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38. 純粋な気持ちを取り戻せるかもしれない映画3選

年間100本映画を観ることを自らに課して7年目のわたくしが、映画初心者のために「なりたい気持ちで映画セレクト」する企画、THREE FOR YOU。今回は、会社で同じ仕事をたくさんさせていただいております先輩デザイナーのIさんからこのお題。

純粋な気持ちを取り戻せる映画、お願いします。

(…というか厳密にはこの独り言を聞いた共通の上司Sさんが「それ、ヨシダくんに映画薦めてもらったほうがいいよ!」という流れを作りだしたわけですが笑) 純粋な気持ち、何よりまずこの僕に足りていない感情だと思います!w が、はなから純粋な人が見るよりも、純粋な気持ちを失いかけている人のほうが、純粋な気持ちを取り戻すうえで効き目のある映画を見分ける能力は高いはず!w なので、そんな「ひねくれもののわたくしにも沁みた、ピュアな思いを思い出す3本」をこんな感じで選んでみました。

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きっと、うまくいく

2009年公開
監督 : ラージクマール・ヒラーニ
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インド最高峰の工科大学に入った3人組が、貧しさや学業との向き合い、人間関係など、様々な苦難に向き合いながら乗り越えていくお話。人はいかに、自分の人生の本質に気づくことが出来るだろうかという物語。主人公の天才は、単に頭がいいとかそういうことではなく、「自分が大事にしていくべきことが自分でわかっている人間」として描かれていると感じる。人生にはいろんなトレードオフがあって、選択を迫られたり、時には自分でバカをして窮地に陥ることもあるけれど、その時に、「自分はどうしたいのか」ということだけが、ほかの誰にも、どんな事情にも不可侵で、一方で自分にしか結論が出せない究極の問いなのだと改めて感じました。ただ、その「自分のしたいようにする」という決断を助けることが、親友にはできる。だから、自分の真理を大切に、親友を大切に、「きっと、うまくいく」と思って、前へ前へ。素晴らしい人間賛歌の物語でした。オチもちゃんとついて、170分でながーい作品なんですが、絶賛される理由のよくわかる映画。ラストシーンのロケ地、パンゴン湖には、死ぬまでに行ってみたいなあ。この映画が描く純粋な気持ちは「友を大切に」に尽きます。加えて、主人公はれっきとしたクリエーターなわけで、彼がゆるぎなく持っている「なぜ自分は発明を続けるのか」という問いへの純粋さも、はっとさせられるお話です。

リトルランボーズ

2008年公開
監督:ガース・ジェニングス
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悪友の家で偶然見た「ランボー」に魅せられて、二人で映画製作に没頭していく少年のお話。みずみずしくて眩しい毎日が、まるで無限に続くように信じていた、あの、学校が終わってから即遊びに行っていた、あの頃を思い出して泣けました。今よりも全然、毎日が連続的で、「自分」があったように思えて。劇中に出てくる、悪ガキや、子分キャラや、博士みたいな子や。ああそうかみんな、居場所が欲しくて、アイデンティティがほしくて、不器用にもがいて、親友だったのに突然、ふとしたことで仲たがいして口も聞きたくなくなったり。なんだか、もっと自分に正直に生きようとか思いました笑 「夢中に勝るものなし」とはこのこと。この映画が描く純粋な気持ちは「とりあえずなんでも一生懸命って、尊い!」ってことかなあ。大人になるとやることの種類や利害関係も増えて、なんでもかんでも一生懸命だと裏切られたり、時間が足りなかったりで、やっぱり逆算思考になりがちで、それに加えてプライドってもんも育っていくので恥かきたくなくて斜に構えてしまったり。そんな自分の殻を、いきなり捨てるまで行けなくても、「ああここに気が付いたらこんなに分厚い殻をこさえてしまっていたのね私」ってことに、はっと気づかされる映画なんじゃないかなと思って、個人的にも大好きな一本をおすすめします。

エル・ブリの秘密 世界一予約のとれないレストラン

2011年7月公開
監督:ゲレオン・ヴェツェル
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世界でもっとも予約が取れないと言われたレストランの1年間に密着したドキュメンタリー。示唆に富むドキュメンタリーでした。誠におこがましくも、広告クリエーティブの仕事とも重なる部分が多かったように思う。本質化と差異化。手段と目的の整理と峻別と、遊び心による逆転。「実験」の価値。R&Dの大切さ。インプットとアウトプットのバランス。過去の自己模倣の意図的な禁止による、創造へのチャレンジ。越境、コラボ、前提にとらわれない柔軟さ。そんな中でも、最後は自分の舌という経験則に対しての絶対的な自信と、人間くささ。「リサーチがクリエーションの源」 「創造とは日々の積み重ね」オーナーシェフのフェラン・アドリアの言葉にはいちいち重みがあります。稀代のクリエーティブディレクターだと思う。この映画が描く純粋な気持ちは「世界のだれも創造したことのない価値を作り出したい!という心意気」かなあ。とっても大変なことをしているときこそ、とってもロジカルで、とってもルーティンを大切にしているフェランの様は、そうでもしていないとその大変なことに向き合うだけのメンタリティが保てないってことなのかもしれないと思う。1%の成長を365日、複利で掛け算し続けると1年で約37倍に!っていう有名な数式がありますけど、まさにそんな感じだなあと。時に天才的なひらめきも描かれる映画ではありますが、それも結局は日ごろから培ってきた素地ゆえのこと。横着せずに、日々これ精進でありますなあという、初心を思い出させてくれる映画かなと僕は思ってます。

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デザイナー相手だからというわけではないんですが、3本とも「クリエーション」が密接にかかわってくる映画になりました。何かを自分の頭と手によってこの世の中に表そうとする行為そのものが、恥ずかしくて死にたくなるような、言い逃れのできない「自分をある種、丸出しにする行為」なんだと思う。だからこそその行為において、「かっこつけたり斜に構えている人」と「純粋に体当たりしている人」の差って、実は同業者じゃなくてもわかっちゃう要素があるのかもしれないなあとも思います(それが分からずに騙せちゃう場合は、その相手が純粋な気持ちで見てない、例えば名声とかに”すごーい!”と言わされちゃってるパターンかもとも)。「純粋とは、恥ずかしいのである」という山を越えないといけないのかもなあとも思ったり。率直に言えば、幼少期どっちかというと”優秀”と言われる側の人間としてそこそこな大人になるまで育ってしまった僕はその山を越えることがなかなか苦手です、ぶっちゃけ。だからこそ、この3本の映画は、そういう自分の心の殻を破ったほうがよいかもしれないっていう問題提起をもたらしたお話なので、よかったらぜひ見てみてくださいませ!

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