記録 三日目

記憶は、人に残る。
人々の記憶から消えたものは、"存在しない"と言っても良い。
だからボクは、忘れない様にと、そう思って居たのに。


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交渉記録
〇レシピ供与 鮎の塩焼き

(#115 桃炎)
深夜と言って差し支えない時間帯の海辺にて、相手側から接触。
魚の調理方法についての情報提供を求められる。
こちらの情報が有用である保証はしかねるが、応じることとする。
名称記録…桃炎。

ボクが、誰かから貰った知識を、別の誰かに伝える。
知識が、記憶となって、伝播する。
それが、もしかすると、"存在する"と言う事なのかも知れない。

狩猟記録
〇上級狩猟 砂漠
大型の弓矢を作成、練度を上げるために砂漠にて狩猟を実施。
放てば、当たりはするが、銃と同じ様にはいかない。
素手の方が効率は良さそうだが、復興の為には道具を使用すべきものと判断する。


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記録は、モノに残る。
しかし、モノは壊れる。
壊される。
"レティシア"が存在した記録は、もう何処にも無い。
記憶だけが。
ボクの記憶だけが、"レティシア"を存在させる。
なのにそれすらも、空の星に、霞もうとしている。
だからせめて、"レティシア"の名前が、誰かの記憶に残ってくれれば。
…そんな、悪足掻きに、如何ほどの意味が在るのか。
誰にも、ボクにも、わからない。

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