見出し画像

#007 論理的文章はわかるが、どう書くのかはわからない人向けの入門--理系各員に捧ぐ

本シリーズは、①勉強頑張ったら選択肢が増える、②理系かつ高成績の方が選択肢は多い、③選択肢が多いと良い会社に入れて幸せになれるというよくあるお話の②まで必死で頑張ったものの、③は半分嘘である。ということに気付いて四苦八苦した私が、理系が気付かぬうちに罠にハマらないために、考えて損のないだろうトピックを書いていくものである。

今回は、理系のための英語思考による論理的文章術を紹介する。英語思考と言っても、ここでは英単語は一切出さない。あくまで英語を参考に考えるだけだから、英語苦手かも、という人もこの文章術をマスターすることで逆に英語力が伸びる可能性がある。

英語の文型を参考に考える

本稿の結論は、このタイトル一言で実は終わってしまう。論理的な論文用の文章を書けてるかどうかは、英語の文型を応用してチェックすればほぼ正確にわかる。

文型をどれくらい意識してきたかは、その人の学校によってかなり差があるようなので、念のためここに復習しておく。S(主語)/V(動詞)/O(目的語)/C(補語)と言葉の役割を記号で置く。英語の基本文型は全部で5つある。
①SV 例)私は歩く。
②SVC 例)あの本は赤色です。
③SVO 例)私はお弁当を持っていく。
④SVOO 例)彼は手紙を母の元へ送った。
⑤SVOC 例)彼女はわたしをダーリンと呼ぶ。

例文に理系男子の夢のようなものが入った気がするが、気にせず進めていこう。この文型を見る限り、英語を理解する際は、まず頭に真っ白な空間を作成すればよさそうだ。この頭の中の空間に、まず主語の登場人物が出てくる。次にその主語が何を行うかが示される。ここまでの情報で完結するのが、①の文型だ。

動詞の後に何かCの役割に当たる単語が来て、S=Cの関係が成り立つ時、それは②の文型になる。数学をするものの性分として、ここでの=は全く同じという意味ではないことを補足しておこう。S∋Cとかの集合記号の方がピッタリくる気がする。例文では、この本というものは、赤色という性質を含んでいることを述べている。この本は古いとか、大きいとか、そんな性質を持つ可能性もまだ十分含まれている。

動詞の後にくる単語がOの役割で、「〜をVする」の〜の部分にこの単語当てはまるとき、③の文型となる。投げる、読む、飲む、食べる、など人間の行動は、その対象がある場合が多い。投げる対象、読む対象となるものを目的語と呼ぶ。

目的語が二つ続く時がある。「AをBに運ぶ」のような文章では、AもBも目的語だ。このような、「を」と「に」の2つが必要なものは④の文型になる。必要かどうかは、その文書で表したい情報として過不足がないかどうかで判断する。

最後にO=Cが成り立つような場合、⑤の文型になる。これは、「AをBと呼ぶ」とか「AをBにする」とか限られた表現に現れる型だと考えておいてよい。

そして本稿の結論。日本語の文章を、この型に当てはめる。これが論理的な文章を書く第一歩なのだ。最近見た具体例で、この考え方を使う場面を紹介しよう。

まさに現在、卒業論文作成に向けて勉強中の学士課程の学生さんの書いてきた文章である。

加算演算子を用いて文字列や数値と連結することができる。

これは文脈があって書かれた文章ではない。あるセクションが始まって、はじめの文章がこれなのである。早速、先ほどの型に入れてみよう。

S(加算演算子を用いて)
(文字列や数値と)?
V(連結することができる。)

考え方の初段はこうなる。主語と動詞は多くの場合見つけることができる。この文章の問題は?の部分だ。文字列や数値「と」何を連結できるのか?この情報が足りない。言葉には言葉ごとの使い方がある。繋ぐ、連結といった言葉を使った瞬間、読み手は頭に2つ以上のものをイメージし、それらが繋がるものだと理解する。

このような考えをして情報を補足すると、上記の文章は例えば以下のようになる。

加算演算子を用いて、ある文字列や数値と他の文字列や数値を連結することができる。

この文章の場合、文字列や数値の集合体の中から2つを選ぶような内容だった。したがって前者には「ある」をつけ、後者には「他の」を付けることで、同じ集合から別物の2つを取ってきたことを表現した。この考え方も英語のa, another, otherの関係性で語られるが、本稿では詳しい説明は割愛する。

日本語思考でハマる罠

日本語で物事を考える私たちは、文脈という概念を使わないと日常生活で満足に情報を理解できない。何故そうなるのかは、諸説あるのでここでは詳しく触れないが、先ほど挙げた頭に真っ白な空間をイメージするという考え方を使えば、日本語では真っ白な空間を作る機会がほぼ無い。その空間を頭に作った瞬間に、空間内に何かがあるのだ。その何かの正体こそ、文脈である。

先ほどの例のように、文章で要素が抜ける場合は、自分の思考の文脈に邪魔をされている場合が多い。先ほどの例で言えば、書き手の学生は、加算演算子を勉強したところだっただろう。勉強して連結の様子をひと通り、理解する。理解できたら文章に書く。この文脈のせいで、「文字列や数値」と書いた瞬間に、書き手の頭には「文字列や数値」のかたまりが2つ浮かんでいるのだ。

こういうミスを減らす手段が、英語思考を使うということだ。まず頭に真っ白な空間を用意する。文章の情報を順番に、その空間内で再現していく。無事滞りなく再生できたら、論理的文章が書けている。

注意すること

今回紹介した文型に当てはめる手法は、ミクロな局所的な論理性は担保するが、論文全体には応用するのが難しい。ただ、頭に真っ白な空間を用意して、論文を頭から読んで、自分の行った実験などの内容が全て再生できたら、それは論文全体として、論理的に説明できていると判断してよいだろう。

まとめ

今回は、論理的な文章を書くための1つの考え方として英語思考を紹介した。英語の基本5文型は、言葉の役割を並べて、文章によく現れる並び方を紹介するものだ。SVOCというのは、言葉の役割を表すだけのものなので、日本語にも応用できる。論文の話ばかりしたが、日常の勉強、試験でもこの考え方を応用すると得する場面があるだろう。

次回もまた、よろしくお願いします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?