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40. 生まれ変わったような気分になれる映画3選

仕事の合間に年間100本映画を観ることを自らに課して7年目のわたくしが、映画初心者のために「なりたい気持ちで映画セレクト」する企画、THREE FOR YOU。今回は、よく考えたらまだ一度もお会いできてないんですがFBで仲良くしていただいているOさんからのリクエストのこちらを考えてみました!

生まれ変わったような気分!になれる映画をぜひ!

興味深いテーマであります。生まれ変わった気分。考え方としてはなんとなく「A:自分自身の内なる価値観や考え方がガラッと変わる」「B:そのことにより、自分の外側に広がる世界がそれまでとは完全に変わる(変わって見える)」という、内外の関係性の劇的ビフォー・アフターな構造に違いない。そんな感じで、主人公の身にAとBが巻き起こる映画。僕も好きなコンテキストなので、考えてみました。

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シェイプ・オブ・ウォーター

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2018年公開
監督 : ギレルモ・デル・トロ
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研究所の掃除婦と、謎の「研究対象」との不思議な邂逅のお話。「適応」とは何かという物語。声の出ない女と、言葉を持たない生物とが、たくさんの「コミュニケーション」を経て、どんどん溶け合うように1つになっていく。対象的に悪役は、切断された自分の指すら縫合しても適応しない。存在と存在が「合う」とはなにか。登場人物はどこか、自分と他者や社会、環境と少しだけうまくいってないからこそ、その問いが際立つ。何事とも形を変えて密着する「水」が世界を覆う物語で、人間って、不器用だなと思わせられる作品でした。「水があう」とはよくいったもので、名タイトルだなと。最後に静かに泣きました。クリーチャーありラブあり追跡劇ありサスペンスあり諜報活動ありって、どんだけエンターテイメントなんやねん。ザッツ映画。主人公が憧れるミュージカルよろしく、これを成立させたギレルモ監督はすごい。ずるい映画。この映画で描かれる”生まれ変わり”は、「自分本来の居場所をやっと見つけられた」という心持ちかと。

ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ

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2001年公開
監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル
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旧東ドイツ出身の性転換ロックシンガーが、”完全な自分”を目指して自分の片割れを探してさまようお話。何をしても中途半端で、自分の存在や体も中途半端で、どこにも属していないような心のありようをずっと引きずる主人公が、”自分”を獲得していく様が、すばらしいストーリーと楽曲。特に、曲と、詩が、すばらしくてすばらしくて。ヘドウィグがたどってきた数奇な運命と、奥にある、ただただ普遍的でピュアな心の乾きが、泣けました。ありのままの自分が、そのままで完全なんだという、ラストと、エンドロールで再び流れる「愛の起源」が、見事。映画化ミュージカルの大成功例だと思います。曲が、よかったなあ。なにしろ。この映画で描かれる”生まれ変わり”は、「何者かになろうとしなくても、自分はすでに自分という者であるという心晴れ」の心持ちですかね。

わたしに会うまでの1600キロ

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2014年公開
監督:ジャン=マルク・ヴァレ
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人生に自暴自棄になっていた女性が、アメリカを代表するロングトレイルのコースであるパシフィック・クレスト・トレイル踏破を通じて、再生を図ろうとするお話。中々どん底な背景が、このトレイルが引き受けたことのまがまがしさを表していて、それすらもちっぽけな事、どーってことのない事だと、素晴らしい大自然が言っている気がするほどの絶景。原題「Wild」も潔くて好きです。人生は一度きりで、浮き沈みはあるけど、とにかくまず一歩一歩を大切に、歩いてさえいれば死にはしないというような。ってかほんとにうらやましい。やりたい笑 1年くらい休職しないとできないけど、早くしないと体力が老いて下がっていくし・・・ あーうらやましい。というのはさておいて、この映画で描かれる”生まれ変わり”は、「いつもいつでも、人はその気になればリセットすることはできる」ということかと。描かれているのはアメリカ版お遍路みたいなもんですが、人の優しさと、苦行と、まったく関係ない風にいつもそこにある大自然と。自らの存在を極限まで「大したことじゃない」と小さく考えられると、人は苦しみから生まれ変われるのかもしれないですね。

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いずれの映画も共通しているのは最初に書いた「A」と「B」が主人公の心におこるってことなんだけど、Aを起こすには自分の中の「これまで」と「これから」に摩擦が発生しまくる。当然っちゃあ当然なんだけど、自分のこれまでの当たり前の価値観を一度、蛹がごとくドロドロに溶かして再錬成するわけだから、最強に不安定になるわけです。しかも蛹と違って絶対安静になんぞできないし、その最中にものすごく悩み苦しんだり、外的障害が立ちはだかるんだけど、途中できっと、わずかにか、妄想かもしれないけど、「晴れやかできっと希望に満ちているB」がちょっと垣間見えて、頑張って乗り切っていかれるわけです、どの作品の主人公にあらせられても。なので、大切なのは「いいBを夢見ること」かもしれないなあと思うし、生まれ変わった気分になれるかどうかもすべてはそこなのかもしれません。映画にできるのはそんな素敵そうな「B」を描くことに違いなくて、観た人が実際の人生で、もし生まれ変わりたいと思っていたとして、その気持ちを後押しする作品なんか作れたら、監督冥利に尽きるんだろうなあとかとも、思った3選でした。

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