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ファンを名乗る覚悟 / 「好き」を公言できなかった女


いわゆる「ファン」を名乗るってとても勇気が要る、と思っていた。


斜に構えてるくせにチョロい


私はどうやら
「好きになるまでに時間がかかると見せかけて、落ちる時は一瞬」
タイプの人間らしい。

基本的にビジュアルが優れている方々に対して、顔が整っている、スタイルが良い、という第一印象で「きゃー!あの人かっこいい!好き!」とはなりにくい。
美しい絵画作品や、素敵なお洋服を目の前にした時のように、

「おお、綺麗だなあ…」

としか思えないのだ。完全にただの目の保養。

だが、
「その人となりが分かるちょっとした所作」や
「その人が大切にしている信条」
なんかに深く共鳴してしまうと
「あっ」 という間に好きになっちゃうんだな。
実にちょろい女である。

そしてある程度ハマると、「好きなんだよね」と言えなくなった。


自己肯定感不足の弊害、ここにも

ファンを公言できなくなる理由を考えてみたが、この2つにまとまっていった。

・こんな私が○○のファンだなんて申し訳なくてとても言えない
・私よりも○○のファンだと公言するに相応しい人が沢山いる


卑屈!根暗!ネガティブ!
なんか湿気っぽくてキノコでも自生しそうだ。

つまる所、結局は「こんな私が」という自己肯定感の不足から来るものなのだ。
ここで、伝説的ドラァグ・クイーンのRu Paulの名言を書いておきたい。

If you can’t love yourself, how in the hell you gonna love somebody else?
(自分を愛せなかったら、一体どうやって他人を愛するというの?)


ものすごくシンプルでありきたりな言葉だが、その通りなんだよね。
ベクトルが自分に向いていても、他へ向いていても、人を真っ直ぐに好きになるということは「誰かを好きになれる自分も愛する」という事でもある。

大学中退、肥満、持病有り、その他もろもろ
コンプレックス塗れの私には、それはとても勇気がいる事だった。


誰だって、愛していいんだ


2019年、4月。
友人に誘われて、以前から気になっていたハロー!プロジェクト所属のアイドル、アンジュルムのリリースイベントに行ってみた。


要は、シングル一枚買えばミニライブを優先エリアで見られて、おまけに全員と握手ができるよ!という大変にサービス満点なイベント。
シングル一枚=1,000円そこらだし、ちょっと気になる程度の人間にはたいそう敷居が低いイベントなのでとても有難い。

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気になっていた理由が、この曲。


作詞作曲、前山田健一
ヒャダインという名でも割と名の知れた音楽プロデューサー。
様々なアーティストへの楽曲提供やアニソンなんかでよく名は知っていた。丁度この曲がリリースされた頃にネットの音楽ニュースで目にして、「おっ、ハロプロにも楽曲提供してるんだ」と心に留めていた。


定刻通り、ミニライブが始まる。
まだ、顔と名前もぼんやりとしか分からない、知りたてホヤホヤのアイドル。
「ミニライブ」という言葉に相応しく無い全力感。
歌、ダンス、合間のMC、一体どこがどう「ミニ」なんだ!?
何より、ハロプロ鉄の掟「生歌主義」に圧倒される。

アンジュルムはその日、「タデ食う虫もLike it!」をセットリストに入れていた。
イントロで、あっあの曲だ!と気付く。
きらきらした笑顔を全方位のファンに向けて、歌い出す。
そしてサビ前、この歌詞に差し掛かった瞬間。


笑われてもいいんじゃない
芽生えしその愛 恥じるほうが恥さ


両手で口を覆い、大きく息を吸って吐いた。
笑っちゃう位涙が溢れて止まらなかった。

昨日までの自分を、目の前で歌い踊る彼女達が救ってくれた気がした。

笑われたっていい、誰だって「好き」を大切にして良いんだ。
そしてそれと同じ位、もっと自分自身を大切にして良いんだ。

30年近くガチガチになっていた何かが、少しずつ崩れていくのを感じた。
そして、ハロプロのファンクラブに入会した。


十人十色、好きなら問題ない


「好き」を認められるようになって、少し生活が変わった。

・好きなアイドルやアーティストに恥じない自分になりたい
 →減量生活本格化、マイナス15kgに成功

・出来る限り、ライブに足を運んだりグッズを買って貢献したい
 →日々の仕事に対するモチベーションアップ、積極的に有休消化


いや、結構変わってた。
「推しのいる生活」というのはまさにこういう事か。
自分を肯定する練習として、「好き」に対して正直になるというのは、かなり効果的だと改めて感じた。

高校生の頃から好きだった、椎名林檎のFC「林檎班」にも割と最近入会した。
ずっと、入会できずにいたんです。大好きなのに。


私はこれからも、自分自身を「いいんじゃない?」と少しずつでも肯定して、「好き」という感情を見ないフリせず、一つずつ大切にしていくと決めた。

胸を張って、「こんな自分が大好き!」と思える日がいつか来ますように。



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