アモーレの風

アモーレの風

LOUISE通信

ロンドンに住んでいた頃、テロの心配はいつもあった。語学学校から友達の家に行く時にしょっちゅう使っていたバスがテロにあった時、もしかしたら私が乗っていたかも知れないということが頭から離れなくなって、違うバスに乗っていても、急に怖くなり泣いてしまったことがあります。年々難しくなっていったビザの延長のことなど、気がゆるむと一瞬で、不安や恐怖が心を占めていきました。ロンドンで一人ぼっちな気がして落ち着かない時は、彼女に会いにいく。会ってお酒を飲んでくだらない話で大笑いしていると、少しずつ本来の自分の明るさが戻ってくる気がしていたのです。
お金持ちのお嬢様と靴職人の家に生まれた在日韓国人の私。生まれ育った環境も、見た目も、選ぶ服やタイプの男もまるで違う。東京で出会っていたら友達になったかな?そもそも出会わなかったかもしれない私たちだったけど、時間が合えば週末に会い、お酒をたらふく飲んで、いっぱい食べて大笑いする。当時の私たちは若くて元気だったから、時々ハメを外しすぎていたし、だからお互いの弱みもちゃーんと握りあっている(笑)、愛しい女友達。

何年かぶりに会った彼女がイタリアに移住していたことにも驚いたけど、赤ちゃんが一緒についてきたことには本当にびっくりして大笑いした。イタリア人の彼と彼女の間に生まれてきてくれた可愛い男の子の顔には、彼女がちゃんと入っていて、その不思議さを思うとなぜか神聖な気分になりました。

そのムチムチした柔らかい足は一生触っていられるが、私の想像をはるかに超えて大きな声で泣く赤ちゃん。その声の太さとパワーはイタリアの血が確実に入ってることの証みたいだった。オペラ歌手のおっさんかっ。わざわざ、他の人の迷惑にならないようにチェーン店の個室を予約したにも関わらず、一向にやまない泣き声はその広い店内に響き渡り、私は他のお客さんに怒られないかだんだん心配になっていました。彼女は何も感じていない様子で、「アモーレ!」と連呼している。やれやれみたいな言い方ではあったけど、たぶんその場にいたみんな(店員さんも他のお客さんも)が、吉本新喜劇ばりに一斉に椅子から転げ落ちていたはず。

おっぱいかも知れないと、嬉しそうに赤ちゃんを抱き上げる彼女の笑顔を見たとき、タイプの違う私たちがどうしてあの時期あんなにいつも一緒にいたのかを思い出しました。籍は入れないと自分で決めて、言葉のわからないイタリアの病院で、しかも帝王切開で。自分で考え、自分なりの子育てに一生懸命向き合っている彼女を私は心から尊敬してしまう。時々やってくるパートナーのお母さんと離乳食の作り方で、「情報が古いの!」と本気になって喧嘩してる話も面白かったな。もちろん、大変なこともあったから、一人でいっぱい頑張ったんだなあって思って涙がこみあげてくるようなハグしたい気持ちにもなったけど、ハグ文化が自分の中から抜けてきていて、その夜は一回もできなかった。そんな私の性格もちゃんと分かっていてくれている気がしました。生まれたばかりの赤ちゃんが泣くことの、いったい何を申し訳ないと思わないといけないのか。そうだよ、アモーレ!でいいじゃん。

ムチムチの足〜(笑)。そして友達の、この抱き方はいいのだろうか。赤ちゃんはボケーっとしてました。

ありがとうございます!!
LOUISE通信