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マージャンの文化史第1部 マージャンの形成過程 第1話 紙牌、サイコロと骨牌に出会う

 マージャン史に残る「説」は、伝説、伝聞、説話の類が多い。確たる史料に乏しいのが実状である。それらを詳しく書き記すとそれぞれに相矛盾する事実が浮かびあがる。
 文献のなかにおいても単なる推測や後付の論理が少なくなく、これを事実として書き進めるのはまことに厄介に感じた。
 マージャンの発明は孔子(紀元前552~479)説に始まり、また中国古代の夏王朝の創始者、禹(紀元前2070年頃)の時代まで遡る解説もある。禹帝の宮中でおこなわれていた「バーリン」という遊戯が源流という。マージャンの源流のさらに源流を追い求めると禹の時代までいきつくのかもしれないが、それは「遊戯」としての歴史であるようだ。
 マージャンは、古代中国から連綿とつづく遊戯全般から集大成されたものであり、そのせいでそれぞれの源流をたどると古代中国にいたるのであろう。
  それは、もとはといえば木の葉や木片、小石や小骨の遊びであったのかもしれない。
 マージャン誕生国の中国では、長いこと禁止されていたせいなのか、あるいは文化大革命のせいなのか、多くの麻雀文献が消失している。こうした時代背景のもと大っぴらにマージャン研究がなされることは稀有な時期もあった。そのような現状の中から、近年では中国人研究者の懸命な努力の結果、新事実や新しい理論が生まれはじめている。
 この小文は真偽の解明を含めて、マージャン文化史の側面として大いなる興味を抱かせる「説話」にも紹介の重点をおいた。 出典不明の「説話」にしても、それは全く無縁のことではなく、マージャン文化史のある断面やある側面を如実に物語っているところがあるように思えるのである。
 ただ冒頭触れたように、それらを安易に綴ると矛盾が起こる。そこで筆者は、信じうる説や理論についてはなるべく研究者の名を添えて紹介に及んだ。

※本記事は麻雀界41号に掲載されたものです。

第1部 マージャンの形成過程
〔第1話 紙牌、サイコロと骨牌に出会う〕

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