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「毎日がアルツハイマー」が、完成し公開されてから、この7月で丸一年になります。劇場公開もまだ続き、さらには、全国で自主上映され、私も今まで行ったことがない全国の色々な場所に講演のため招待されるという、信じられないようなうれしい展開に一番驚いているのは、私自身です。この場を借りて、心よりお礼申し上げます。

 思うに「毎日がアルツハイマー」が、ここまで支持されている背景には、認知症そのものの捉え方が従来とは違うことと、何よりも笑うというアプローチが、新鮮だったからでしょうか。

 まず私は、アルツハイマーになった母の方が、アルツハイマー以前の母よりずうっと好きだということを言います。なぜ、アルツハイマーになった母の方が、好きなのか。私にとっては、あのお堅かった母が、遂に解放され、ジョークは言うし、明るくなり、何よりも自分に正直になっていると見えるのです。

 しかし、価値観の違う人から見れば、母はだらしくなり(2年以上お風呂に入っておらず)、いい加減でそのことを言い訳し(取り繕うのが上手)、自分中心(頑固で言うこと聞かず)に見えるかもしれません。

 つまり、認知症の介護は、認知症の本人や介護そのものをどう見るのかという「ものの見方」の話になってくるのではないでしょうか。そして、自分の持っているものさし(価値観)は何なのか、自分とは誰なのかということを考えさせられる深い話でもあると思います。

 認知症の介護は、シンプルで深いというゆえんです。シンプルなのは、認知症の人の思いに添うという点で、深いのは、なぜそこが上手く出来ないのかということです。認知症の介護は、ハウ・ツーだけでは乗り切ることは出来ない。これが、私がオーストラリアから帰国して母との介護生活が、3年を越えた今、感じていることです。究極的には、自分を見つめないと「ツライ介護」からの解放はないのだと考えています。

 さて、今回母との介護生活のその辺りのことを書いた新刊本「ボケたっていいじゃない」が、飛鳥新社から出版される運びとなりました。母のアルツハイマーは、私を成長させ、創作活動をインスパイアする源になった証ですね。

 そして、いよいよ6月からは「毎日がアルツハイマー・続編(仮)」の製作が始まります!

2013年6月

映画監督である娘・関口祐加が認知症の母との暮らしを赤裸々に綴った『毎アル』シリーズの公式アカウント。最新作『毎日がアルツハイマー ザ・ファイナル 最期に死ぬ時。』2018年7月14日(土)より、ポレポレ東中野、シネマ・チュプキ・タバタほか全国順次公開!