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情弱音大生だった私がIT業界でPMになるまで、ビジネススキルをどう身につけたのかという話

「音大生って世間知らずのイメージ!どうやって転職活動したんですか?」
「エンジニアからPMになる時にビジネス知識はどう身につけましたか?」
「社長になって数字が見れるようになるまで苦労しましたか?」

こんなことをよく聞かれるのだけれど、最初にIT業界へ転職した時も、エンジニアからPMになった時も、会社を作った時も、ビジネススキルという観点ではつまづいたり大変だったという記憶がなかった私。

では一体いつどうやって私はビジネススキルなるものを身につけたのか。ふと振り返ると、新卒で経験した会社での業務に全てのナレッジが積まれてたのではないかと気づく。

ちなみに、私が新卒で入った会社は(結果的に違法だったとまでは言わないけれど)入社してすぐのころに労基から監査が入って是正勧告されたくらいにはブラッ◯寄りのグレー企業だ。

そういう意味ではあまり良い思い出ばかりではなく、特段触れないようにしてきた背景もある。

だけれど、振り返ってみると今の私が持っているビジネススキルは全て新卒の会社で学んだもの。幅広い業務に権限を与えてもらい、今となっては感謝できる過去なのかもしれない。

何の参考になるかわからないけれど、「どうやってビジネススキルを身につけたのか?」の回答になるかもしれないので書いてみることにした。

数字を読める社会人になれ

新卒で入った会社は、某楽器メーカー特約店。

楽器メーカーというと、店舗で楽器を売ってるだけに思われがちだけど、事業の柱は数百種類のコースを持つ音楽教室。都心だけで数十教室、中にはダンスやバレエ、英語、パソコンといったコースも含まれる。

その他にも、夜や週末はクラシックコンサートからロックやジャズのライブまで、イベント企画や運営も行うなど、音楽にまつわることなら隅々までやっている会社だ。

当時の自分の職種が何だったのか未だに説明しづらいけれど、社員は一店舗(教室)の店長のような立場を任され、いわゆる雇われ社長みたいな立場になって講師やアルバイト・パートさんの募集やシフト管理をすることから始まる。

そんな会社で、入社式から口酸っぱく言われたのが「数字を読め」というメッセージだった。

始めの頃こそ、「数字?普通に読めるけど?」と思っていたが、そこで読まなければいけない数字は私が想像しているものと違っていた。

  • 損益計算書

  • キャッシュフロー計算書

  • KPI 予算/実績/達成率

こういった用語は音大生だった頃の私には無縁だ。

しかし、入社直後にして研修の末、毎日こういった数字を意識することを余儀なくされる。

会社全体の年間売上は数十億、店舗(教室)単位で数千万〜億単位の店舗経営全般を任されるわけだから、P/Lがわからない、などと言っていられる状況ではなかった。

当時の私がどれくらい無知かというと、損益計算書に書いてあった『200(千)』 のような単位表記の意味も知らない。(一応大学時代に日商簿記の資格を取ったのだけど役には立っていないようだ)

加えて、本社ビルで上司とすれ違えば「今月の目標数は?現時点の達成率は?」と突如問いかけられる。

ここで瞬時に答えられなければかなり詰められるような環境だったので、いつでも反射的に回答できるよう、私は毎朝、担当教室の前日までの数字を確認し頭で何度も反芻する癖がついた。

足で稼ぐ、泥くさい営業経験

入社して最初にやったことは、THE・営業マンとして想像されるような研修だった。

  • 顧客リストへ片っ端から電話営業

  • 立川や府中のご家庭へ片っ端からローリングピンポン(怒鳴られたり物を投げられるような経験もした)

  • 西新宿のビル群に片っ端から突撃アポ(企業の方は面倒そうにしても基本はビジネスなので物を投げてきたりしない)

  • 中央線主要駅でのティッシュ配り

  • 毎日数時間、都心のいたる地域へポスティング

1ヶ月弱に及ぶこれらの研修で、スーツもパンプスもボロボロになり、後半は足が痛くて公園にある遊具の穴に隠れて時間が過ぎるのを待っていたこともあった。(時々、同期と合流することができるとモスバーガーでグダグダしたっけ)

しかしながら、この経験も悪くはなかった。98人(98社)に迷惑されても2人(2社)くらいには喜ばれることを知ったし、自分が渡したティッシュや、ポスティングしたチラシを持って教室にやってきてくれた時の嬉しさはひとしおだった。

「そのティッシュ、私が渡したやつですよね〜」なんて会話から仲良くなり、教室の生徒さんとなり、グランドピアノをご契約いただきご自宅まで納品しに行った日のことは忘れない。

この後、教室運営をしていく中では新聞折込広告や雑誌、Webの広告出稿などでのマーケティングもすることになるが、こういった最初の営業経験で学んだ「どこのエリアに」「どんなターゲット層がいて」「何がコンバージョンするのか」という肌感が生きたことは間違いなかった。

接客、クレーマー、謝罪、喜び

やはり、実際にユーザーと対面し接客をするということには悲しいトラブルが生じてしまうことはある。

こちら側にあきらかに非があるパターンで謝罪を求められることは当然だけれど、全くもって理不尽な言いがかりともいえるクレームをされることもある。かと思えば、適切な対応をすれば「今日の敵は明日の友」とも言わんばかりに翌日にお茶菓子を持ってきて逆に謝ってくださることもあった。

私の場合は、大人専門の教室、子供中心の教室のどちらも1年強ずつ担当したことで、かなり幅広い層を相手にしてきたので、対大人と対子供(の親)で、ユーザーの決裁価値観が変わることや、響くコピーライティングも違うことがわかってきたのは大きな収穫だった。

結局、最終的に私はこのクレームがトリガーとなって心が壊れかけ、転職することになるのだけれど、「お前のせいで娘が成長しないから都庁に訴えてくるけどいいんですね?」と言われたのは今でも意図が全くわからなかった。なぜ都庁?

イベントの企画運営、収支管理

とにかくイベント業も忙しかった。秋と春は特に繁忙期で、毎土日の早朝入り、深夜撤収なんてこともザラである。

コンサートやライブのイベントとなると、企画は1年以上前からスタートする。コンサートホール等の会場は、1年前の抽選会に参加して予約する必要があるからだ。時には一般解放していないレストランや商業ビルの一角でコンサートをやらせてほしい、と交渉しに行くこともあった。

そうして会場予約に始まり、会場費や講師謝礼などの支出、生徒さんの参加費や観客のドリンクチケットなどの収入を計算し、いかに粗利益を確保するか調整しながらスケジュールと当日スタッフ要員を決めていく進行はまさにプロジェクトマネジメントそのものだった。

これはなんのスキルになっているかわからないけれど、本当にさまざまなイベントの司会を担当したので私というキャラクターが常に複数いて自分でも気持ちが追いつかないことが多々ある。

クラシックコンサートはスーツで、舞台袖の見えないところから落ち着いたトーンで「続いては、田中花子さんで、ベートーヴェン ソナタ第三番 です」、ロックやジャズ系ライブは、Tシャツにデニムで前に出て「イエーイ!みんな盛り上がってる!?次は皆さんお待ちかね!ジャーニーさんの登場でぇええす!」、沖縄三線の発表会では、沖縄の民族衣装を着て顔に真っ白な化粧をほどこされ、「エイヤーサーサー」などと踊りながら舞台に出ていったりもした。

ここまで出来たら、もう何も恥ずかしいものなどないのだ。

月次定例での予実報告

報告時に相手が何を知りたいのか、要点をおさえてホウレンソウするスキルはこれで身についた。

1教室を任される社員の役割として、月初の定例会で前月の予実報告をする場があった。その際に上司や他店舗が知りたいことがなんのか、数十店舗もある中で半日かけて順番に報告していく必要があるため、わかりやすく伝えることが求められた。

  • 定量的情報を明示

  • よかった施策、横展開できそうな別エリア提案

  • 悪かった施策、改善点

これらを端的に報告することも、PMをする今必要なスキルの糧になっている。

余談だけれど、この定例会での報告は店舗ごとにコンサートホールの舞台上に立たされ、予算達成していれば拍手喝采、未達の場合は「申し訳ございませんでした」などと頭を下げて暗い顔をしなければいけない慣習があった。ブラッ◯感が…

要するにだな

ブラッ、いや、グレー企業ではあるものの、大変な思いをしただけのビジネススキルが今身についているのだと思えば自分に自信が持てるものである。

だからなんなんだというと、ビジネススキルを身につけたいって人は

  • 飲食店やコンビニの店長にでもなってみる

  • ティッシュ配りやポスティングのバイトしてみる

  • 会社でひたすら電話番でもしてどんな顧客がいるか観察してみる

  • 勉強会などイベントの企画運営やってみる

  • 面談時に定量的情報とKPT的情報を明示してみる

ようなことをしてみてはいかがだろうか。

ちなみに怒られたり詰められたりしても気にしなくていい。大抵のことはどうとでもなる。

時々は公園の遊具の穴に隠れてもいいけれど、何を言われても心の中で(は?うっせぇわ)くらいに睨みきかせておけば辛いものも辛くなくなるかもしれない。


まぁこれは適切ではないアドバイスなので何も聞かなかったことにしてくれ。




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