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東京ジンジャーエール百景 20杯目『”セダイゴエ”の誰も知らなくていいこと』

先日『セダイゴエ』という特番が放送され、私はプロデューサー兼演出として番組に携わった。ざっくり言うとタカアンドトシ・アンガールズ・チョコレートプラネット・霜降り明星の4組が”自身の原点となったネタ”をアップデートして披露するという番組。今回はその番組について、タイトルの通り『誰も知らなくていいこと』を書こうと思う。

今のテレビ業界には、ヒット番組を量産して本を出したりラジオに出演したりするディレクターやプロデューサーが何人かいて、その人たちが語る裏側には需要がある。私もよく読むし聴く。しかし私は誰もが知るヒット番組を作ったこともないし、SNSに書いているのはほとんどB'zとジンジャーエールのことばかりである。ただ、そんな名もなきテレビマンがどんなことを考えてひとつの番組を作ったのかという記録もあっていいのではと思って書くことにした。ここまで読んで「そんなんええわ」と思う方は、早めの離脱をオススメします。

番組の立ち上げ

5月末、チーフプロデューサーから「ネタ番組をやることになったので参加してほしい」と声をかけてもらった。大阪では『オールザッツ漫才』をはじめとするお笑い番組にずっと携わっていたので、即答で参加の意向を伝えた。東京に転勤になってから初めてのネタ番組である。

大阪に本社があるMBSは、関西ローカルのネタ番組は定期的に作られる。しかし東京支社がネタ番組を作ることは非常に稀だ。東京支社が作るということは、ほぼTBSでも流れることになる。東京支社で作られたネタ番組はここ数年例がない。

これには「コロナ」「有吉の壁」「お笑い第7世代」という3つの要素が大きく関わっている(と勝手に思っている)。ここで時世を語るつもりはないので省略するが、とにかく滅多に吹かない風が吹いたのだから乗らない手はない。

番組コンセプト作り

決まっていたのは「ネタ番組」ということだけだった。世の中には賞レース以外にも恒例のネタ番組がいくつもある。予算や実績を考えると土曜のお昼に流れる1時間の単発番組で、オールスター大集合!のようなことはできない。何かネタの切り口がいる。そこで思い出したのが、ある芸人さんのラジオでのトークだった。

「俺たちが1年目に作ったネタ、あの時は評価されなかったけど、今思い返してもめちゃくちゃ面白いよな!」

この話を聴いたとき、そのネタを見たいと思った。ふとこの時の気持ちを思い出した。

どの芸人にもブレイク前に作ったお気に入りのネタがあるのではないか。普通、ネタ番組で求められるのは新ネタのはず。「ブレイク前に作った自身の原点となったネタ」を披露するなら、本人たちはこれまでテレビでできなかったネタができて、視聴者はレアなネタが見られる…行けそうな気がした。

最初に作った企画書には『世代を超えた4組が集まる1日限りのネタ番組』と書いた。結果的にこのまま番組は進むことになる。

大枠が決まればブッキングに入る。スケジュールが合うか、コンセプトに同意できるか、同時間帯の裏番組に出ていないか。様々な要素をクリアした4組の出演が決まった。

台本を100点にしない

7月に入り、数人のディレクターと作家と会議をしながら大枠を詰めていく。最初から、ネタだけでなくコーナーとコラボ企画をやろうと思っていた。ネタをやって終わりの番組が多いなか、ここでしか見られないものが作りたかった。

特にこだわったのはコラボ企画だった。私は2010年から2014年まで『オールザッツ漫才』の総合演出を務めている。5時間の生放送という、全国的に見ても珍しい番組を5年も任せてもらった。

『オールザッツ漫才』で培ったひとつが、コーナー企画の作り方だった。台本の時点で80点を取れるように作り、あとは芸人さんに任せる。最低でも80点、爆発すれば150点をたたき出すという作り方。千鳥がコーナーMCを務めたある企画では、大悟さんが笑いながら机を叩きすぎてMCテーブルが壊れたこともあった。

今回の『IKKOモノマネ講座』も、台本上では完成されていなかった。どうなったかは放送を見ていただくとして、私としては150点が出たのではないかと思う。本番中、私は笑いすぎて脇腹がつった。出演者もお客さんも爆笑するなか、スタジオで1人だけ顔が引きつっていたと思う。

キービジュアル

番組の中身が固まっていく中、私はビジュアル的なコンセプトを模索していた。その時に出会ったのがshiohidaさんのイラストだった。

6月に鬼越トマホークと初めてロケをして、Twitterをフォローさせてもらった。するとそこに流れてきたのがshiohidaさんが描いた鬼越トマホークのイラストだった。芸人への愛とリスペクトに溢れるイラストに一目惚れし、すぐにDMでオファーすると、快諾してもらった。これも何かの縁だと思う。

芸人4組のイラストが続々と仕上がっていき、イラストと組み合わせる形でタイトルチームが番組ロゴを作成。キービジュアルが完成した。

番組公式アカウントを作らなかったので、このキービジュアルを使って宣伝をしたところ、収録写真を使った宣伝とはまったく違う拡散の仕方をした。これも貴重な経験だった。

第2弾に向けて

放送が終わり、視聴率が出た。続編に希望を持てる数字だった。数字が全てではないが、高ければ色んな可能性が広がる。

名前は挙げていないが、番組は多くのスタッフの力添えによって成り立っている。トーク企画やコラボ企画の中身は作家からもらったアイデアをベースにしているし、ディレクター陣の力も大きい。

第2弾が実現したときは、どうか皆さんよろしくお願いします。TVerでは見逃し配信を行っているので、まだ未見の方、もう一度見てみようかなという方は是非。

番組が完成してから飲んだジンジャーエールは、言わずもがな格別でした。

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