平成ライダー三ヶ月半で全部見た ウィザード編

 こんにちは、マグロダです。
 
 「平成ライダー三ヶ月半で全部見た」とは、平成ライダーを二ヶ月で全部見ようとルーレットを回して作品を決めていたら、結局は全部見るのに三ヶ月半かかっちゃったチャレンジのことです。本記事では、視聴した作品を一作ずつ振り返っていきます。

 視聴の順番は完全ランダム。17回目の視聴作品もルーレットで決めたところ、今回見ることになったのは「仮面ライダーウィザード」でした。『ウィザード』は2012~2013年にかけて放送されたライダーで、平成ライダーのナンバリングでいう14作目に位置づけられます。

 『ウィザード』は文字通り魔法使いの物語。ライダーに変身できるのは魔法使いだけ……というより、変身方法がそもそも魔法なんですよね。そのため『ウィザード』世界では魔法使いと仮面ライダーは大体同じ意味だと思っていただいて構いません。なんじゃそりゃ!?

 こういうところ、平成ライダーはためらわないなーって感じがしますよね。「この世界では仮面ライダーのこと鬼って呼んでるから」とか「この世界は魔法使いもベルトで変身するから」みたいな変化球を当然のように投げてくるのはすごいですよねえ。

■目次
・どんな作品?
・登場人物ピックアップ
・注目ポイント
・個人的名シーン
・視聴のススメ


◆どんな作品?

 仮面ライダーウィザードは、絶望に負けず希望を抱く人々の物語です。

 世界には、「ゲート」と呼ばれる人々がいました。彼らは魔力を内側に秘めていますが、そのことには気づかずに日常生活を送っています。それだけならいいのですが、そこには実は大きな問題がありました。なんと、ゲートの人たちは絶望してしまうと彼ら自身の魔力を消費して怪人を召喚し、本人は死亡してしまうのです。

 生み出される怪人の名は「ファントム」。彼らは生まれたあと、仲間を増やすために別のゲートを探してあの手この手で絶望させようとします。そうした手口の一環として、「サバト」と呼ばれる行為がありました。大量のゲートを集めて一気に絶望させ、たくさんのファントムを生み出すのです。

 しかしサバトに巻き込まれたにもかかわらず生き残った青年がいました。彼の名は操真晴人(そうま はると)。強い絶望を感じてもめげずに耐え抜くことで、彼はファントムを生み出してしまったものの、精神世界に封じ込めておくことに成功。彼自身も消滅せずに済みました。それどころか、生まれたファントムの魔力を利用することで仮面ライダーに変身できるようになったのです!

 こうして晴人くんはゲートたちを絶望から救うため、仮面ライダー、すなわち魔法使いとして戦っていくようになりました。しかし、問題はファントムだけではありません。晴人くんがサバトから生還したとき、魔法使いとして戦うためのアイテムを彼に授けた「白い魔法使い」という謎の人物がいました。目的不明のその人物は、ファントムと魔法使いによる戦いの裏で暗躍していたのです……。

◆登場人物ピックアップ

操真 晴人(そうま はると):希望の魔法使い。仮面ライダーウィザードに変身する。体内にドラゴンのファントムを宿す。キザで頼れる人間のように見えるが、本当は非常にまじめ。彼の絶望は、幼いころに一家で事故に遭い自分だけ生き残ってしまったこと。各地のゲートと接触しては、自分が魔法使いであることや相手が怪物に命を狙われていることなどを伝えて護衛をしている。……のだが、この時のトーク内容は明らかに不審人物のそれであり、これを初対面の相手に毎回誠心誠意伝えている彼のコミュニケーション能力は極めて高い。

仁藤 攻介(にとう こうすけ):古の魔法使い。仮面ライダービーストに変身する。あっけらかんとした前向きな青年で、「みなまで言うな!」が口癖。その通り人の話を聞かずに行動することがしばしば。考古学の学生だったときに訪れた謎の遺跡で、古代より封印されしキマイラのファントムに取りつかれて仮面ライダーになってしまった。ファントムを倒してキマイラに魔力を与えなければ死んでしまう。重度のマヨラー。

コヨミ:謎の少女。晴人と行動を共にしており、誰かから魔力を与えてもらわなければ活動できなくなってしまう。また、人間の姿に擬態するゲートを一目で見抜く特別な能力を持つ。サバトにも巻き込まれており、そのときファントムを生み出したにもかかわらず奇跡的に生き残ったためこのような状態になったと考えられている。

奈良 瞬平(なら しゅんぺい):魔法使いにあこがれる青年でゲート。魔法使いである晴人に感激して助手を志願する。ファントムに小細工をされ自分も魔法を使えると勘違いし有頂天のところで種明かしをされ絶望。ファントムを生み出し死亡しかけたところを晴人に救われた経験を持つ。それ以降、魔法使いにはなれないし空回りもしがちだが、助手として晴人を手伝い続けている。

◆注目ポイント

・絶望と希望をめぐる物語

 『ウィザード』って、魔法がモチーフなのにぜんぜん安易な救いがないんですよね。そもそも、ファントムを倒すことは根本的な問題の解決にはなりません。あくまでファントムの目的はゲートを絶望させることであって、彼らが人を襲うのはおおよその人間を絶望させるのに手っ取り早いからにすぎません。頭のいいファントムはあれこれ小細工を弄してゲート個人に合わせた作戦で絶望させにかかってきます。それ以前に、ゲートの心を悩ませる問題はファントムとはぜんぜん関係ないところで噴出して絶望を引き起こす可能性だってあるのです。

 よって、晴人くんたちもファントムの撃破だけでなくゲートの心の問題を解決していく必要があります。その第一段階として、初対面の人のところに駆けつけて「もしもしわたくし魔法使いでして、あなたが絶望しないようにお手伝いしたいんですけれども……」という話を毎回しているわけですね。どう考えても不審人物なんですけど、毎回なんとかこの説明を晴人くんたちは真摯にこなしています。コミュ力が高すぎる。

 それはさておき、ゲートと面識ができたらファントムから守るための警護や、絶望を避けるための調査なんかをするわけです。魔法使いなのにかなり地道なんですよね。作中で本人も言っているのですが、晴人くんの魔法は万能ではありません。記憶を消したりとか、過去を改変したりだとか、そういう都合のいい魔法でパッと絶望を解消したりはできないのです。

 というかですよ。『ウィザード』に出てくる絶望って、基本的にどうしようもないことばっかりなんですよね。例を挙げると、サッカー選手が大けがを負ってしまったとか、前途多難な人物が将来を不安に感じているとかです。その人たちが現在において絶望を感じるようになった原因を今更取り除くことなんてできないんですよ。

 じゃあ晴人くんはどうやってゲートの人たちが絶望に負けないようにするのかといいますと……ゲートたちと真剣に向き合って対話をします。いや、拍子抜けかもしれないんですが本当なんです。

 『ウィザード』は戦いや調査をこなすためにバンバン魔法を使いますけど、それはゲートたちの問題とは本質的には解決ありません。ゲートが絶望に負けない希望を抱くことができるのは、晴人くんたちが彼らの痛みに寄り添って、励まして、どんなにつらくても前を向いてやっていけばきっと希望が見えてくるって伝えてくれるからなんです。それが『ウィザード』のいいところなのだと思います。

・晴人くんと仲間たち

 晴人くんはサバトで唯一ファントムを生み出さずに生き残ることができた人物であり、魔法という戦う力を手に入れることができた存在でもあります。その状況と生来の性格も加わって、めちゃくちゃに責任感が強い。その様子は、ファントムを華麗に倒してゲートを颯爽と救う、人々の希望としての完璧な魔法使いという虚像を演じようとしているようにも見えます。キザで余裕たっぷりのように見えて、本当は一人で苦悩して戦っているんです。

 そのため、晴人くんは最初のころ一般人の協力にも否定的な態度をとります。ファントムは魔法使いにしか倒せないぞ、と。けれど瞬平くんをはじめとする仲間たちはそれでもついてきて、あれやこれやと晴人くんの手助けをしようとします。これがまあまあうっとおしいんですけど、だんだん彼らの援護もスムーズになってきていいチームになっていくんですよね。

 また、一人でやらなければと考えている晴人くんの前に仁藤くんも登場します。彼こそファントムと戦う二人目の魔法使いであり、晴人くんの重荷をひとつどかしてくれる人物でもあるのです。とはいえ最初は行き違いがあったり、仁藤さんのファントムを倒し続けないと死んじゃうという問題から、晴人くんとライバル関係ではあります。それでも仁藤さんという大きな戦力は頼もしく、話が進むにつれて彼の「みなまで言うな!」という口癖が「細かいことはいいから俺はお前の味方をするぞ」って意味で使われるようになるのも非常に熱いものがあります。

 『ウィザード』はこういった、晴人くんが少しずつ仲間に頼ることを覚えていって重荷を下ろしていく様子がたいへん良いです。同時にちょっと頼りないところのあった仲間たちもどんどん信頼できる存在に成長していくので、見ていて嬉しくなってしまいますね。

◆個人的名シーン

 私がオススメしたいのは12・13話ですね。具体的に言うと和菓子屋の回です。この回、本当にすごく出来がいいんですよね。先述した『ウィザード』のテーマ性がギュッと凝縮されていると思います。

 話の中心になるのは、和菓子屋に就職した若き弟子と頑固な親方。彼らの労働環境は、和菓子屋のどちらかがゲートであると発覚したことで崩れ去ってしまいます。せっかく作った商品をファントムにめちゃくちゃにされてしまい、契約先に納品ができなくなってしまったのです。これによりお店は大口の契約先を失ってしまいます。

 ここで活躍するのが瞬平くん。彼は和菓子を大量に引き取り、路上販売や知り合いの元への訪問販売など、懸命に売り歩きます。彼のこういうひたむきでまっすぐな人としての善性を晴人くんは信頼していて、その様子が二人の友情を感じさせてくれます。

 しかし一方で親方は損失を重く見て「店を畳む」と宣言。状況はどんどん深刻になっていき……というのがあらすじです。

 この話は晴人くんたち一同の関係性の描写はもちろん、『ウィザード』における基本的な推理要素もバッチリ導入。弟子と親方のどちらがゲートなのか、二人の絶望を回避するためにはどうすればいいのかといった謎を追いかけながら視聴することができます。そして和菓子屋と師弟の行く末は、災難に見舞われてしまった後にも希望は残るということをすがすがしく描写してくれています。

 この和菓子回は本当に面白くてですね、つい「『ウィザード』は正直肌に合わなかったんだよね……」という方にも「この2話だけは試しに見てほしい!」と言いたくなるような珠玉の話です。あと、なぜか和菓子を製作する描写が妙に丁寧に映されています。なんで?

◆視聴のススメ

 『ウィザード』は前後編2話構成なので、その単位を基本として視聴するのが一番わかりやすいと思います。ただ、なぜかは不明なんですが『ウィザード』って急にものすごい奇妙な回が紛れ込んでいたりするんですよね。鳥の回とか……。

 そういうのがどうしても気になってしまう方は、前半の話だけ見て後半はスルー、みたいな視聴をしてもいいのかな、と思います。逆にむしろ好きな方は、余すところなく『ウィザード』を楽しめること間違いなしです。


 以上、今回は仮面ライダーウィザードについてお話ししました。『ウィザード』は幻獣や魔獣をモチーフにした怪人の能力や晴人くんの数々の魔法を応用しての戦いも非常にかっこいいので、そういう面でもおすすめのライダーです。ストレートに魔法を題材にして戦うライダーって『ウィザード』のライダーたちだけですしね。あとマントがついててバサバサするのでかっこいい。

 次回は仮面ライダーオーズについてお話しします。お楽しみに!

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