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放課後まほらbo第二十二話 子どもが伸びる「野外生活5スキル」の秘密

放課後まほらboでは、「あそびは、最高の学び!」の構造化をすすめ、遊びを科学することで、なぜ子どもの「生活体験」が大切なのかを探究します。今回は、令和3年6月5日実施の冒険教室「野外生活5スキル」体験を解説します。

【第二十二話】
■なぜ「冒険」なのか

 4月の人間の巣づくり体験は、鳥のように人間の巣をつくる方法を試してみることでした。ツリーハウスではなく小さな鳥でもできる「巣」づくりなら自分たちの力で挑戦できる。それをダビンチグリッドという最少の構造体をつかって科学的に挑戦する企画です。日常から野外生活への小さな冒険は、ダビンチグリッドという構造体を組み合わせて作るという知的な冒険でもあります。子どもたちが日常的に何か新しいことに出会い、それに挑戦することの全ては小さな冒険なのです。この冒険は、子どもたちの興味関心と意欲を掻き立て、前に進む力を育てます。
6月のテーマは「野外生活5スキル」のひとつロープワークで秘密基地づくりに挑戦しました。秘密基地の地下エリアでランタンとヘッドランプを頼りに、秘密基地づくりの基礎練習をすること自体がワクワクする冒険なのです。

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■「冒険教室」プログラム効果

 まず、冒険教室の全体像を紹介します。
 季節ごとの宿泊を伴うような冒険は、子どもに目標と見通しを持たせることに役立ち、子どもたちに大きな目標と動機付けを与えます。
 次に今日の予定を確認します。子どもたちが見通しを立てるという習慣は、遊びを通して生活時間をコントロールすることにつながり、どんな時も物事に主体的に向き合うことで、自由を得るためのマネジメント力をつける備えにもなります。
 次に、スウェーデンの子どもたちが野外で遊ぶ秘密基地の絵を見せました。スウェーデンの自然環境教育「森のムッレ教育」の学童向け教室の指導者向け研修で使われる教材用の挿絵です。森の中のキャンプ場で野外生活を楽しみながら元気に遊ぶ子どもたちの姿が描かれています。
 この絵を子どもたちに見せるのには2つの理由があります。一つは、仲間とこれから取り組む野外生活遊びや協力してつくる森の中の秘密基地のイメージを共有することです。そしてもう一つは、そこに描かれているさまざまな遊びのシーンを分析することです。このイラストを見ると、木登り、崖登り、綱渡り、タープ、テント、調理をしている子どもたちが描かれているのを見つけることができます。それは、とても楽しそうでカッコイイ子どもの遊ぶ姿です。こんな森の中でのスリリングな遊びを想像した瞬間に、子どものヤル気にスイッチが入ります。
 もう少し詳しく見ると、その遊びや野外での生活の中で使っている道具の多くに、三脚に組まれた棒が使われているのを見つけます。しかもそれらは色々なところに使われています。子どもたちは、これを作れるとイラストに描かれているのと同じ遊びが出来ることを知るわけですが、これがゴールに向かうためのルート、もしくは具体的にどうすればいいかの方法を発見したことになり、夢を実現するための具体的な方法や技能を獲得するための目標をもった練習ができることになります。目的意識を持って取り組むことは前に向かってものごとを進めるための大きな力になることを体験できます。強い動機付けが生まれる仕組みを体験することは、子どもたちのこれからの人生を力強いものにしてくれます。
 そこでようやくロープワークに入るのですが、すべてが順風満帆に進むとは限りません。やる気さえあればなんでも叶うというわけではないことは、私たち大人は良く知っています。ロープワークの練習で子どもたちに最初に立ちはだかるハードルは、学び方です。ロープワークを難なくこなす子は手先の器用さというより、学び方を身に付けていることが多いのです。コーチの説明をよく聞いている。聞いた説明や示された手順の通りに、それが再現できるかを試すことが出来る。間違った時や上手くいかなかった時には、元に戻ってどこで間違えたのかを確認でき、わからないところは具体的にコーチに聞くことができる。そして、一度できると何度か反復して、その手順のコツや結び方の構造を理解し確実な技術として自分のものに出来る。これらのことを考えると学校での勉強の仕方とよく似ています。ロープワークの練習は、学校での勉強の仕方を鍛えるのにも役に立つと私が考える理由がここにあります。

■活動から「生活」へ

 放課後まほらboの冒険教室が、季節のイベントや行事としてのものだけではなく放課後の生活を基盤にしているのは、子どもの成長を促し、無理なく持続可能な方法で行動の変容を後押しするには「生活」の中が最も適していると考えるからです。野外活動から野外生活へというのは、非日常と日常を行き来することを容易にする身近な自然との関係性を、子ども時代にしっかりつくることから始まると考えるからです。これについては、また別の機会に触れたいと思います。令和3年度は、パンデミックの社会から子どもの「こころ」と「からだ」を守る工夫が、私たち大人に求められています。子どもにとっての遊びとは「生活」そのもので、その遊びに身近にある自然との関係を取り戻すことが、急務だと言えるでしょう。野外生活とは、子どもの外遊びを豊かにすることで、学び方をしっかり身に付けていく機会なのだと思います。
 放課後まほらboでは、生活の中での知的冒険遊びを楽しめるプログラムを準備しています。そこでは、学習の基礎と探究を基本にした学びを大切にしています。
 次回は、子どもが伸びる「野外・生活体験」の仕組み、について紹介したいと思います。
では。
 
(みやけ もとゆき/もっちゃん)