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【“未経験だから”は辞めにしませんか?】

サッカー未経験でありながら、サッカー指導者の名を名乗っている猛者がいると聞いた。

あり得ないと思った。

サッカーをプレーした事の無い人間に、サッカーを指導できる訳が無い。

例えばバスケットボール経験の無い僕に「高校バスケ部のコーチをしてください」と「300万円」を積まれても、決して僕はそのお誘いを引き受けないだろう。

いや、引き受けるかも…。

そんな事はさておき。

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今回は、「サッカー未経験」でありながらも「サッカー指導者」として4年目のキャリアを迎える木室孝輔さん(22)を取材させて頂きました。

ーー木室さんは、サッカー未経験のサッカー指導者だと聞いたんですが本当ですか?

「そうなんですよ(笑)」

ーー僕にとっては未知の世界ですね。サッカーとの出会ったきっかけがあったんですか?

「そうですよね(笑)
サッカーにハマるきっかけになったのは、中学一年生の頃に、たまたま観た『ミランユVSベントス』でしたね」

ーーサッカーと触れて来なかった木室さんに何か伝わるモノがあったんですね。ちなみに、どこに惹かれたんですか?

「なんか、それまでになんとなく代表戦とかを見てたんですけど、そこで見てたサッカーと全く違うくて…『スピード感』とか『スタジアムの雰囲気』とか、そういう要素に惹かれたんですよね」

「ってか、これもう取材始まってるんですか?(笑)」

ーー始まってますよ(笑)ナチュラルに始めていこうと思いまして!

「了解です!(笑)」

ーー「指導者」としてのキャリアをスタートさせたのはいつですか?

「大学一年生の頃ですね」

ーーそれは母校か何処かのサッカー部をお手伝いに行かれてたとかですか?

「いえ、全く縁もゆかりもない高校に電話で売り込みました(笑)」

ーーそれは果たして「勇気」と呼ぶべきなのか、「無鉄砲」と呼ぶべきなのか…。

今まで行動力だけを原動力に生きて来ましたから

ーー「行動力」大事ですよね。待っていても何も始まらないですからね。そこから指導者としてのキャリアをスタートされたと?

「ありがとうございます!(笑)

はい、そうです。8ヶ月くらいそこの高校で外部コーチとして活動させて頂いた後、母校からコーチとしてのお誘いを受けたので、その母校でコーチを1年半勤めました」

ーーなるほど。やはり「サッカー未経験のサッカー指導者」として、他のチームスタッフや選手達からの反応は率直に厳しかったんじゃないですか?

「最初の高校では本当に右も左も分からない状況で、監督やコーチのメニューを見たり、立ち振舞いを観察したりするだけでした。

選手達との関係性で言うと、個人戦術の指導なら貢献できると思って、個人的なアドバイスであったりコーチングを行ってました。それならば現場での経験不足は補えると思って」

「まぁ、当時の僕はロン毛だった事もあって最初の『何やこいつ?』感はありましたけどね。でも普段からの『雑談』みたいなのを大事にしていたし、そこを含め選手とのコミュニケーションを取る事で、自分の伝えたい事を汲み取ってくれるようになりましたけどね」

ーー短髪の方が似合っていますね。

「よく言われます(笑)」

ーーコミュニケーション能力が高いんじゃないですかね。こんなにナチュラルに取材に入れたのも初めてですから(笑)

ちなみに、「個人戦術であれば貢献できる」と仰っていましたが、その以前から戦術面におけるインプットは行っていたんですか?

「やっていました。中学二年生の頃からサッカーの監督になる。と決めていたので、現場に立つその瞬間までは戦術面でのインプットをやっていました」

ーー「机上の理論」と実際の「現場」とでは、相当なギャップがあると思うのですが。

「そうですねー。そこに関してはあまり無かったですね。何よりもその『現場に立てること』が嬉しかったですね。まぁもちろん、シンプルな『サッカー未経験』を痛感する瞬間はありましたけど」

ーーそりゃありますよね。それはどんな経験ですか?

「効果的なトレーニングメニューがどんなトレーニングなのか分からなくなったり、『トレーニング中に起きた課題』に対して『臨機応変』に対応できなかったり」

ーー要は「机の上では求められなかった即興性」が求められたんですね。そこの部分を克服する為、心掛けた事はありましたか?

「トレーニングメニューに関して言うと、色んなネットワークを通じてインプットしたり、有名監督の手法を模倣していきながら、構築していきました。
『臨機応変』に対応するスキルで言うと、そもそもベースとなる『』さえあれば、後は経験がモノを言うと思っていたのでそこまで心配していなかったです。そのベースとなる『軸』というのは、『サッカー観』や『チームのやりたいサッカー』、そこに対する『トレーニングのテーマ』ですね」

ーーその後どのような指導者キャリアを?

「2019年シーズンは、FC淡路島でコーチとして活動しました。この一年間はめちゃくちゃ良い経験になりましたね。高校年代ではなかった、トップを経験された方との仕事だったんで、監督やコーチとしての『振る舞い方』や、『チームビルディング』に関してめちゃくちゃ勉強になりました」

ーー「立ち振舞い」と「チームビルディング」この両面で学べた事をそれぞれ教えてください。

「例えば、少しチーム全体的に地に足がついていない時とかは、その状況を誰よりも早く察知して、しめる時はしめるとかですかね。わざと怒ってみたりとか、監督は選手との関係性の中で『監督という役』を演じないとあかんなぁと感じました。

チームビルディングに関しては、『やりたいサッカー』に対しての『原則』を落とし込んでいくという過程を経験できたのが大きかったですね」

ーーなるほど。その頃になってくると指導スキルも少しずつ蓄積されて来ていますよね。この中で「サッカー未経験者ならではの」見える視点とかメリットってありますか?

「んー正直、『サッカーを見る視点が違う
とかはないんですよねー。そりゃ端から見みればあるように思えるかも知れないですけど。

なので、逆に未経験者だからこそ得れる経験を補う方が良いのかなと思いましたね。サッカー以外の事も勉強していますし、例えば大学はスポーツ関係の学部では無く商学部にいったりとかですね」

ーー商学部に行かれた意図を具体的に聞いてもよろしいですか?

「まあ単純に大学生活を楽しみたかったというのは大前提にあります(笑)」

ーー楽しむことはもちろん大切です。

(笑)(笑)

「真面目な話で行くと、『ビジネスの知識』と『サッカー界とは関係のない人達との繋がり』、『統計学』この三点ですね」

ーーなるほど。それらの知見っていま活かされているんですか??

「今でいうと、副業のスキルと人脈に繋がっています。東京に出てきてすぐにコロナの影響で無収入になりそうな中、唯一の収入源です。後、統計学に関して言うと、卒業論文でサッカーと統計を絡めたものを書き、それは面白かったですね。今後より深めていきたいです」

ーーその卒業論文の内容はどんなものだったんですか?

「『ポケットからのクロスの有用性』についてですね。ポケットからのクロスって有効だと言われてるんですが、実際に定量的にはどうなのか?その数の多さはリーグ戦を通しての順位に関係あるのか?などをみていきました」

ーー今度読ませて欲しいです。ちなみにいま想い描く「指導者像」ってありますか?

「教える年代によってあるべき姿は変わるかなと思っているんですが、例えばそれがトップなら
、勝利を追い求める『勝利至上主義』を貫くのも一つの手ですし、ジュニア世代を教えるのであれば、『サッカーを楽しませる』事も大事ですよね。むしろ、これといった明確な像はないです」

ーー好きな監督は?

「好きな監督も特にいないですね。いないと言うよりも、影響を色んな所で受けているので、絞り切れないです。強いて言うなら、『プロ経験の無い監督』というの事例は僕が目指すべき場所ではあるの、『モウリーニョ』、『ビラスボアス』、『ナーゲルスマン』を挙げられますね」

ーーそれはある種、そのような監督になりたいという夢でもありますか?

「人生の最終目標はプレミアリーグの監督を務める事です。また、日本で指導者をやっていく中で、日本サッカー界へ一石投じたい気持ちも高まってきました。幸い、最近は指導者同士の交流や同年代の指導者の活躍が見られます。そういったエネルギーのある方達と少しでも日本サッカー界を更に前進させていければと思っています」

ーー繋がり、交流していく中で成長していける事が出来ると?

「色んな職種の方と色んな話をしたいと思っています。それこそ、サッカー以外の知見を広めるという事もこれからの指導者に必要な事だと思ってるので。もし、記事を読んで興味を持ってもらえた方は連絡して頂けるとめっちゃ喜びます(笑)」

ーーその気持ちを伝えられるよう頑張ります。この度は有り難う御座いました。

「ありがとうございました!」

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サッカー未経験というコンプレックスに臆する事無く、自分自身をその環境に投げ込むという事は誰しもが出来る行為ではない。

インタビューを始める前は半信半疑で話を聞いていたが、彼の前向きさに感心を受けた。

その反面、これは誰にでも共通する話ではあるが、インタビューだけを通して指導者としてのスキルを推し量る事は不可能だ。

しかし、今の論点はそこではない。

何事を始めるのに年齢なんて関係無い。未経験だろうが関係ない。いまトップとして輝いている人達にも「未経験」の期間が必ずあったはすだ。

一流のピアニスト、一流の漫画家、それが何かは分からないが、でも、絶対的に皆が「未経験」からスタートしている。その事実だけは変わらない。

木室さんは、そのようなメッセージを残してくれたような気がする。僕が勝手に受け取ったのかもしれないが。

とにかく、僕個人的にも躊躇していた事があったのだが、これをきっかけに「トライしてみよう」と思えるようなインタビューであった。

皆さんも、「未経験だから」と躊躇している事があるのはずだ。

この記事を読んだ事が1つのきっかけだと自分を思い込まし、何かを始めてみようじゃないか。

最後まで読んで頂き、有り難う御座いました。

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