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13㎠ だけ、やっと自分を好きになれた / 爪を噛む癖、咬爪症と私

無くて七癖 有って四十八癖
【意味】
癖が無いように見える人でも、
少しは癖を持っているものだということ


こんな古事成語があるくらいだから、
意識してようが無意識だろうが
知らぬ間にやってる事って結構あるそうで。

私は、というと

・眼鏡を掛けてなくても、仮想眼鏡を中指でクイッと上げる
・考え込むと、唇を尖らせる
・左手で左サイドの髪を触る

一番目の癖は書いてみると何故か恥ずかしい。
自覚してるのはこれぐらい。


8年前まで、これらに加えて
「爪を噛む」という実に良くない癖があった。



安心毛布(第一生命製)


スヌーピーでおなじみ、
世界的に有名すぎる漫画「PEANUTS」
この作品に出てくる、「Linus(ライナス)」というキャラクターがいる。


彼が、まさに幼少期の私そのまんま!

持ってると情緒が安定、とりあえず落ち着く「安心毛布」と指をしゃぶってほっ…と安らいだ顔。

ライナスの こけし頭日本人女児ver.といった所。

ちなみに私の安心毛布は、
当時第一生命に勤めていた叔母がくれた
ミッキーマウスがダッシュしている絵が描かれた
ふわふわのタオル。

スヌーピー、ミッキー、第一生命
固有名詞の渋滞はともかく。

ライナス状態の私は、
昔の写真に沢山登場している。

家族旅行で行った日光にまで持って行っている。

華厳の滝をバックに、父と安心毛布と私。

安心毛布と私の蜜月関係は、割と早々に強制終了となる。


分かっちゃいるけどやめられねぇ3歳児


2歳なかば頃、妹が産まれた。

「もう赤ちゃんじゃ無いんだから!」

「お姉ちゃんになったんだから!」

「ちゃんとして!妹が見てるよ!」

姉としての自覚という、今になってもよう分からん感覚を
当時2歳半の私に理解させようと、母は必死だったんだろうな

・安心毛布は寝る場所から持ち出し禁止
・指しゃぶりは手を叩いて即厳重注意

と、母なりの対策を打った。

案の定、分かりやすい代償行為
「爪を噛む」が始まってしまった。

記憶は断片的だけど、幼いながらに
「やべえ、ママに怒られる」
って意識はあるんだよね。

大体、ひとしきり噛み終わった後で
蚊くらいは殺せそうな、
レーザーの様な鋭さの母の視線に気付いて、
「私は悪い子なんだ」
としこたま怒られた後、落ち込む。

落ち込んで、心細くて
でも泣くとまたそれはそれで怒られるので
落ち着かなくて

ガジガジ、ギチギチ… って
絵に描いたような悪循環!
教科書通りだよ!

手だけじゃ足りなくて
足の爪まで噛んでた。
難易度の高いヨガのポーズみたいな格好で。
体が柔らかい幼児期だからこそだな…。


「つらかったでしょ」


20年もの間、爪を噛む事はやめられなかった。

多感な中高生の間も、ずっと。

すらりと綺麗な指先の友人に、心から憧れた。
深爪で、常にどこか炎症を起こしてボロボロの指先を見られたく無くて、
制服のカーディガンやジャージの袖先を
ぐいぐい引っ張って伸ばして、出来るだけ隠していた。
それが出来ない夏場が苦痛で仕方がなかった。

あまり親しく無い知り合いに、揶揄われる事もあった

「ね、キモいよね。でもやめられないんだ」

って正直に伝えたら、お、おう…と引かれた。
そりゃそうだ。


時は一気に流れて、20歳そこそこ。

当時の恋人、現在の夫と付き合い始めて2年が経っていて、割と気心が知れ始めている間柄。

何処かのカフェに立ち寄って、休憩していた時だ。

デートで歩き疲れて、ぼうっとしていた。
爪をギチギチと噛んでいたら、
ふと 悲しそうな顔をした彼と目が合った。


まずい、恥ずかしいよねこんなことしてる彼女
ごめん、ごめんなさい…。


少々の沈黙の後、彼は言った。

「つらかったでしょ、今まで」


え?


呆けていると、彼は続けた
「こんなにボロボロになっちゃって…
 やめたかったでしょ?
 俺は気にしないよ、でも、マイコがつらかっただろうなって」


彼はずっと私を心配してくれていたんだ。
口にこそしなかったけれど、それは
自傷行為のようなものなんだと。

泣けてきて仕方がなかった。

彼のためにも、少しは自分を大切にしないと。



歯ではなく、爪の「矯正」


ひたすらGoogle検索で調べていた。

「爪噛み」「やめたい」「防止」

関連語句をひたすら並べていたら、

「深爪 矯正 ネイルサロン」

と痺れを切らしたGoogleの方から提案された。

「矯正」というワードと「爪」というワードって
並べて使う事があるんだ。


ネイルサロンなんて、一番縁の無い場所では?
と思ったけど、どうやらそうでは無い様子。

症例写真を見ると、私の指先かと思うぐらい、
よく似た症例写真がずらり。

これなら、もしかして、もしかする…?

数駅離れた、深爪矯正を得意とするサロンに通い始めることに。
「大丈夫!まず1年頑張りましょう」と微笑む美人のネイリストさんに後光が差して見えた。

最初は強度と厚みのある樹脂で、爪を保護。
自爪よりはるかに分厚くなるので、物理的に噛めなくなる。
うっかり口に持っていっても、樹脂の厚みにはっ!とする。

3週間前後のスパンで通い、
いびつな平たい貝の様な爪の形を整えて貰う。
せっせと爪の根元にオイルを塗る。

爪って、1ヶ月に平均3mm程度伸びるそうで。
1年もあれば総入れ替えしてるんだよね。

半年もすると、だんだん爪のピンク部分が縦長になってきた。
1年程度で、無事卒業。
矯正目的では無く、
いわゆるオシャレ目的の
「ジェルネイル」が楽しめるくらいになった。


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上が現在の自爪ジェルネイル状態、下が深爪矯正初回。
樹脂の無い実際の齧られ尽くした自爪は、写真の2/3程度です。
写真ではアートを施しているけれど、
限りなく自爪の様な見た目にする事も可能!



自分を大切にする意味が分からなかった私が、
やっと少しだけ、自分を好きになれた。
両手の爪、10本分。

もう、私は8年間、爪を噛んでいない。


まだ何処かにいる「昔の私」へ


女性でも、男性でも、本人でなくとも
ぜひ知って欲しい。

・爪を噛む事は、全てが本人のせいでは無い事
・本人が一番良く自覚している事
・厳しく咎めない方か良い事
・爪を噛む事で、様々な病気の原因になりうる事
・正しく手順を踏めば、治療出来る事


自分が思っているより、ずっと救われるよ。

原因は人それぞれ。

身近にこんな人いるなあ、って方は

「それ、治せるらしいよ?」と声を掛けてみるのも良いかな、と。


咬爪症は、正真正銘 病気の一つ。
人それぞれ、合った方法で治ります。


とにかく、安心して!
大丈夫だよ〜!
ちょっとだけ、自分を大切にする練習のススメでした。

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