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娘にごめんと言えない父と、固執する父の威厳。

ほんの、日本の北側に住む家族のありふれたトラブルである。

私は今日、父に小さな注意とお願いをした。
それは、
「父の後のお風呂の浴槽にたくさんの髪の毛が浮かんでいること」
「気になるので、お風呂を上がる際に確認してほしいこと」
の2つだった。

その2つを伝えるのにも大変苦労した。
というのも、父は私の言うお願いや注意(もしかすると姉や母も同様に)に対して、
素直に受け取ることがないためである。

だから私は、何日も浴槽の様子にため息を吐きつつ、
せっせと父の髪の毛を捨て、
半ば精神的に爆発しそうになるまで耐えた。

大抵の場合、父は何かしらの注意をすると、
冗談めかして「お前に言われたくない」と言ってみたり、
「お前だって○○してないくせに」と言ったりするのだ。

この○○には大体私が家でだらだら過ごしてることや、
朝起きるのが遅いことを挙げるが、
正直それで父に迷惑をかけたことは一度もない。

父は私に対して、
「あーごめん。気を付けるね」が言えないだけなのだ。

私も最近意地やプライド、
そして「なんで自分の立場が悪くなると話題を変えようとするの?」
という思いから、父のそんな態度が気にかかって仕方なかった。

今回は、どうだろうか。
私は父の機嫌を窺い、
お風呂に入ろうとする背中に言った。

「お風呂の髪の毛、気になるからさ、
気にして取ってくれると嬉しいなぁ。」

食器を洗っていた母が、
「髪洗ったあとに背中と肩にちゃんとお湯かけるといいよ」
と助言をした。

すると父、
「じゃあ俺も言うけどさ、お前らの髪の毛、洗面台に落ちてるの気にならないわけ?人のこと言う前に自分のこと完璧にしろよ。」
と、こちらがびっくりするくらいの声色でたたみかけてきた。

父が脱衣所に入った後も、声は続く。
「人のことばっかり言ってさ、まず自分のことやれよ」
とかなんとか。

突然、すごい剣幕で怒り出したことに圧倒され、
思わず母と顔を見合わせて笑ってしまった。

脱衣所にいる父には「ごめんね、気を付けるようにするね。」と謝った。

部屋が静かになって、私は急激に悲しくなった

私が言った「ごめんね」も「気を付けるね」も、
私が言ってほしい言葉だった。

父がお風呂に入って、
母の皿を洗う音だけが家の中に響いた。

なんで私はこんな些細な、
ほんの少し気を付けてね、で済むことに
こんなに心を砕いて、こんなに悲しくなっているんだろう。

つらい。
みじめだ。
こんな低レベルなことで、こんなに涙が出そうになって。

「自分の言動は他者に好意的に取られるのが当たり前」

なんで父はあんなに怒ったのだろう。

それはたぶんただ一つ。
父の当たり前と考えている精神的な領域に私と母が踏み込んだためだ。

以前Twitterで、
男性は他者から褒められることがデフォルトになっている
という仮説・経験談を見た。

かなりのうろ覚えだが、
自分の旦那さん?との「なぜ俺の言動に対してリアクションをしてくれないんだ的なトラブルから、価値観の差異を掘り下げると、
男性には自分の行ったことに対して対価(相手の好意的なリアクション)がもらえるものだと無意識的に思っているという。
インターン生である男子学生も同様の意見だった、というものだった。確か。
全然違ったら本当にごめんなさい。

その仮説をなぞると、
うちの父も褒めはされても貶されない(注意されることはない)ことが
当たり前になっており、
そこに私が急に注意をしたことで、
彼の過度な拒否反応(キレる)につながったわけだ。

わたしたちはずっと父のご機嫌を取ってきた

「基本的に自分が何かを行った際には褒めそやしてもらえるもの」

これが父の常識になった心当たりは有り余るほどにある。

父は一度機嫌を損ねるとどうしようもないくらいにひきずる。

中学生時代、母と姉と3人で桜を見に散歩に行ったことがあった。
父は自分が抜かされたことに怒り、
3週間ほど家で誰とも口を利かなかった。

だから、面倒なのである。
些細な主張で1か月弱険悪な空気の中にいるくらいなら、
自分が折れたほうがいい。
自分がちょっと我慢して、
家庭内で呼吸ができるようになるなら、そっちのほうがいい。
そう思って、そういう風にしてきた。

父が私たちをどこかに連れていくと言うなら、
私は友達との遊びよりもそっちを優先した。
行きたくない場所でも楽しそうにした。

日々は続く

我慢するのはもう今日でやめる、なんて言えたらいいと思う。

でもここには、
なんだかんだで父のことが好きな母がいて、
コロナがなきゃ帰省なんてしなかった私がいる。

私たちが、こうして1つの屋根の下で過ごせる時間は、
きっともう長くない。

そう思ったら、私が我慢するしかないじゃないか。
母には何の恨みもないし、
そんな母にいがみ合って、怒鳴りあう姿は見せたくない。

父のご機嫌を取るのをやめる、なんて言えない。

きっとこれからも父は
私に素直に謝ることはないし、
「女はいいけどさ、」とかセクシストじみたことを言うし、
人種差別に直結するようなことをいうだろう。

私はフェミニストで、
将来は女性や子どもをエンパワーメントする会社を作りたい

でも、こんなに身近にいる父を変えることはできない

それがどうしようもない現実で、
こんな女性なんてきっと日本中に掃いて捨てるほどいる。

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