見出し画像

悪意のないフードロス〜なぜアラブ人はパンを捨てるのか①〜

ヨルダンでパンと言えば、アラブ料理の主食であるホブズという薄いパン。

ひよこ豆をペースト状にしたホンムスに付けたり、鶏・牛・羊をバーベキューにしたマシャウイーをくるんだりして食べる。アラブでは日常的に食べられている。


私はパンを好んで食べないので、自分でパンを購入したことはないが、このタイプの薄いパンは、貧しい人でも手に入れやすくするために、かなり安く売られているらしい。(1キロで0.5JD…80円くらいという安さ。)


アラブ人にとってのパンは、日本人にとってのお米であるように、とても身近な存在だ。お米は、日本人にとって身近であると同時に、大事にすべき貴重な存在であるとも感じる。実際、お茶碗に入っているお米は、一粒たりとも残さず食べるようにと、小さい頃から言われてきた日本人も多いと思う。

一方、アラブにおけるパンは、身近ではあるが、大切にされているかと問われると、甚だ疑問に思う。

よく道端に捨てられているのを見るからだ。

なんでこんなにパンが捨てられているのをよく見かけるのかと疑問に感じていた。しかも、パンはその他のゴミとは違った捨てられ方をしている。

ヨルダンには道端に大きなゴミ用のコンテナが置かれている。

画像1
手前に写っているのが、ゴミ用のコンテナ

大抵のゴミはこの中にそのまま放り込まれているが、パンだけはこのコンテナの横にポンと置くかのように捨てられているのをよく見かける。


ある日、その疑問が思わぬ場面で解決された。

その日は、活動先のパレスチナ人の同僚が、私の歓迎パーティーとしてたくさんのパレスチナ料理を用意してくれていた。

画像2

アラブ料理というのは、たいてい大皿で用意され、大人数でそのお皿を囲んで食べる。「もっと食べて、もっと食べて」と、お腹いっぱいになるまで(お腹いっぱいになっても)料理を勧められる。残すのは良くないと思って頑張って食べるけど、最後にはどうしても料理が残ってしまった。

ご馳走を用意してくれた同僚は、その残った料理を一つの皿にまとめ、「食べ物は捨てたらダメだから」と言いながら、建物を出てその皿を道端に置いた。

「え、これは捨ててるって言わないの?」と、私の頭の中はハテナでいっぱいだったけど、これはどうやら野良猫のエサになるらしい。野良猫が食べるから、食べ物は粗末にしている訳ではないという感覚だろう。

つまり、私たちにとって一見アラブ人が食べ物を捨てているという行為は、彼らにとっては、捨てているという感覚がないのではないかと感じた。


また、ヨルダンでは道端に生えている木々に、透明のビニールに入ったパンの袋がかけられているのを見かける。

これに対しても不思議に感じていたが、その理由は「パンは捨ててはいけないから」だそうだ。これは、同じ時期からヨルダンで活動している日本人の協力隊の仲間から教えてもらった。

パンを含めて、小麦粉を使った物を捨てるのは、ハラーム(イスラム教で禁じられていること)らしい。


捨ててはいけないから、木にかける
捨ててはいけないから、ゴミ箱に入れずに、ゴミ箱の横に置く


アラブ人にとって、それは捨てていないのかもしれない。

でも、自分の元から手放して放置していることは、捨てていることと一緒ではないかと思わずにはいられない。

パレスチナ難民キャンプでも同様の光景が見られる。

難民キャンプと聞くと、貧困のイメージが付随してくる事も多いと思うが、この、悪意のないフードロス問題ってけっこう深刻だと思った。






よろしければサポートお願いします!サポートいただけると、次の投稿への励みになります。