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バレエ・ロレーヌ

2018年9月16日(日)KAAT神奈川芸術劇場

国立振付センターバレエ・ロレーヌ。フランスのコンテンポラリー専門のバレエ団がマース・カニングハム、ウィリアム・フォーサイス、そして今ヨーロッパで新進気鋭と紹介されるベンゴレとシェニョーによる作品、と3つを踊る。モダンダンスからコンテンポラリー、そして現在を一度に見られる機会に惹かれた。『国立振付センター』所属のバレエ団という位置付けも日本からみると新鮮。

動画を含む紹介サイトはこちら
改めて動画を見ると、生で見た印象とは随分違うものだなぁ、と思いますね。

『DEVOTED』(2015)

セシリア・ベンゴレア&フランソワ・シェニョー

緑のレオタードに身を包んだ女性9名がポアントで舞台上に並ぶ。 25分間、ポアントワークのまま。キッツイだろうとは思うけれど、そんなにテクニックが強い訳く、動きにはゆるさが見える。

舞台後方から前方、または下手、上手と9名が綾を織るようにクルクルと移動する。フィリップ・グラスのミニマルミュージックを織糸の一つとしてひたすら動く様を見ていると、ちょうどTwitterで流れてきたこの図形の動きを思い出した。何か気持ちいいというか中毒性というか、見ちゃうなぁ、という動き。

これいっそ、人間でないものにこの動きをさせて舞台に乗せてみたいとか、(磁石でクルクル回るオルゴール人形を9つ舞台盤面に置いて、微妙にタイミングをずらしながら(それこそ、グラスのクラッピングミュージックのように)このフォーメーションをさせるとか)、バリバリポワントワークできて動きを均質化できる日本のバレエ団とかで見てみたいとか思って見ていました。

ただ、実際の舞台上のダンサーは微妙にゆるい動きでちょっと失敗したりもしていて、それが妙に味があったりするのが面白いという不思議な感じ。

一方で何を受け取る舞台だったかというと、神が創造した地上の世界、を見せる舞台だなぁという印象。ブリューゲルの絵に同じ印象を持つのですが、人とか建物とか何かがごちゃごちゃと沢山いて、みなそれぞれ何かを営んでいて、それと全く別の次元に神がいて、そういう世界を俯瞰している中の、地上側、です。キリスト教的な感じ。

床をさすポアントが人を地上に留める針のように見えました。

最後、突然の無音で世界が変わる。音楽と動きで集中力が高まっていたものが、音楽が途切れた途端、空間からその集中力が消える。音楽の空間を作る力の凄さ、動きだけになった時の空間のゆるさが現れる。アイロニー?

『STEPTEXT』(1985)ウィリアム・フォーサイス

客電が落ちる前から下手の男性ダンサーが踊り始める。背景の抽象画(出口を示すような)や照明使い、分断されて投げ込まれるバッハのバイオリン。フォーサイスのタフな動きだなぁ、と思う。DEVOTEDに感じた身体性への不安はなく、男性3名、女性1名は皆動ける身体。でも男性に対して女性の身体がふくよかで、パートナーシップはアンバランスな印象になってしまった。カマキリの夫婦を思わせて、どうかと思う。

何度目かのフォーサイス。フォーサイスは身体がどんな風に動けるのか、そこをひたすら探求していると感じるのですが、そこから何を受け取る舞台なのか、未だ私に受容体がない状態。

『SOUNDDANCE』(1973)マース・カニングハム

幕あきで左右のステレオからグワ〜ァンと入る音と背景の辛子色の布のドレープで床が揺れたのかと思った。

チラシにも使われていた舞台写真では背景のドレープと衣装の色でウヴェ・ショルツの『Octet』を彷彿とさせたけれど、当たり前だけれど、全然違う。まずドレープが天井までない。建物にして1フロア分くらいの高さから下がるドレープで、その上は舞台の暗幕。これで空間の広がりを抑えている。加えてボトムがデニムを彷彿とさせるブルーグレーのレギンスタイツでドレープど同色の上着はテレンとしたTシャツ。納屋の中でバリッバリに踊っているかのようだった。

バブルの頃一度だけご本人が踊る舞台を観たように記憶しているのだが、、。アンナヴァン、クペで肩を深く下げる動きがカニングハムを彷彿とさせる。

決して古いのではなく、時代を感じるなぁ、と思って見ていた。どんな作品も舞台も時代性は伴っているけれど、特にそう感じたのは、最近見慣れない、けれど、過去通って来た道だと感じる動きだからだろうなぁ、と思う。

舞台の上にあるのは、DEVOTEDでは地上の人々、STEPTEXTでは対象物としての身体、だったものが、SOUNDDANCEでは、そこに『人間』がいる、それも「アメリカの人間」がいるという印象を受けた。ダンサーの国籍は様々だろうし、フランスのカンパニーなんだけれど。モダンダンスの時代の作品ということも関係あるのかしら。

17分間の舞台。最後ドレープの中に一人づつ吸い込まれるように消えていき、誰もいなくなって終わる。トルネードのような激しさで最後の一人消えた時には、『面白かった!!!』となっていた。

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