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隣の祐君祐は本の聖地 神保町へ

祐が目覚めたのは午前8時。
珈琲を飲みながら、いろいろと考える。
「昨日は引っ越しの挨拶の意味があるし、仕方ないかな、叔母さんや叔父さん、恵美ちゃん・・・美咲さんは意外だけど」
「純子さんと甘酒も、あれしか選択肢がなかった」
「でも、自分一人で東京の街を歩きたい」
「あまり人に気をつかいたくない」

祐が決めた「街歩きの場所」は、神保町。
本好きの祐にとって。神保町は「どうしても歩かなければならない聖地」だった。

アパートを出たのは午前9時半過ぎ。
千歳烏山駅で都営線直通に乗る。
座れなかったけれど、車窓から外を見るのが楽しい。
「工場ばかりの静岡の田舎とは違う、住宅が多い」
「住宅ごとにいろんな生活と人生があるのかな」
そんなことを考えていると、笹塚を過ぎ地下鉄に入る。

新宿を過ぎたところで、スマホにメッセージが入った。
恵美からだった。
「今はどこ?アパートに行こうかなって」
祐は苦笑。
「都営新宿線の中、行先は神保町、本を探す」
恵美
「・・・私は無理・・・頭が痛くなる」
「でも、アパートに、いつか行っていい?」
祐の答えは「うん」と単純。
恵美からは「ありがとう」の花柄のスタンプと「ケーキ持って行くね」と「美咲も連れて行くね」の連続。
祐は、また押された。
「お待ちしています」のシンプルな返信。

そんなやり取りをしていると、都営新宿線は神保町に到着。
祐はスマホを鞄に入れて(美咲からのメッセージには全く気がついていない)、駅のホームに、改札を出て階段をのぼり、地上に出た。
そして祐は感じた。
「ここが本の聖地、学問の聖地…神保町」
身体がブルッと震えたのは、3月末のまだ肌寒い風ではない、祐自身がそう思っている。

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