心するならと受けることを勧めていたけれど今回はマジモードで。
「わたしもそう思ってた。大きいところ行こうよ。2年前うけた先生に診てもらうか」
こうして、予約が取れ次第、認知症検査に挑むことになった。

お菓子が誰の差し入れか分からなくなった時、必死に「あんたじゃないかね?持ってきたの」と何度も確認していた。
記憶の改竄が余程ショックだったのだろう。
「だからね、ノートはそういうことを書いておくためにあるんだよ。これを誰から頂いた。あれは念の為ここにしまった。何月何日、コレコレこうで、って書いてあれば探す手間省けるでしょ。やっぱりどこかでこんなん書いても無駄だとか、私が言うことを聞くのは癪だ、っておもってるから書かないのよ。」
母はその時ものすごく腑に落ちた顔をして「そげか〜そういうことか。なるほどね。」
だと。
はァ、やっと身に染みましたか。
ノートに書き始めてから、ようやくその意図が伝わった。
そして、改めて私の言うことを聞かなければならないこと、年貢の納め時と悟った。
その日のノートには「老いては子に従えだァ〜」
と大きく書かれていた。

少し経ってから「あんたに反抗してるつもりは無いけど反抗してるんだァか。あんたの言うこと聞いてるつもりだけど、反抗なんだわねぇ。」

プライドは高かったから悔しいでしょう。

母は果てしなく不器用なのだった。

そして、ノートに書くことを改めて誓った翌日に、再び紛失事件が起こる。
一難去ってまた一難、今度は何がなくなったのか。

つづく。

#介護
#母
#認知症



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