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エアロスミスが本当に紳士(プロ)だった話

MTV時代に出会ったアーティストで、誰が最も思い出深いか?とよく聞かれます。

私の「人生初」の海外アーティストへのインタビューは忘れもしない、世界的アーティストのエアロスミスです。

私は幼い頃から海外ロックやポップスなど無縁の家庭に育ったので、お恥ずかしい話、MTVで働き始めるまでエアロスミスはもちろん、その後に会う事になるジミーペイジ(レッド・ツェッペリン)やジーンシモンズ(キス)など数々のレジェンド的ロックスターたちの歴史を知りませんでした。

その知識と英語力で、よくインタビューなんてできたな、と思うのですが、「マイコ、やって!」とMTVから言われたので、やるしかない。

確か2000年にエアロスミスが「Jaded」をリリースして、日本にツアーで来た時だったか、MTV Video Music Awords Japanで来た時だったか?どちらかだったと思いますが、「インタビューには、スティーブンと、ジョーが来るかも」と言われていて、ギリギリまでわからない状態で待機。

インタビュー会場に足を踏み入れると、「二人が来るかも」どころか、インタビュー用の背景のフルセットにバンドメンバー全員分の椅子がずらり。ピッカピカのライティングがそこをかーっと照らしている。アメリカ側のスタッフがガヤガヤと、スターの到来を待って盛り上がっているではないか。「全員来ます」

それまで自分の無知のせいでリラックスムードでいた私も、その雰囲気に一瞬にして飲まれてしまったのです。

この時、初めて本当の「緊張」と言う体の状態を体感したのも、間違いありません。

手や脇から汗がだらだらと流れる、心臓がバクバクして飛び出そうになる、おしっこが出ないのに何度もトイレに行く、気付いたら息が止まっている、唾液がなくなり口がカラっからになる、人の話が耳に入ってこない、と言う極限状態に。

アメリカ側のスタッフが、「インタビューではこんな内容を聞いてくれると、彼らは喜ぶと思うよ」「今回はこんな内容は聞かないように」「質問するなら、この順番で」など指示をしてきたけど、まるでミュートのボタンを押したように何も聞こえない。

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(左:マイコ 右:エアロスミスのメンバー)

本物のスターほど礼儀正しいと思う

すごいオーラと共に登場したエアロスミスのメンバー全員。周りのスタッフに挨拶をしながらフレンドリーに入ってくるではありませんか。

私も、「Hi! I'm Maiko from MTV Japan.今回インタビューを担当します」と、かなり引きつっていただろう、思い切りの笑顔で握手をしました。するとスティーブンはすごく優しい目で「Hi Maiko! Nice to meet you! You look great!(マイコ、会えて嬉しいよ!今日は素敵だね!)」と目を見て言ってくれて、他のメンバーもきちんと挨拶をしてくれました。

ここまでのスターとなると、何十年も、インタビューを「受け慣れている」ため、私のように緊張してよくわからなくなっている人もきっと見てきているのだと思います。インタビューと関係ない話などをしてその場をほぐしたりして、本来なら私がすべきことを彼らがしてくれていました。

インタビューが始まると、それまでのガヤガヤは一気にシーン、と静まり返って、私の一語一句まで録画されていきます。

恥ずかしいほど噛んだりめちゃくちゃな英語になってしまっている私の質問も、ゆっくりとその意味を考えてから話してくれるその姿は、本当に紳士で、この人たちが大物になった意味を改めて考えさせられるほどでした。

しかもインタビューにはメンバー全員が答えてくれて、終わった後には、「素晴らしいインタビューだったよ」(多分そんなわけがないのですが)と、放心状態の私に声をかけてきてくれて、ハグまでしてくれました。

後々5年間色んなアーティストにインタビューして分かることなのですが、有名なアーティストがみんなこんな態度ではなく、マニュアル通りの答えしか言わない人、中にはインスタビューが終わった瞬間にサヨナラも言わず去る有名人の方たちもたくさんいるのです。そんなに急ぐ?ってつっこみを入れたくなるほど。

なので、このエアロスミスの態度は親切な紳士そのものでしたし、登場から去り際まで本物のスター、そしてプロフェッショナルでした。私にとっては特に忘れられないインタビューになったのです。

このインタビューのおかげで、その後の5年間は誰が来ても緊張せずにできるようになったのは間違いありません。

そして、スティーブンタイラー、と言えば、「口が大きかった?」とよく聞かれるのですが、お会いして分かったこと、それは、彼はとても顔が小さいということ。なので歌う口の大きさが割と目立つのですが、あれは顔の小ささから余計に目立つ、と言うプチ情報をシェアして、今回は終わります。

マイコ



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