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俺の彼女のシッポが横殴り用の鈍器な件 01


私達の銀河から遠く離れた場所に浮かぶ、地球に良く似た惑星ミラ。 

この星にはケモ耳やシッポや羽根を持ち二足歩行に進化した、とっても素敵でちょっぴり間抜けな知的生命体が存在していたーー



↓感じの悪い狐(カウチ)

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↓可愛いシッポが鈍器のユキ豹(ティア)

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【2人が職場で出会ってどんどん仲良くなるだけの、ただのケモ耳ラブコメ】



『俺の彼女のシッポが横殴り用の鈍器な件 01』


「カウチ~っ♡ いいにおーーい♡ それ何?」
「何って……。どこからどう見てもパスタだろ……」
「何パスタ? あたしブロッコリーがいい!」
「男の1人暮らしにブロッコリーがあってたまるかよ……」
「ブロッコリーは栄養があって、腹持ちがよくて、さらに安くて、モデルさん達もい~っぱい食べてて」
「雑誌の中だけだ。モデルがい~っぱい食べるのは、サプリだ」

 料理する俺の背中に抱きついて、太くて長いシッポを俺に絡みつかせて来るティアは「え~~?」と文句を言いたそうな声を上げる。
 だが、振り向かないで料理を続けた。

 俺のいる救急隊「が組」に今年入って来た新人看護師のユキ豹、ティア。
 ハッキリ言って、ティアはメチャクチャ可愛い女の子だ。若くてキャピキャピ元気。いつも笑った様に口角が上がっている。消防士らしく短い髪と引き締まった体をしているが、雰囲気はフワフワだ。ユキ豹らしく斑模様で太くて長い長いシッポもフワフワ。ただし怒らせた瞬間、フワフワのシッポは横殴り用の鈍器に変貌する。
 こんな可愛い子が、なんで俺みたいな黒狐のオッサンを全力で愛するのか、意味は分からん。だがティアの愛は真剣だ。ティアが入隊したばかりの頃は、オッサンを誤解させる態度は止めろと思って逃げ回っていたのが懐かしい。

 昨日の消防署恒例地獄の7時間耐久飲み会の後。
 ティアは俺について来て、俺のベッドに俺と一緒に入って、きっちり俺を仕留めた。で、朝になっても帰らないでくれるから、飯を作って餌付けだ。使いかけの乾燥パスタ・何かの缶詰・冷凍の玉キャベツしかなかったから、それでまあテキトーにだ。普段は酒のツマミしか作らないから、味が濃いかも知れない。

「カウチ~♡ おいしそう♡ もう食べていい?」
 俺の背中にへばりついて、顔を覗き込んで来るティアのフワフワした笑顔が良すぎる。目を逸らすと、ユキ豹の長くて太くて可愛いシッポが俺にフワフワ絡みついているのが、視界を直撃した。全方位からティアの可愛さに襲撃されている。
 咳払いをして、勝手にニヤけた顔を引き締めた。で、パスタの入ったフライパンに集中した。
「見ろ。食事になる一歩手前だろうが」
「あ。喉も乾いたあ♡」
「喉? 酒割るもんでも、あったかな……」
「水でいい!」
「いや。貰ったジュースがあった……。パスタ盛りつけられるか? 出してやるよ」
「はい♡ 味見してお皿に盛りつけます! お皿どこ?」
「皿も出す……」
 うっかり皿も出さないで料理を始めていた。俺は可愛い過ぎる彼女が出来て、浮かれ過ぎだ。
 俺の背中から剥がれて、ティアは「よ~~し」と言いながら腕まくりをした。
 男物のパジャマの上だけ着て張り切っているティアは、メチャクチャ可愛い。ユキ豹の太いシッポが、俺の狐用パジャマのシッポ穴を通らなくて、ズボンを履いていない。
 俺の手から菜箸を取って、ティアはパスタを引っ張り上げた。総合的にフワフワしているが、ティアは手際の良い看護師だ。フワフワ笑顔で切れよく味見をするのがミスマッチで、見ていて面白い。
 ティアを眺めながら、台所の上の棚を開けて、普段使わない小綺麗な皿としまいっぱなしの缶ジュースの箱を引っ張り出した。
「おお~! 綺麗なお皿とジュース出て来たー! そこにいたかー♡」
「友達の結婚式の引き出物と、患者さんからの贈り物だ。今洗う」
「縁起いい!」
「引き出物が? 贈り物が?」
「引き出物~♡」
 引き出物が縁起いいなんて、ティアは結婚に良いイメージを持っているのか?もしかして俺と結婚したいのか?まさかな。いくらなんでも浮かれ過ぎだ。
 ニヤけそうな顔を咳払いで誤魔化して、ジュースの箱を足とシンク下の台で挟み、皿を洗った。
「カウチ! おいし~パスタ完成した~♡」
「乗せろ」
 拭いた皿を缶ジュースの箱に乗せて差し出すと、ティアは手際よく菜箸でパスタを盛りつけた。
 それを持ってテレビの前へ行き、床に直接置いて胡坐をかいた。パスタを乗せたまま、ジュースの箱の横から缶を引っ張り出す。パイナップルジュースか。パスタに合うか?
 振り向いたら、ティアは台所で洗い物をしていた。
 ティアの太くて長くて可愛すぎるシッポが、俺のパジャマの裾から垂れさがって、機嫌良さそうにゆっくり左右に揺れている。ティアは俺の家に初めて来たのに、まるでずっとここで暮らして来たかの様に台所へ溶け込んでいる。変に心臓が鳴った。
 ティアなら分かる気がして、
「ティア。コップと箸、分かるか?」
 と尋ねていた。
 ティアは手早くフライパンを拭きながら、
「ん~~!?」
 と可愛く唸った。フライパンを拭き拭き、太いシッポの先を持ち上げて台所の引き出しを開けている。シッポを上げたせいでパジャマがめくれて、ティアの白くて丸い下尻がチラッと見えた。
「お箸は引き出しでーー、コップは棚かな? お、あったあった!」
 ティアはパパっとフライパンとふきんを片付け、手で引き出しを探って、箸を握った拳を天に掲げた。
「分かったよ~~っ♡」
 くるっと振り向いたティアは、笑顔かつ全身からハッピーが沸き出していた。邪な俺にティアは眩しすぎる。つい無言で目を背けた。
 ティアは「カウチ?」と不思議そうに俺を呼びながら、俺のところへ駆け寄って来て、隣にペタリと座った。ジュース箱に置いたパスタの横へ、使い捨ての箸とビールジョッキが並んだ。
「氷を取って来る」
「なくていい! 早く食べよ?」
 ティアにTシャツの裾を引っ張られて、立つのを阻止された。もう俺は動きを止めているのに、黒目がちの上目遣いで追撃された。心細そうな目をしているのに、口角は上がっているのが可愛過ぎる。いちいち、あざとい。何度も俺を仕留め過ぎだ。そろそろ気が済んでくれ。
 咳払いしてから胡坐を組み直し、箱の上でビールジョッキにジュースを注いだ。ジュース1缶、氷なしじゃ、ジョッキは全く埋まらない。
 中途半端な量のジュースを見て、ティアが「きれ~~い♡」と歓声を上げた。パイナップルジュースが黄色いだけで喜べる若さが羨ましい気がしたが、考えてみたら俺は若い頃からジュースを綺麗なんて思った事はなかった。ティアがあざといぶりっ子なんだ。
「いっただきまーーす♡」
 ティアは嬉しそうにぬるいジュースをぐぴぐぴ飲んで、箱に乗せたパスタを食べて、
「うう~~♡ おいし~~っ♡ しみる~!」
 と言いながら目をつぶり、フワフワの耳を寝かせ、感動に震えた。いちいちリアクションが可愛過ぎるだろ……。家に1人でいる時も常にそうしているんだろうな?そうでないなら許せないぶりっ子だ。
 テーブルにしている箱からもう1缶出して、空になったジョッキに注ぎ足した。ティアはすぐにぐぴぐぴ飲んだ。そんなに喉カラカラか。
「……水でも買って来る」
「平気! 一緒に食べよ!」
「俺はいい。後、何だ……ブロッコリー?」
「……一緒にいよ?」
 ティアはグラスも箸も箱に置いて、両手で俺の腕に抱きついて来た。フワフワの大きな耳を腕に擦りつけてから、甘えた目で見上げて来た。
 あざと可愛過ぎて怖い。
 黒目がデカイ。おっぱいがデカイ。口角の上がった唇の可愛さは異常だ。しかも目をつぶって、フワフワのおっぱいを腕に押し付けて、コロコロと可愛く喉を鳴らすぶりっ子をして、俺を仕留めに来た。
 まんまとティアの顎をつまみ、顔を近づけていた。
 俺は好きとか、可愛いとか、口に出すのは苦手だ。すごく好きだ、腹が立つくらい可愛いと思っているのに、口から出た言葉を聞くと、大してそう思っていなさそうでガッカリする。
 だからその分、気持ちを込めて、優しくキスをした。俺の腕を抱くティアの手に、ぎゅ……と力が籠った。
「……ティア?」
 キスを止めて顔を覗き込んだら、ティアは涙目で甘えたそうに俺を見上げていた。ティアはすぐ涙ぐむ。いつも気づかない振りをしてやっている。
 今回も涙は見て見ぬ振りをして、頬を撫でた。甘えたコロコロコロがティアの喉から洩れた。
「……今日、カウチと一緒にいていい? ……ダメ?」
「駄目な訳ないだろ……。後で着替えでも買いに行くか?」
「着替えよりテーブル!」
「……分かった」
 俺は床に直接座って食べ物を並べるのが好きで、親や妹や親友が何をどう言おうとも、断固としてテーブルは導入しない方針でやって来た。が、俺の主義主張より、可愛いティアの居心地の良さが大事だ。ティアが欲しいなら今日買う。
 ティアは涙目のまま嬉しそうにフワっと笑って、抱いている俺の腕を軽く揺すった。デカいフワフワおっぱいで腕を挟んで揺するな。止めろよ……朝だぞ。昼か。どっちでもいいか。とりあえずティアから目を逸らした。
 逸らした視線の先にあったジュース箱の上で、パスタが半分くらい残っていた。
「腹一杯か?」
「カウチの分」
「寝起きからガツガツ行ける年じゃない……」
「31歳は、おにーさんだよ! ほら~食べて食べて!」
「腹も減ってないのに食うのは、食い物に失礼だ」
「そう? 食べちゃうよ? いいの~?」
「いいから食べろよ」
「キャベツ好き!」
 ティアは俺に寄り掛かって、パスタを食べ始めた。モリモリ食べている最中は静かだ。「カウチ~♡」なんてあざと可愛く呼んだり、フワフワ可愛い笑顔を浮かべたり、急に涙ぐんだりしない。
 それが妙に淋しかった。
 ティアの腰に腕をまわして、食べ終わったティアが「すご~くおいしかった~!!」と騒ぎだすのを待つ事にした。


……2人の出会いに続く!!

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