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「面白がる」ということ

読んでから時間が経ってしまったのだが、この頃ある本の内容を幾度となく思い返している。

その本は、大ヒットした「一切なりゆき 樹木希林のことば」

映像や記事などから垣間見える樹木希林さんの肝の座った感じや、自分を冷静に俯瞰されている様子などを見る度に、樹木希林さんと言う方に興味をそそられた。

そんな中、この本が日本でヒットしていると知り、読みたいと思っていたところ地元の図書館で借りることができた。昨年の秋のことだ。

心に留めておきたくなる考え方や在り方の数々に圧倒された。

特にこの数ヶ月の間に、何度も何度も思い出した箇所がこちら。

ひとつ目は、あまりにも有名になったこの一言。

彼岸と此岸っていうじゃない。向こう岸が彼岸、彼の岸ね、こっちは此岸、こっち岸と書いて此岸っていう言い方があるじゃない。要するに、生きているのも日常、死んでいくのも日常なんですよ。

これを初めて目にした時、何故だかわからないがとてもしっくりときた。

川のこちら側と向こう側。生と死と言うものは、それくらいの違いなのかもしれない。

彼女はこうも言っている。

死は特別なものとして捉えられているが、死というのは悪いことではない。

死を忌み嫌う文化もあれば、生命の誕生を悲しみ、あの世に還る死を祝う文化もあると以前何かで読んだ。

死を良くないと捉える世の中においては、「この世」が全てで「死んだら終わり」と考えられている。

いつの日からか、この世が仮の住処であの世が本来の居場所なのかも知れず、死は仮住まいを離れ戻って行くと言うことかも?と思っている自分がいて、「死んでいくのも日常」と言う考え方がしっくりと来たのだ。

1日の終わりに帰宅することが日常であるように。

そして、もうひとつ印象的だった箇所はこれ。

面白いわよねぇ、世の中って。「老後がどう」「死はどう」って、頭の中でこねくりまわす世界よりもはるかに大きくて。予想外の連続よね。楽しむのではなくて、面白がることよ。楽しむというのは客観的でしょう。中に入って面白がるの。面白がらなきゃ、やってけないもの、この世の中。

本当に、生きていると予想外のことが起きる。

二元的な言い方になるが、良いことも悪いことも…

4、5年前までは、良いことを楽しみ、面白がるのは簡単であり当然だけれど、一般的に悪いとされる出来事の最中に面白いなんて思えないと思っていた。

けれど、知人に言われた一言で考え方が変わった。

「逆境の中に居ると苦しいけれど、そこに何かしらの成長があると思うと、魂がキャッキャ言って喜んでいる」と。

確かに、逆境と言うものは永遠には続かないし、それを乗り越えた暁には新たなものを手にした自分、もしくは要らないものを削ぎ落とした自分がいるはず…

そう思うようになり、物事の見方がガラリと変わったのだ。

それは、樹木さんが仰る「面白がる」と言うことなのかも知れない。娯楽で得られる面白さ、愉快さとは違うけれど、違った景色を見られるかも知れないと言う、興味をそそる面白さや、心ひかれる面白さが逆境にはある。新たな自分の側面を露わにするような、そんな「面白さ」。

どんな時も常にハッピーで笑って居られるならば、それがベストだけれど、生きていればそんなことばかりではない。人間である限り、いろんな感情が巻き起こる。

そうなった時にどれだけ面白がれるか、そんな視点を普段から心がけておくと、辛い感覚を抜け出すのが早くなるように思う。

では、どうしたら面白がる視点を持てるのか?

彼女はこんなことを仰っている。

自分にとって不都合なもの、邪魔になるものをすべて悪としてしまったら、病気を悪と決めつけるのと同じで、そこに何も生まれて来なくなる。ものごとの良い面と悪い面は表裏一体。それをすべて認めることによって、生き方がすごく柔らかくなるんじゃないか。

本当にそうだと思う。

病気を経験して健康の有り難さを知ったり、それまでの自分の在り方を考え直したり…

樹木さんも癌になったことで、それまでは「気に入らないと相手を全面否定していました」とのことだた、「人間というのは、自分というのは、そんなに立派なものじゃないと分かったら愕然とした」と仰っている。

「だから、死のない病気だったらまだやってたと思うんですけど。死というものがすごく間近に、ちゃんとここにある。がんという病気というのは、これは貴重ですよ。」

癌を恨むことなく、病を自分の在り方を見直すきっかけにされた樹木さん。

安っぽい言葉になってしまうが、かっこ良すぎる!

いつも矢印が自分に向いている、というのだろうか。

自分の世界は自分が作り出している、というフレーズを聞いたことがあるが、彼女はそれを体現して居たのだと思う。

自分の目の前の現実は、自分の向き合い方次第。誰のせいでもなく、自分次第。

人と比べないこと、人に期待しすぎないこと、人の価値観に振り回されず、欲や執着を手放すこと。

そして、何でも面白がって、生きる希望を持ち続けた樹木さん。

他人の芝は青いもの。一見、不公平のようでも誰もが何かを背負っている。そのなかで小さな喜びや希望を見つける。なぜこんなひどい目に?と思ってもそれをちょっと脇において祈る。そうして長い人生のなかで苦しみをどう消化し、どうお終いを迎えるか。

大したことではないが、私自身、このところちょっとした苦悩を抱えている。

苦悩のない日々などと言うものを経験した記憶はないので、何も今始まったことではないのだけれど😅

でも、物事の捉え方は自分次第でどうにでも変わる。面白がることさえできる。

死や病と言った究極の「負」と捉えられることでさえも、「日常」であり「悪」ではないと言い切った樹木さん。

おごらず、他人と比べず、面白がって、平気に生きればいい。

彼女の言葉を吸い込んで、細胞のひとつひとつに染み渡らせ、彼女のような肝っ玉を私の中にも育てていこう。

Aloha & Mahalo!

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