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マシーナリーとも子EX ~正論と暴力の戦い篇~

「あなた……路上喫煙よくないです」
「はぁ!?」
「え!? そこ!?」

 円盤から現れた宇宙人・ウワベペガ星人から正論を突かれバイオサイボーグ・ワニツバメは狼狽した! 確かに街中でタバコを吸うのは良くなかったかもしれない! しかしシャーロキアンである彼女は暇があるとついホームズに憧れパイプに火を点けてしまうのだ! でもクスリはやらない。

(ツバメ! 気をつけてください! そいつは……)
「あなた」
(むっ!)

 トルーは瞬時にウワベペガ星人の思考を超能力で読もうとする! しかし!

(あぁーっ!)
「えぇーっ! トルーさん!?」

 トルーがものすごいスピードで倒れ始めたのでアークドライブ田辺は慌てて背中の飛行ユニットを起動、超高速でその身体を支えた。

「大丈夫ですか!? どうしたんですか!?」
(ハァッ ハァッ あ、あいつに……人の心を勝手に読むのはプライバシーとかが良くないですよと正論を突かれました……)
「むぅ! なんてやつ! 聞きしに勝る説教系の宇宙人!」

 ウワベペガ星人は矢継ぎ早に続ける!

「あー……あなた達地球の住民……。良くないですね。環境破壊とか……あと戦争。SNSとかも良くないです……」
「なんかフワッとしたこと宣いはじめましたよアイツゥー!」
(ヤツはああしてその星の人間を洗脳し、同士討ちさせて滅ぼすのが手口なんだそうです……。現にTwitterやYouTubeではウワベペガ星人に洗脳された地球人が大勢います)
「良くないとか言いつつSNS使ってるじゃないですかっ! とにかくあいつ殺せばいいんですよね!」
(明言はされてませんが概ねはそうです……。内調はまがりなりにも日本政府の対面を気にしているのか殺せとか始末しろとかは言わないのですよ……。ただ“処理してくれ”と……)
「わかりましたわかりました! 処理すればいいんですねぇー!」

 田辺は背中の飛行ユニットからビームキャノンを展開! 長射程・高火力を誇る殺人光線だ! 

「あー……あなた、暴力に頼るの良くないです」
「うるせーっ!」

 田辺はウワベペガ星人の説教に耳を貸さずビームキャノン発射! 超光熱の殺人光線が異星人を焼く!

「ウギャアーッ!」
(た、田辺……! 聞く耳を持たないとは!)
「言わしときゃあいいんですよあんなヤツ! 勝つのは言い負かしたほうじゃない、最後に立っていたほうなんです!」
「ウググ……相手の話をよく聞くという探偵の特性を逆手に取られまシた……」
「ウワアーッ!」

 ウワベペガ星人は絶命には至らず、田辺たちに背中を見せて走り出した!

(あぁっ! 逃げるっ! 追ってください田辺!)
「なんだぁ~!? 見かけによらず丈夫ですね! 私のビームキャノンを食らってあんなに動けるなんて……。待てーッ!」
「ウワァーッ!」

 ウワベペガ星人は地面を滑るようにして高速で移動する! 田辺も飛行ユニットに火を入れて追いかけるが、高田馬場裏路地の入り組んだ道路のなかでは思ったようにスピードが出せない!

「くそーっ! これじゃあ見失わないようにするので精一杯……!」
「ウワァーッ!」

 ウワベペガ星人は突如、明かりの点いた家屋に高速で入っていった! 田辺はそれを見て急停止! 家屋を見上げる!

「あれ……? ココって……」

***

 田辺がドアを開けるとドアベルがカランカランと鳴った。

「いらっしゃい。……おや」

 田辺を店主……腰に電熱器とコーヒーミルを身に着けたサイボーグが迎えた。

「お久しぶりです。リープアタック田原さん」

 田辺は店主にぺこりと頭をさげた。リープアタック田原……。貴重な2021年現在に来ているシンギュラリティのサイボーグであり、その活動は100年以上に渡っている。そのあいだ常に喫茶店の店主として活動し、サイボーグへの違和感を人類が失うために工作を続けていた。田辺にとってはサイボーグとしても店主としても先輩となるロボだった。

「これは珍客ですね……。いらっしゃい田辺さん。こんな夜更けにどうしたんだい?」
「いやちょっと仕事で……。このお店はこんな夜中にもやってるんですね?」

 田辺は店内にかけられた時計をチラと見た。もうすぐ日が変わろうとしている。

「ウン。週に2日は夜の2時まで営業してるんだ。それも特別な客向けにね」
「特別な客?」
「デミヒューマンさ。獣人とか妖怪とか……人間に近いタイプの存在だね。彼らが客として来てくれるのはサイボーグへの特別な認知も和らげてくれるんだけど、日中に招くにはまだ時期尚早な面もあってね……。深夜営業のときだけ開放しているのさ。ああ宇宙人もタコとかアメーバみたいなヤツじゃなければ入店OKだよ」
「あ……そうだ宇宙人! 私が入ってくる前にウワベペガ星人が来ませんでしたか!?」
「ウワベペガ星人? 知り合いかい? だったらあそこの席に……」
「ウワァーッ!」

 先んじて入店していたウワベペガ星人はコーヒーがドリップされるのを待ちながら水を飲んでいるッ!

「なにくつろいでんだぁーっ! 喫茶店に避難してるんじゃないっ! 殺してやるーっ!」

 田辺がビームキャノンを展開する!

「ウワァーッ! あなた! 喫茶店のなかで暴れるの良くないですよ!」
「正論吐いてろっ! 死ねーっ!」
「いや……」

 ガキン! と音がし、田辺の展開したビームキャノンが強制的に上を向かせられる! 何っ と田辺は振り向いた。背後にはビームキャノンを掴んだリープアタック田原が冷たい笑顔で立っていた。

「ウワベペガ星人の言う通りだよ田辺さん……。店内での暴力はご法度なんだぜ?」
「た、田原さん……!」

 高田馬場の老舗喫茶店、ローリングドリームに緊張が走る……!

読んだ人は気が向いたら「100円くらいの価値はあったな」「この1000円で昼飯でも食いな」てきにおひねりをくれるとよろこびます