2024年7月ジャワ旅④ジョンブラン洞窟

ジョグジャカルタ3日目・前半

目指せクレイジージャーニー、あるいは川口探検隊

快適なシェラトンの夜は更け、午前3時過ぎの爆音アザーンで目覚めそうになるも、根性でそのまま6時まで寝続けた。
本日の予定は洞窟である。
ジョグジャカルタ発の日帰りツアーはいろいろあるが、「遺跡巡り」、「火山のふもとでのジープツアー」、「洞窟」が三大人気オプションのようだ。その中で友人Kの目に留まったのが今日行くジョンブラン洞窟とピンドゥル洞窟の、洞窟二本立てツアーだった。クレイジージャーニーみたいでおもしろそうだと言って、俄然彼女の冒険心に火が着いたようだ。
いつも楽な道を行きたい私と言えば、洞窟は1日にひとつで十分なんじゃないのかなーと思わなくもなかったが、二つ目の洞窟はチュービング(デカイ浮き輪に乗って流れるやつ)で訪れるのだという。何だかよくわからんが水に入れるのは気持ち良さそうだ。
友人Kが探し出し、高速で問い合わせ~申し込みまでやってくれたのが、このツアーである。

https://bagusbintang.com/private-tour/jomblang_pindul_cave.html

日系の会社なのか、日本語でやり取りができる上に返事もスーパー速く、旅程表には「朝早い出発のためホテルの朝食が食べられない場合はホテルに頼んでboxにしてもらうといいでしょう」的なことまで書いてあるザ・日本なキメの細やかさで、オススメである。
私たちのお迎えは7時に来るので、それまでに腹ごしらえを済ませねばなのだが、朝食ビュッフェはそれはそれは豪華なもので、三回くらい往復してもまだ未開のコーナーを残したのが心残りであった(明日も食べられるのだが)。

愉快なドライバー、アウグス氏登場

私たちを迎えに来たのは陽気な感じのアウグス氏、日本で働いていたことがあるらしく、日本語ペラペラである。
どうやら話好きであるアウグス氏には車中でジョグジャカルタおよびインドネシアのいろんなことを教えてもらった。
ジョグジャカルタは日本でいうところの京都的な都市であるらしい。古都で文化的な遺産や遺跡、大学も多いことなど共通点がたくさんあって、京都とは姉妹都市とのこと。知らなかった。
平均的な日本人にとってインドネシアといえば、パッと思い浮かぶのはバリ島とデヴィ夫人withスカルノ大統領がツートップではなかろうか。私もそのクチで、つまりインドネシアの政治や経済について、あまりよく知らない。その点、彼はそのいずれにも一家言あるらしく熱心にいろいろ教えてくれた。おもしろいのでどんどん突っ込んでいたらずいぶんヒートアップして、そのうち大統領選の候補者全員をバカだよ!と切り捨てていたが、それだけ自分の国のことに関心があるということだろう。大統領は国民による直接選挙らしいので、それも関係しているかもしれない。

いよいよ洞窟へ

車で一時間半ほど走って本日の洞窟その①ジョンブラン洞窟に到着。
ヘルメットと長靴を借りて、ツアー参加者全員が一斉に洞窟の入り口に向かう。そこで洞窟に到着した順に参加グループずつ番号札が渡され、順番にハーネスがつけられていった。
なんだなんだ、この装備は。
てっきり徒歩やはしごなどで洞窟に入っていくのか思っていたのだが、なんと、ぽっかり開いた穴のフチからロープにつり降ろされて入っていくと言うではないか!(深さ50メートル)
おおお。おお。…。これはかなり探検レベル高めである。滑車がどういう仕組みかはわからんが、見たところいかにも人力だ。

この支柱で穴の底へ吊り下げられる…

スタッフが参加者を集めブリーフィングを始める。洞窟のいわれやらに続き、いかにこのロープやカラビナが頑丈なものかなどを説明し、トータリーセーフだ!と太鼓判を押しているのを聞きながらチラリと今回の旅行保険はカード付帯のやつだけだったな…などと現実的な不安が脳裏をかすめる。
そして降下が始まり、いろんな国の人が緊張した顔で、ターミネーターのラストシーンのごとくゆっくり下に消えていった。
ついにわれわれの番が来た(二人一組で降ろされる)。ヒィエエエ~と情けない声でへっぴり腰になるも、スタッフがシステマティックな早業でロープを取り付け、ここを掴め!座れ!手を離せ!といわれるがままに、気づけばゆらーと宙ぶらりんである。オオオオオ!こええ!
スタッフに絶対下見るなよ!絶対だぞ!と何度も言われていたので、ダチョウ世代の私は素直に下を見たらやはりけっこうな高さでヽ(;゚;Д;゚;; )ギャァァァとなったが、次に上を見たら自分たちが頼りないロープ1本で吊り下げられていることも再確認して、なんだかこの状況が冗談みたいで逆に笑けてきたのだった。

さらに穴の奥へ進む…

我々ツアー参加者は最初に30人ぐらいずつでグループに分けられて団体行動になるのだが、なんせ二人ずつ降ろしていくので、最後の方の順番になると果てしなく待つことになる。こわばった顔のアイルビーバックを見送り続けることでどんどん緊張感が増すともいえるし、その分イメトレに十分な時間が充てられるともいえる。一方、グループ内の番号が若くても、グループの最後のメンバーが降りてくるまでこれまた待つ必要があるので、結局どちらがどうというのはなさそうだ。
みんな揃ったところでガイドスタッフが洞窟の奥へと誘導する。少し進むととたんに真っ暗だ。こんなときにイジェン山ツアー用に持ってきていたヘッドライトが役に立つ。おまえ、、活躍できてよかったなあ!
湿度120%といった真っ暗の洞窟を10分ぐらい歩いただろうか、急に目の前に光の筋が見えた。

光が…!

メキシコのセノーテでも見たような、射し込む光、である。Ray of Hopeって感じの射し込み具合だ。

映えこそがすべて

そしておもむろに始まる怒涛の撮影タイム。あらゆる国の人たちが「映える」写真を撮るためにそこかしこでポーズをキメている。ガイドスタッフはかわるがわるケータイを受け取りスリー、ツー、ワンを忍耐強く繰り返している。
私たちも撮ってもらったが、ポージングの指南に始まり動画の撮影まで仕上げてくれるプロ撮影者たちであった。その腕前は確かである。ご覧ください↓

主人公感SUGEEEE!

ザ・マンパワー

光の射し込む撮影スポットは大きく2ヶ所あり、それぞれでフォルダがパンパンになるほど撮影してもらったら、地上に戻る時間だ。奥に帰り道があるのかな?と思っていが、どうやらなさそう。ガイドは来た道を戻っていく。もしや、もと来たルートで地上に上がるの?どうやって?まさか?と全員がざわつき始めたころ、着陸ポイントには降りたときより多くのスタッフが集まっているのが見え、どうやら本当に吊り上げられて戻ることが判明した。ど、動力は?ウィンチ的なもんあった?まさか人力?
そのまさかであった。
地上の様子はわからないのだが、百貫サイズの白人男らが吊り上げられるとき、他の5倍くらいの時間がかかっていたのを目撃するにつけ、やはり人力にちがいない、とその場にいた全員が確信した。

多分こんな感じ

降ろすより上げる方が時間がかかるので、待ち時間も長い。近くにいた日本人夫婦の今晩なに食べる?の会話を聞くとはなしに聞こえてきたところによると、ご主人の方が弱々しく「ミーでもナシでもないのが食べたい…」と述べていたのに内心爆笑してしまった。わかり過ぎるぐらいわかる。(※作者注:インドネシアの代表料理と言えばミーゴレン(やきそば)、ナシゴレン(チャーハン)だよ)

吊り上げられ行く人たち(画面中央)

吊り上げられ体験は、行き(降下)とは異なる怖さがあった。途中、風にあおられゆーらゆらするので、このまま揺れが増幅して崖にビターン!と激突するんではないかという恐怖だ。
しかし、そんなことはもちろんなく無事に地上に生還。
いやあ~、冒険した!なんだこの達成感。そう、ただ吊り降ろされて吊り上げられただけで、自分ではなにもしとらんのだが、達成感が半端ないのである。

そして、無事に地上に上がった私たちが目にしたのは、20人くらいの男たちが下からの合図で一斉にロープを引っ張る光景であった。

だいたい合ってた

ネットでいろいろ調べている際、この洞窟の入場料が一人IDR500,000(ほぼ5000円)と書いてあるのを見たときには、正直、洞窟入るだけで5000円って高くなーい?と思っていたのだが、今このマンパワーを目の当たりにして「…にしたら安い」と思わずにはいられなかった。

本部のような建物に戻ると、葉っぱに包まれたランチが用意されていた。冒険のあとはみんなおなかペコペコなのである。おいしく完食。

トトロがこんなん持ってた
中身はドングリではない

少し休憩したあと、アウグス氏に促され次のスポットヘ向かう。
ところで、このアウグス氏、かなり顔が広いというか、どうやらたいそうなコミュニケーションオバケである。この洞窟で会う他のツアーガイドたちとは全員知り合いという感じで、会う人、会う人と笑顔で挨拶しては話し込みワハハ!と笑う、まさに陽キャのお手本のような屈託のなさで、なんならここに来る手前に通りすぎた村でも通りすがりの村人に愛想を振りまいていた。陰キャ日本代表の私としては、そんなアウグス氏がちょっぴりまぶしく見えつつ、よおしゃべるオッサンやなあと友人Kとひそひそ評していたのだが。のちに私はこのアウグス氏のおしゃべり気質に救われることになる。

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